空模様

葵野 海色

 

夏空に雲がかかり、雨が降る。

僕は景色を見つめ歩き出す。

虫の声や人の声達が静まり、

淡々と雨の音だけ響き渡る。


雨が運ぶ雨音は夏を中和し、

涼しさを僕に届けてくれる。

憂鬱な日々を晴れた気分に。

居心地のよい空気感が誘う。


心が晴れ、夏空は恵を降らす。

雨が止むと草木は光を帯びて、

虫達は声を取り戻し鳴き続け、

僕は爽快な気分で歩き続ける。


夕空になり、虫の声が変わる。

雨の匂いは微かに残りながら、

僕は深呼吸して空を見つめ、

鴉が夜へと向かい飛んでゆく。


水たまりに映る夕空の風景。

儚さを感じ、見入ってしまう。

淡いオレンジ色から濃い色へ。

夏にピッタリな色へ変化した。


夕日が段々と山へ沈んでゆく。

鴉は、もう家へ帰ってしまった。

静まり返るこの瞬間が僕は好きだ。

のびのびと今日の空を見つめる。


月の色や形がくっきりしてきた。

夕空は、もうここには居ない。

夏の夜空が星々を照らしだす。

そろそろ家へ帰ろうと走った。


明日はどんな夏空になるのか。

明日はどんな夕空になるのか。

明日はどんな夜空になるのか。

明日が運ぶ空を待ちわび、微笑む。

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