第18話 エピローグ

 結婚式の翌日、まだお酒が残ってる感じのアミールだったけど、教皇様がお帰りになるのでお見送りに。ほら、シャキッとして!


「アミールよ、ナオミを頼んだぞ」

「は、はい!」


 教皇様に声を掛けられて一気にシャキッとした様ね。しかし追い打ちを掛ける様に、教皇様がとんでもないことを……


「初夜は?」

「えっ!? いや、昨晩は早々に寝てしまって……それに、ナオミさんは聖女ですし」

「聖女でもすることはするだろう? ねえ、ナオミちゃん」


 私に聞かないでください! そりゃまあ前世では経験済みですけど、こちらではまだ生娘なんですから! なんでニヤニヤしながらこっち見るんですか。


「夫婦の愛を確かめることも大切だぞ、アミールよ。子供を授かったなら、私が名付けたいものだな」

「気が早いです、教皇様!」


 流石に恥ずかしくなって怒って見せると、クスクスと笑いながら馬車に乗り込んだ教皇様。帰りは本来この馬車を引くはずだった馬が繋がれていて、いつの間に仲良くなったのかトリスタンが挨拶している。あの馬も帰りのために皇都から同行していたから、ここに来るまでの間に仲良くなったのかしら?


 教皇様も出発されて、それに続く様にエクルストンの同僚たちも。彼女たちもハードスケジュールながら式に参加してくれて本当に嬉しかった。アミールは彼女たちから『ナオミ様を泣かせたら承知しないから!』と口々に言われてタジタジだったわね。彼女たちとは近々再会を約束して馬車に手を振る。


 アミールの妻としての努めも聖女としての仕事もあるけれど、今日はお休みをもらうことに。本当にここ数ヶ月はジェットコースターの様に目まぐるしい日々だったなあ。でも、ぼんやりもしてられないわ。こういう時は……まずはストレッチ! そうだ、お姉さんのトレーニングメニューも考えないとダメだし、アミールの分も考えなくちゃ。ランニングを続けてきたお陰で、だいぶ基礎体力と持久力は付いてきたもんね。


 そして夜、夫婦の部屋でアミールと二人きりになると、変に意識して気まずい雰囲気に。教皇様があんなことをおっしゃるから! 皇都に行く前は好きにしていいとは言ったものの、あの時よりもアミールのことをずっと身近に感じているし、それに結婚もしたし。かと言って奥手なアミールのことだから、放っておいたら自分からは言い出さないだろうなあ。


「あ、あの!」


 ベッドに入ったタイミングでお互いに声を発する。顔を見合わせてお互い赤くなっていた。


「ア、アミールからどうぞ」

「じゃあ……ぼ、僕はその……女性の経験はありませんし、う、上手くできる自信もないです。ナオミさんは聖女だし、僕の奥さんだからと言って手を出していいのかどうかもまだちょっと迷ってます。でも……」

「でも?」

「ナオミさんを愛してます! だから……」


 それ以上は言わなくていいわ。充分あなたの気持ちは伝わったから。気が付いたら抱きしめてアミールの唇を奪っていた。


「ナオミさん……」

「大丈夫。私も初めてだし、私もアミールを愛しているわ。だからあなたの思うままにやってみて」

「……」


 たどたどしくも一生懸命に私を愛してくれたアミール。不器用ながらも肌に触れる彼の手や唇から優しさが伝わってくる。彼への愛おしさが最高潮のタイミングでその時を迎え、痛みがありながらもアミールの動きに合わせてイクことができた。行為が終わった後もまだ彼と繋がっている感覚があって、ベッドの中でイチャイチャしながら過ごす。少し触れられただけで心地よくてまた軽くイっちゃう……もう一度口づけを交わして彼の胸に顔を埋めると、そのまま眠りの淵へと落ちていった。本当に愛されてるって、こういう感覚なのね。


 翌朝、心地よい目覚め。隣では少し幼い寝顔のアミールがまだ寝ていて、頬にキスをすると目をこすりながら起き上がる。


「おはよう、あ・な・た」

「おはようございます、ナオミさん……」


 寝ぼけ眼だけど、段々昨晩のことを思い出してきたのか、顔を赤らめているアミール。フフ、やっぱり可愛い。


「さあ、起きましょう。朝のランニングの時間よ」

「は、はい! ……って、服を着てください!」

「あら、今更恥ずかしがることはないでしょう?」

「そ、それはそうですが、朝と夜では違いますから!」


 必死になっている彼に近寄って、軽くキスをすると真っ赤になっていた。もう、うぶなんだから!


「あなたが望むなら、朝でも昼でもしていいのよ」

「もう! からかわないでください!」


 半分は冗談だけど、半分は本気よ。あなたとの行為は嫌じゃないし、子供も欲しいと思ってる。でもその前に、もう少し筋肉を付けて力強くなってもらった方がいいかなー。


 シャワーを浴びてから着替えて二人でランニングへ。心地よい朝だわ。防衛装置も正常に動作していて街が魔物に侵食されることはないけれど、減ってしまった人口は増やさないとダメね。教皇様から領地内の魔石の採掘権も頂けたことだし、今後のことはお兄さんと一緒に決めましょうか。妻として聖女として、メイヨールを支えていくためにやるべきことが沢山ありそうだけど、二人で頑張りましょう!


 そうだ、忘れてたけど『筋肉カフェ』! エクルストンはマッチョが少なかったけどこっちはマッチョな兵士が多いし、イケるかも知れない! 楽しみが一つ増えたわ。

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【完結/全18話】マッスル聖女は年下の旦那様をゲットしました たおたお @TaoTao_Marudora

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