35. 普通の人生
ふははははっ!
皆殺しだ!
ひゃっはー!
魔物狩り楽しくなってきたぜ!!
最近ストレスたまってたからな。
全部王女のせいだけど。
魔物は良いストレス発散になるぜ!
殺しても文句言われないし、やりたい放題だ。
やはりオレは神に愛されているらしい!
でなければ、こんなにいいタイミングでストレス発散の
ふはははは!
片っ端から氷漬けにしてたら、とうとう魔物がいなくなった。
チッ。
もうちょっと
公爵令嬢がかなり魔物を狩っていったらしい。
あいつめ。
オレの邪魔をするとは許せん。
だが、まあいい。
今は少し気分がいいからな!
「俺もあんたのようになれるか?」
唐突にハウベとかいう餓鬼が話しかけてきた。
なんだコイツ。
ちょっと前までオレに啖呵きってたのに、どういう心変わりだ?
まさか貴族であるオレが羨ましくなったのか?
まあ、その気持ちがわからんでもない。
こんな寂れた町の何の力の餓鬼よりも、伯爵であるオレのほうが何億倍も恵まれている。
だがな、小僧。
オレみたいになれるわけないだろ。
オレは伯爵なんだぜ?
平民がオレのようになるなんて不可能だ!
持って生まれたモノが違いすぎるからな!
「貴様とオレとは持っているモノが違う」
格が違う。
次元が違う。
そもそも貴族と平民を同じ土俵で考えることすらおこがましい。
「オレになれるはずがないし、なろうなんて思うな。貴様は貴様の道を生きろ」
オレになりたいだなんていう傲慢な考えを捨てさせてやった。
身の程をわきまえろってことだ。
餓鬼は神妙な顔をして頷いてやがった。
まあせいぜい平民としての人生を謳歌しな。
オレのようにはなれないだろうが、そこそこ良い人生は送れるかもな。
オレは最高に優雅な人生を送るがな!
ハッハッハ!
こういう餓鬼を見ているとつくづく感じることがある。
やっぱり貴族は最高だぜ!
◇ ◇ ◇
これは普通の町で普通に暮らし、ベッドで安らかに死んだ男の話。
幼い頃、少年はとある青年に憧れを抱いた。
魔物を軽々と、次々と氷漬けにしていく存在――アーク・ノーヤダーマ。
それは、まるで奇跡のような光景だった。
醜い魔物たちが一瞬で氷になり、パチンッと音とともに砕け散る姿は幻想的だった。
理想がそこにあった。
少年はアークのようになりたいと願った。
そんな少年に対し、アークは言った。
オレにようになる必要はない、貴様は貴様の道を生きろ、と。
それは一見突き放すような言葉にも思える。
しかし、ハウベはアークの言葉を胸に刻み込んだ。
誰かのようになるのではなく、自分だけの強さを見つけようと考えた。
そうして少年は何の変哲もない人生を歩み始めた。
小さな町で暮らし、仕事をはじめ、恋人ができ、結婚し、子供ができ、孫ができ、老いて死んだ。
少年は、普通の人生を生きた。
本来であったら幼い頃に死ぬ運命にあった少年、ハウベ。
ハウベが生きようが死のうが、物語にはほとんど影響はない。
しかし、彼にとってはたった一つの
死ぬ間際、ハウベはアークに感謝をした。
魔物から救ってくれたこと、そしてハウベに生き方を示してくれたこと。
アークの何気ない行動や言動が、ハウベという少年に大きな影響を与えたのだった。
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