二章 新入生編

15. 魔法学園

 15歳になった。


 とうとう学園に通う歳だ。


 魔法については優秀な家庭教師を雇ったおかげで、かなりできるようになった。


 もやはオレに敵はいない!


 ふはははは!


 やはり貴族は最高だ!


 平民には優秀な教師を雇うなんてできないからな!


 家を出るとき、みんな泣いていやがった。


 きっと泣くほど嬉しいのだろう!


 まあその気持ちはわからんでもない!


 オレのような威張り散らしている餓鬼がいなくなって嬉しいのだろうな!


 言葉では「アーク様がいなくなられて寂しいです」とか言ってやがるが、そんなのは嘘だとわかる。


 妹も「お兄様! 大好きです! 行かないでください!」と目を真っ赤にさせてほざきやがった。


 あいつがオレを好きになるわけがない。


 散々教育という名の調教という名のイジメをやってきたのだ。


 好きになられる要素がどこにもない。


 どうせ心のなかでは、オレがいないことを喜んでいるのだろう。 


 まあいい。


 内心どう思われていようが、そんなことはどうでもいい!


 オレが偉いことに変わりはないからな!


 オレの代わりなどいないのだ!


 ちなみにカミュラは学園に連れて行くことにした。


 あいつには一生オレのもとで働き続けるという罰があるからな!


 カミュラのやつ涙を流していた。


 ハッハッハ!


 泣くほど悲しいか!


 だが、お前の気持ちなど知らん!


 オレは貴様をそばに置き続け、罰を与え続けるぞ!


 ふはははは!


 これぞ悪徳貴族!


 最高だ!


 ただまあ、獣人族たちと別れるのは寂しいな。


 あいつらはオレの癒やしだ。


 彼女らには時折学園に顔を出すように命じといた。


 あの姿を見るのがオレになのだから。


 獣人族たちは泣きながら「もちろんです! アーク様のためならどこにだって馳せ参じます!」と言ってたが、本心とは思えん。


 まあ本心がどうであろうと、オレのもとからは離れられないがな!


 ワーッハッハ!


 この世界に人権などない!


 伯爵のオレには逆らえないのだ!


 しかし魔法学園に行くと好き勝手できなくなる……。


 オレよりも偉いやつがいるらしいからな。


 だがまあ、オレよりも立場が上のやつらとは関わらなければ良いだけだよな。


 オレは自分が一番偉いところで偉ぶりまくる!


 それがオレの目指す学園生活だ。


 まずは平民どもを集めて、オレの下につけよう!


 そうと決まれば、学園生活が楽しみになってきたぜ!


 領民共がせっせと稼いだ金で、オレは学園生活を豪遊しよう!


 ふはははは!


◇ ◇ ◇


 魔法学園一年生。


 新入生の中で、一際目立つ存在が三人いる。


 一人はマギサ・サクリ・オーディン。


 第二王女である。


 美しい少女だ。


 だが何よりも、王女という身分だけで否応なく注目を集めている。


 美貌や気品など、その立場からすれば霞んで見えてしまうほどだ。


 次にルイン・K・ウラシマ。


 ヴェニス公爵令嬢である。


 東洋の血を引く、黒髪黒目の美しい少女である。


 ヴェニス公爵令嬢は、幼い頃から才女として一目置かれていた。


 特に魔法の知識・技術は一級品であり、歴代ヴェニス家の中でも圧倒的といえるほどの才能を有していた。


 そしてこの二人に負けず劣らず……。


 否――二人以上に注目を集めている少年がいた。


 アーク・ノーヤダーマだ。


 アークは8歳でガルム伯爵の爵位を授かると同時に、領地改革を断行した。


 史上最悪と揶揄されていたガルム領を立て直し、領民からの信頼を勝ち取っていた。


 少年が行ったこととしては、あまりにも大きな成果だ。


 これまでの功績と伯爵という高い地位から、アークは多くの注目を浴びていた。


 ちなみに原作でのアークは逆の意味で注目されていた。


 つまり、悪い意味で注目を集めていたのだ。


 わがままで傲慢な悪童。


 それが原作でのアークの評価だ。


 この評価の違いが、今後物語にどのような影響を及ぼすのかは誰にもわからない。

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