第8話 プロキア連邦共和国・・・順調
報道機関等による、国民へ向けての放送と同時に、暫定政府から、報道機関等への、大統領選出に関する説明・質疑応答が繰り返されていた。
グラスコフ議長: 「最後に・・・前例の無き取り組みです。国民からは様々な意見が出る事でしょう。しかし、一刻も早く大統領を決めなくてはなりません。
政府から国民への説明報道後、みなさんにも、政府報道に追従する形で、国民投票に関する報道をして頂く訳ですが、政府からは1週間前に、この内容を報道機関に事前周知していた事も伝えます。
国民の中には、我々政府と、報道機関が結託して、この前代未聞の国民投票を進めようとしていると捉える者もあるでしょう。
様々な妨害行為が行われるかもしれませんが、真実のみを報道し続けて頂きたい。
特に、ハローシイにより選ばれた3名の大統領については、憶測による報道、国民を誘導するような報道はやめて頂きたい。
この政策が成功するか、しないかは、皆さんの報道にかかっています。決して政府寄りの報道をする必要はありませんが、真実を突き詰めた報道を、お願いします」
そして、いよいよ国民へ向けて、【国民投票による大統領選出】が、暫定政府により発表されたのである。
その数分後、一斉に報道機関による報道が始まった。
・・・・・国民の反応は・・・・・
予想に反して、大規模な混乱は起きなかった。
1週間に渡る戦争実態報道により、国民が疲弊し尽くしていた事と、各報道機関が、3名の大統領候補の情報を正しく伝えていたため、大多数の国民が、その人物像を把握し、『この人達ならきっとプロキアを再建してくれるのでは』という大きな期待を持つ事が出来たからである。
世論調査では、ガイダル氏とペトロフ氏が、人気を二分し、ハルトマン氏の指示は、5%に留まっていた。軍人や議員を嫌う者たちが、わずかに支持をしたのみである。
グラスコフ議長は、暫定政府の職員、いや仲間と、報道機関各社に、心より感謝した。
特にボルコフ社主に対しては、頭の下がる思いであった。
万が一備え、警察や、民間警備会社にも、暴動に対する警戒を依頼していたのだが、今の所、大きな暴動は起きていない。
国民投票の会場設営等も、なんとか進んでいる。
あとは、3名の大統領候補による、政策発表会だ。
公正を期すために、発表の順番は、事前抽選で
1番目が、イリヤ ハルトマン
2番目が、セルゲイ ガイダル
3番目が、グラディミール ペトロフ
と決まった。
発表会場の設営、全国放送の準備も急ピッチで進められた。
『順調だ。順調過ぎる』
グラスコフは、何か大きなトラブルが、この先に起こるのではないか。それが不安でならなかった。
3名の大統領候補選出もそうであったが、実は、一連の行動は、ほぼアイザック博士からの助言を基にしたものであった。
正確に言うと、『ハローシイ』からの提案と言うべきか、指示と言うべきか、AIによって導き出された、この前例無き大統領選出は、ここまでは、いまくいっている。
AIという技術の凄さに感動するとともに、これが軍事利用されかねない状況にあった事(ハローシイの原型は、軍事戦略AIとして開発途中だった『ププーシキン』)を想像すると、今後益々進化していくであろうAI技術を始めとする技術革新に、大きな不安を抱くのであった。
グラスコフ議長: 「国民のみなさん、こんにちわ。暫定政府議長の エフゲニー グラスコフです。
これより、3名の大統領候補の方に、政策方針演説を行って頂きますが
演説順は、事前に抽選を行い決定しております。
では、まず最初に、イリヤ ハルトマンさん よろしくお願いします。」
国民が、かたずを飲んで見守る中、候補者の政策発表が、始まった。
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