ジェット機が飛ぶ空で

つばきとよたろう

第1話 ジェット機が飛ぶ空で

 マンションへ帰る道で、ちょうど頭の上を大きな機体のジェット機が飛んでいった。立ち止まって空を見上げて、どうしてあんな物が空中を浮かんでいられるのかと、じーと眺める時があった。轟音を響かせ、ジェット機は悠然と飛行していた。当時住んでいたマンションからは、ジェット機がまるで真横を飛んでいくかのように見えた。遠くには星屑のように電灯を点した福岡空港が見えた。ジェット機は離陸体勢を取っていたから、斜めに向かって下りていく。数十分おきに、離陸と着陸を繰り返しながら、窓の外を飛んでいった。それが唯一このマンションで気に入っているところだった。住んでしばらくは、夢中でジェット機を見ていた。ジェット機が近づくと、かなりの音を立てていたからすぐに分かった。窓を覗けば、必ずと言っていいほどジェット機の凛々しい機体が見えた。

 ある日、カーテンを開けて窓の外を見ると何かが飛んでいた。当然ジェット機だと思ったが、そうではなかった。それは人間の格好をしていた。足を伸ばして、ジェット機のように腕を横に伸ばしていた。服は着ていなかったが、裸ではなかった。全身包帯のような物を巻いていた。遠くなのに、その事がよく分かった。しかし、その事がおかしいと段々気付いた。もちろん人間が空を飛んでいるのも奇妙だが、いつも飛んでいるジェット機と比べると、人間にしてはかなり大きいことが分かった。薄気味悪い物を見る目で、じっとそれを眺めていた。それはジェット機のように、空の向こうに飛行していった。それが見えなくなって、後からぶるぶると全身に寒気が走った。見てはいけない物を見てしまった気がした。

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