76. さすがはお兄様

「うふふ。お兄様ったら、もう」


 エリザベートは蠱惑的な笑みを浮かべる。


 彼女はアークからの指示・・・に従って行動した。


 もともとエリザベートは北神騎士団の動きを追っていた。


 そうなると、北神騎士団を動かせる立場である第一王子クロノスも怪しいと考えるのが自然だ。


 しかし、


「どうやら王子は一人で寂しくしてるらしい」


「一人? いつもは周りにいらっしゃる騎士団かたがたは?」


「周りにいるやつらが仲間いいひととは限らんだろう。最近(騎士団に)裏切られたらしいから、会いに行けばきっと喜ぶぞ?」


 と、アークが教えてくれた。


「それもそうですわね。すぐに行く必要がありそうですわ」


 このタイミングでの騎士団の裏切り。


 何かあるとしか思えなかった。


 同時にクロノスが白であろうということの証左しょうさでもあった。


「時計塔の上はデートスポットだぞ」


「うふふ。デートというのは、お兄様も面白い表現をしますわね」


 つまり、王子とともに時計塔に登れ、ということだ。


「急げよ。日が暮れてしまうと台無しになるからな」


 アークの指示のもと、エリザベートはすぐにクロノスのもとへ向かった。


 すると、ちょうどクロノスを救出したスルトと合流することができた。


 エリザベートは彼らに事情を説明。


 その後のクロノスの行動は早かった。


 クロノスは騎士団に裏切られたにも関わらず、迅速にトール含めた北神騎士団をまとめ上げた。


 彼らはアークの言っていたルインがいる場所デートスポットに向かったのだった。


 そして、時計塔の頂上では、アークの予想通りルインがいたのだ。


 さらには黒幕と思われるロキも一緒にいた。


「お兄様は本当にどこまでみえているのでしょう?」


 エリザベートはやはり兄以上の存在はいないのだと再認識したのだった。


 もちろん、これらすべてが偶然ということをエリザベートは知らない。


◇ ◇ ◇


 ニブルヘイム、最高だな。


 空が凍った。


 そしてぱちんと指を鳴らすと、空が粉々に砕けた。


 ダイヤモンドダストだぜ!


 この表現が正しいか知らんがな!


 幻想的で素晴らしい景色だ。


 ヴェニスの街にはよく似合う。


 あのしょぼい玉手箱のエンターテイメントを、最高のエンタメに昇華させてやったぜ。


 さすがオレのブルジョア魔法。


 きっと公爵も泣いて喜んでいるだろう!


 ふははは!


 偽マギサがオレを手放しで褒めてくれたが、まあ悪い気はしない。


 正直、あの程度の水を凍らすのにニブルヘイムを使う必要はなかったのだが。


 どうせなら、最高のエンタメにしようというオレの職人魂だ。


 その後、偽マギサやエムブラと別れたオレは宿に戻った。


 どうやらルインは無事だったらしい。


 それもそうだろう。


 みんな騒ぎ過ぎだったんだよ。


 この程度なんでもないことだ、と言ってやったら、皆がなぜかオレを褒めてきた。


 さすがに意味がわからんかったが、褒め言葉だけは受け取っといた。


 その後、ルインの様子を見に行った。


 ルインのやつ、なんかしょんぼりとした顔をしていた。


 きっと玉手箱のことでショックを受けていたんだろう。


 まさか玉手箱があの程度のものだったとはな。


 可哀そうだったから慰めてやった。


 玉手箱はしょうもなかったけど、ヴェニスはいい街だって伝えといた。


 実際、ヴェニスは最高の観光都市だからな。


 オレも十分楽しませてもらった。


 次来るときも最高のオモテナシをしてもらえるよう頼んどいた。


 ルインは快く承諾してくれた。


 そればかりか、今後ヴェニスを訪れる度に最高のオモテナシをしてくれるとことを約束してくれた。


 ふははは!


 コネ最高だぜ!


 これだから貴族はやめられんのだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る