目覚めの悪い夢

ひとつのエピローグ

 ピピピピピピッ!


 けたたましいスマホのアラームが、ボロアパートの部屋に鳴り響く。

 頭まで被った布団から、手が伸びて音の鳴るスマホを掴もうとするが……中々手に出来ない。

「――もうッ!」

 布団を払いのけて、占部うらべあきらは枕元のスマホを見付けると、アラームを止めた。

 時刻は6時。起床の時間だ。

(変な夢を見たなぁ……)

 黒い癖っ毛の頭を掻きむしると、ブルブルッと部屋の冷え込みに震えて、慌てて布団を身体に巻いた。

 3月も終わりに近づき、春も近いというのにまだ肌寒い。

「――夢?」

 眠い目をこすりながら、枕元に並んでいるものを見た。

 眠気で焦点が合うのに時間がかかったが――

 忘れた記憶を取り戻せるという砂時計が置かれていた。1ヶ月ほど前に魔女・一夜から渡された砂時計がまだそこにあった。

「何もなかったじゃ――」

 ふと、その横にもうひとつ。この世界ではあってはいけないモノだ。

「――これは確か!」

 柄に『炎の獅子』の紋章が入った短刀が、そこに置かれていた。



〈了〉

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炎の獅子の試練~魔女からの贈り物~ 立積 赤柱 @CUBE9000

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