85. 到着

 バベルの塔に来たぜ!


 いえあ!


 塔は国の東側、学園から見て南東に位置している。


 さらに塔の東には海があり、その向こうには島があるらしい。


 つまり、極東の島!


 ワクワクするぜ!


 まあ行くことはないがな。


 バベルの塔=大学のような場所を想像していたが、まあ概ね予想通りだった。


 構内の中央にあるそびえ立つ塔の存在感は半端なかった。


 なんと100階もあるらしい。


 この世界の建築技術では、魔法や魔術を用いたとしても100階の塔を作るのは不可能だ。


 バベルの塔を作ったのは、なんと神様なんだとさ。


 100階にたどり着くことは神の領域まで届いたことを意味するらしい。


 そして塔の頂上に行けば、なんでも願いが叶うという話がある。


 また、頂上ではすべての知識を手に入れられるという話がある。


 そのため、知恵の塔とも呼ばれているんだとか。


 願いを叶えるために頂上を目指すものもいれば、知識を欲するから頂上を目指す者もいる。


 単純にステータス目当てで頂上を目指す者もいる。


 神に近づきたいという目的の者もいる。


 まあオレには関係ない話だがな。


 叶えたい願いも特にないし、知識なんて別にいらん。


 オレくらいになると、自分が知識を得なくても大丈夫だからな!


 必要な情報は他のやつらに集めさせる!


 ふははは!


 やはり貴族は最高だぜ!


 ステータスも十分ある。


 伯爵という最高のステータスだ。


 これで十分満足できる!


 今のオレは自分に満足している。


 そもそもオレは神に愛されているからな!


 この世界で好き放題できているしな!


 ちなみに、バベルの塔は知識レベルが高いほうがより高いところまで登れると言われる。


 それも知恵の塔と言われる所以なんだと。


 塔の高さも見る人によって違うとか。


 そもそも知識レベルが低い人は、塔が高いことを認識できないんだと。


 スルトは66階、マギサは75階、ルインは88階まで行けるらしい。


 だが、オレは天才だから99階まで登れる!


 さすがはオレ!


 塔の高さを認識できるオレは最強ということだ!


 フハハハッ!


 知ってはいたが、オレは天才のようだ。


 と、まあここまでの話を塔の教授が教えてくれた。


 フレイヤとかいう女だ。


 他のやつらは美人だとか騒いでいたが、オレはかなり苦手だった。


 ジャラジャラとアクセサリーを付けやがって。


 鬱陶しい。


 ていうか、指全部にアクセサリーつけるとか多すぎだろ。


 むしろ、趣味わるいぞ?


 それにあの顔……前世でも見た顔だ。


 前世の経理部のやつがフレイヤと同じような顔をしていた。


 前世でオレをどん底に落としやがったクソ経理部のやつだ。


 普段は優しく、オレにも「なんでも相談してね」とか言ってやがったが、いざ上司の不正を相談すると、不正をもみ消されただけでなく、オレに責任をなすりつけてきたクソアマだ。


 クソ野郎め。


 この恨み、死んでも忘れないぞ?


 久しぶりに悪徳貴族としての血が騒ぐ。


 フハハハッ。


 何をして貶めようか?


 経理部のあいつも美人だった。


 会社一の美人と言われていたが、中身は糞だ。


 トイレで流してやりたいようなクソな女だった。


 いくら顔が良くてもあれだけ性格が終わってたら、魅力もクソもない。


 今でもあいつの顔は忘れられん。


「うふふっ。騙されるほうが悪いでしょ?」


 とか言ってたあいつのクソ生意気でムカつく顔は脳裏にこびりついている。


 クソがッ!


 ぶち殺してやりたいぜ。


 で、あのクソ経理部の女とフレイヤの顔は似ている。


 まあフレイヤのほうが美人ではあるが。


 あのクソ経理部の上位互換みたいな顔だ。


 美しさでは圧倒的にフレイヤのほうが上だ。


 まさに顔が黄金率でできているような、左右対称で完璧な顔。


 それがフレイヤだ。


 だが、所々、経理部の女とフレイヤの顔が似ている。


 その一点だけでオレはフレイヤを好きにはなれない理由だ。


「アーク君。よろしくね」


 という感じでニコッと笑いながら、フレイヤに手を差し出された。


 全身蕁麻疹が出るところだったぜ。


 オレはあまりにも拒否反応が出たから、手を握るのを拒否したくなった。


 だが、オレは笑顔で握手してやった。


「……」


 見ておれ、クソ女。


 顔がいいからって調子に乗るなよ?


 貴様を徹底的に貶めてやろう!


 伯爵の力を使ってな!


 無礼も不敬もオレなら許されるのだ!


 ふはははははははっ!

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