9作目_深海の姫、光に焦がれて
◆深海の姫、光に焦がれて
8作目
文字数:4,176文字
第七回こむら川小説大賞参加作品
ランキング:詩・童話・その他ジャンル日間1位(2024.8.13)、週間17位(202.8.18時点)
リンク:
https://kakuyomu.jp/works/16818093082058026703/episodes/16818093082063772909
お題が「光」ということで、深海から見た光をテーマに→人魚もの?→悲しいオチにしよう、くらいを最初にざっくり考えた気がします。人魚と言ったら悲しいオチだよなと自然に考えていたのですが、これはよくよく考えたら胎界主(※第一部 第十一話)の影響かもしれません。ディズニーはハッピーエンドですもんね。
「深海から見た光」「人魚」は他の参加者さんも使っていて人気のテーマでしたね〜。暗く美しい煌めきの話に仕上げている先駆者の話を読んで「これに競合するのか!?」と焦りや不安を感じました。でも、とりあえず自分のできるやり方でやるしかないんですよね。主催者の方の「ネタ被りは全然しょうがないよ!」というお言葉も励みになりました。結局人魚ではなくなったのですが……良いミスリードになったのかも。
で、さぁ書き始めよう!と思ったんですが、物凄い難産で書き出しも文体も定まらず呆然としたまま日々が過ぎました。
最初は破天荒なお姫様によるドタバタコメディ→でもどうしても光を見てみたいの!という青春ものっぽい流れからの悲しいオチを考えてたんですが、まー全然書けませんでした。舞城王太郎みたいな若い女性主人公の一人称文体に憧れがあったのですが、これはいずれ別の機会に挑戦したいと思います。
結局書けるところから書こうということで、ラストから書き始めました。ラストは淡々とした文体で事実を羅列する形で書けるので。
ただ、お姫様が見た光は人工の光だった、というのは最後に付け足した要素でした。どうせならもう一押し残酷にしようと。しかし自分が海の近くで生活していた人間だったので、イカ釣り漁船の光がクッッッソ明るいのって世間一般の方々にどこまで伝わるんだろう……とちょっと不安でした。一応オチとしては伝わるだろうと思ったのですが、実際どうだったのでしょうか。
それにしてもオチが残酷で救いがなく、「こんなんただの露悪じゃん」「何を思ってこれを書いた?」と読者に嫌悪を催さないか不安で筆が進みませんでした。自分でもどうしてこんなに酷い話を書こうとしてるんだろうと疑問だったのですが、ふとしたタイミングで「これはつまり谷山浩子のカントリーガールが好きで、それが表に出てきたんだな」と気付いて凄く腑に落ちました。
「カントリーガール」では、主人公の男の子による同郷の女の子に対する思慕の情→女の子が都会の男と付き合い、そしてすぐ振られる様子が歌われるのですが、自分にとってとても尊くて愛しい存在が他のコミュニティの人間からなんてことのない存在として雑に扱われる悲しさと残酷さに凄く胸を打たれたんですよね。都会の男は酷いといえば酷いけど悪いことをしているわけではなく、責めても自分や女の子が惨めになるだけで、ただ悲しいんです。私はこの曲が大好きでしょうがないんですが、その思いをこういった形で自分なりに創作として昇華できたのはとても嬉しく思います。創作は自分の「好き」の再発見でもありますね。
さて、こうして自分の原点に気付いたところで、そうなると視点は「お姫様」ではなく、「お姫様を思う誰か」にすべきだなと決まりました。で、どうせなら百合にしちゃおうという自分に都合の良い設定に。自作小説の特権ですね。
しかし会話文をこれまであまり書いたことがなかったことや、「実は人魚じゃなくて深海魚なんですよね」という展開のために、手や顔の器官を使った表現などが制限されたことで非常に難儀しました。例えば「手を伸ばそうと〜」とか「その唇が〜」とかが使えないんですよね。「二人」って表現も使えないし。
結局、フレームとしては「人間の言葉しか話せなくなったため、すれ違った別れの会話劇を続ける」という形になりました。「言葉は交わせども悲しいほどにすれ違う」という展開は好きなので、やれて良かったです。
あと、今回初めてキャラの名前等にChatGPTを活用しました。セレーネは人魚っぽい名前で出力、ルチェはイタリア語の光(ルーチェ)から。
しかしそれにしても難しかった。こういうのももっと得意になりたいですね……。背景として深海の妖しさや暗がりの煌めきももっと表現できたら良かったかも。
こむら川の評議員様含め、複数の読者の皆様からオチの部分について好評いただき、本当に安心しました。この場をお借りして感謝申し上げます。
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