5. クソガキ
久しぶりに街に出てみたら、ひどい目にあった。
ガキが刃物持って突撃してきやがった。
貧相なガキだったが、オレの兵士をバッタバッタ倒しやがった。
ムカつくガキだ。
まあオレのところに来る前に兵士が捕らえられたがな。
「あんたの……あんたたちのせいで、あたしの両親は殺されたの! あんたが奪いから……。ぜんぶあんたが悪いのよ!」
馬鹿なやつめ。
親の
オレに楯突いて、ただで済むと思っているのか?
そもそもオレは悪くない。
無力なお前が悪いんだよ。
「勘違いするなよ、餓鬼。世の中がそういうものだ。恨むなら世の中の不平等を恨め」
まあ恨んだところで意味ないがな。
オレのように持って生まれた男は、生まれた瞬間から輝かしい人生が約束されている。
逆にこいつは生まれてきた時点で負けが確定している。
可哀想?
んなこと一ミリも思わないね。
オレはオレの好きなように生きるって決めた。
他人の不幸なんて知るかよ。
自分が良ければそれでいい。
「死ね! クソ野郎!」
「ハッハッハッ! 言葉で人が死ぬなら、オレは今までに何回殺されたんだろうな?」
「黙れ! 神はお前を許さない!」
「アーッハッハ! 神か! これは傑作だ!
神にでも祈ろうってか? アーク・ノーヤダーマを殺してくださいって? 物騒な神もいたもんだ」
オレは餓鬼の頭を踏みつけた。
「神がいるとすれば、それはこの上なく不平等で気まぐれな存在だ。
なにせこのオレに二物どころか三物も四物も与えたのだからな」
「……ッ」
「なあ餓鬼。吠えるのは結構だが、立場をわきまえろよ?
貴様の言う神とやらが、気まぐれで貴様を殺さないとも限らないんだからな」
悪徳領主バンザイだぜ。
「殺すなら殺せよ! 覚悟はできてる!」
「ハッ! オレは神じゃないんでな。殺すなんて生ぬるいことはしない!
貴様をずっとオレの手元でこき使ってやるよ! 一生な!」
大嫌いなやつのもとで働き続けるなんて、さぞ苦痛だろう。
ふははは!
別にオレに他人を虐げる趣味はないだ。
だが伯爵に楯突いたやつを放っておくことはできない。
そんなことすれば他の奴らからも舐められてしまう。
オレの威厳ってのを見せねばならんからな。
こいつは見せしめだ。
死ぬまでオレのところで働かせ続けてやる!
はーっはっは!
悪徳領主最高だぜ!
これだから悪徳領主はやめられないぜ!
◇ ◇ ◇
あのガキはカミュラというらしい。
オレと同い年だ。
オレはカミュラを手元に置いた。
大嫌いなオレのもとで働かせるのが、やつに対する最大の罰だ。
オレはカミュラを扱き使っているところを、使用人たちに見せびらかした。
どれだけオレのことが嫌いだろうと、伯爵であるオレには逆らえない。
ふははは!
カミュラを使いまくってやった。
姑のようにネチネチと仕事に文句をつけてやった。
最初はまあ良かった。
奴は屈辱に顔を歪めて、オレを睨んできた。
だが途中からカミュラのやつ、従順になりやがった。
さらにはこいつ、仕事が覚えるのも早いせいで嫌みも言えなくなった。
これでは見せしめにならんだろ。
はあ、まあいい。
どうせ心のなかではオレに暴言を吐いてるんだろうしな。
そんな
オレは悪徳貴族だからな!
ふはーはっは!
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