18. 金髪野郎

 公爵令嬢にマウント取れて、スッキリしたぜ。


 今日もオレは平民の食堂で平民共に見せつけるように、豪華な食事をする。


 ふはははは!


 みながオレに注目している!


 オレの食事が羨ましかろう?


 この優越感、最高に気持ちがいいな!


「やあ、アーク君。隣いいかな?」


 金髪の男がしゃべりかけてきた。


 平民の分際で、このオレに気安く声をかけるなんて図々しいやつがいるものだ。


 それも金髪野郎、オレの許可なしに隣に座りやがった。


 こいつオレが誰かわかっていないのか?


 ガルム伯爵だぞ?


「座っていいとは言ってない」


「まあまあ。仲良くしようじゃないか」


 金髪の男はオレの豪華な料理をつまみ食いしやがった。


 なんなんだこいつは。


 本当に馴れ馴れしい。


 こいつオレが優雅に食事してると、話しかけてくる。


「そもそも貴様、誰だ?」


「え、酷っ。って、そっか。まだ名乗ってなかったっけ? ロストだよ。よろしく」


「勝手にオレの飯を食うやつと親しくするつもりはない」


「うわっ。ケチだねぇ」


 こいつぶん殴ってやろうか?


 オレは金も権力も権威もある男だぞ?


 この金髪エセイケメン野郎め。


 変な衣装着やがって。


「それよりもアーク君。なんで君はいつもここに訪れるのかな?」


「ハッ、そんなの決まってるだろ。こっちのほうが居心地良いからだよ」


 周りが平民だらけ。


 その中で貴族のオレが食べることで得られる優越感。


 こんなに気持ちの良いことはない。


「ふーん。そっか」


 金髪の男はさして興味もなさそうにつぶやきながら、オレの肉を食いやがった。


 こいつまじで殴ってやろうか?


「これからよろしくね、アーク君」


 ふんっ。


 誰が貴様と仲良くするか。


 寝言は寝てほざけ。


◇ ◇ ◇


 ロスト・フィン・F・ヌアザ。


 主人公の友人であり、兄貴的な立ち位置のキャラだ。


 魔法学園二年生。


 アークの先輩である。


 森に住む特殊な民族であり、その中でも精霊使いドルイドと呼ばれる特殊な力を持つ人物、それがロストである。


 ドルイドには魔法とは別の不思議な力を扱うことができる。


 その1つに予言というものがある。


 ロストは昔、神からのお告げを受けたことがある。


『魔法学園で運命的な出会いを果たす。その者と行動を共にすれば目的を達するだろう』


 というものだ。


 ロストにはどうしても叶えたい目的がある。


 その目的のために魔法学園に入学した。


 ロストは運命的な出会いを待っていた。


 そして、アークが現れた。


 ロストはしばらくアークの行動を観察していた。


 アークが”運命の人”であるかを探っていたのだ。


 数日アークを観察して、ロストは確信を得た。


 アークこそが運命の人である、と。


 消去法的な考えではあるが、アーク以外には考えられなかった。


 財力も権力も権威も頭脳もカリスマ性も、どれをとってもアークは一級品であった。


 何よりも正義のために行動するという姿勢に、ロストは惹かれた。


 アークがいれば、ロストは目的を達成することができるだろう。


――そう、復讐という目的を。


 と、ロストは考えていたのだが、もちろんアークはロストにとっての運命の人ではない。


 本来であれば、ロストは平民の食堂で主人公と出会うはずだった。

 

 そして主人公とともに闇の手の者と戦う運命にあった。


 つまり運命の人とは主人公のことである。


 しかし、アークが変に目立ってしまっていたせいで、ロストは勘違いをしてしまったのだ。


 この運命から外れた出会いが、今後どういう影響を及ぼすのかが誰にもわからない。


 ただ一つ言えることとしては、アークは原作クラッシャーということだ。

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