122. 上からみる景色
オレはグングニルを握った。
すると、ゾワッとした。
なんかバベルの塔から大量の魔力が流れ込んでくるんだけど……。
うおー!
この感じ、全能感が半端ないぜ!
ふははははっ!
「私の目をお貸ししましょう。まあ借り物でありますが」
そういってラプンツェルがオレの肩に触れた。
「目を閉じてください」
オレは言われた通り、目を閉じる。
すると、世界が見えた。
世界といったら、さすがにちょっと大げさだな。
空からバベルの塔を見下ろしていた。
空に自分の目があるようだ。
ふははははっ。
これは面白いぞ。
空から俯瞰してみることができる。
ん?
いまなんか、水の柱が見えたぞ!
あそこにいるのはルインか?
豆粒みたいに小さくてよくみえんが、きっとあれはルインだ。
なんで水遊びなんかしてるんだ?
あ、わかったぞ。
敷地外には特に面白そうなものなかったから、ひとりで水遊びしてるわけか。
たしかに、空から俯瞰しての見ても、このあたり何もなさそうだしな。
よし、ならオレが良いものを見せてやろう!
おーい、ルイン!
って、さすがに聞こえないよなー。
なんかルインの前に黒いもやもやがある。
あれは……黒すぎて何か良くわからんな。
でも、人じゃないことはわかる。
よし、あれを狙うとしよう。
よい的になりそうだ!
ふははははっ。
目を開ける。
もうどこに投げればよいか、感覚的にわかっている。
窓の外をみる。
「グングニル――!」
オレは手に持っている槍を、空に向かって投げた。
◇ ◇ ◇
グングニルを発動させるためには、犠牲が必要になる。
そもそもグングニルはオーディンの魔法である。
オーディンの信念とは、何かを得るためには何かの犠牲が必要になるというものだ。
グングニルを発動するにも、それ相応の犠牲が強いられる。
原作でも、スルトは大きな犠牲を払った。
願いが大きければ大きいほど犠牲が大きくなる。
普通、グングニルを発動させようとするなら、何かしらの大きな願望を持っているはずだ。
それだけ強力な魔法であるからだ。
スルトは大切な人たちを失うという犠牲を払った。
グングニルを発動させようとするなら、それ相応の犠牲が必要になる。
しかし、もしもグングニルを発動させるのに、大した願いを持っていなかったら?
願いに比例して犠牲が大きくなるなら、願いが小さければ犠牲も最小限で済む。
アークは、グングニルに込める願いなどなかった。
彼はグングニルに対しても思い入れもなければ、特別な願望もない。
そこにあるから使ってみたいというだけのこと。
その程度の願いでは、犠牲などほとんどないようなものだ。
つまり、アークは奇跡的にほとんど対価を払わずしてグングニルを発動させることができたのだった。
巨大な槍が光の形をとって、空から黒い集団に向かって落ちていったのである。
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