第2話 プロキア連邦共和国・・・戦争がもたらしたもの
プロキア連邦共和国は、ライナ共和国への侵略戦争において、大敗を喫した。
この侵略戦争により、
何より、多くの人命が失われてしまった。
多くの武器も失われ、軍が崩壊し、国防力の低下を招いた。また武器性能の低さが露呈したため、今後、軍が、ある程度の復活を果たしたとしても、同盟国・友好国からの武器注文は、見込めないだろう。(軍および軍事関連企業は、諸外国の厳しい管理下に置かれたので、元の軍事力に復活する事は無かったが)
【結果ではあるが、この事は、世界各地で起こっている、戦争・紛争地域への武器供与が鈍化し、戦争の終結を迎えたり、縮小化を実現させたりという好結果をもたらす事となった】
国家予算は底をつき、財政破綻を起こした。
通貨価値が暴落し、国際競争力・国際信用力を失い、多くの資産家、個人が破産した。
有能な技術者(特にIT関連技術者)は、諸外国の優遇もあり、いち早く国外へ脱出をしており、人材・技術の流出につながった。
若者の死、または国外逃亡により、産業によっては深刻な労働者不足に陥った他、多くの海外企業がプロキアでの操業を取りやめ、撤退していったので大量の失業者を生み、産業全体の衰退を招いた。
中央政府の機能が崩壊し、政治的混乱を招いた。そして混乱の中で、有力者達の権力争いが激化していった。
軍・警察機構が弱体化したため、暴動が抑えられなくなり、治安の大幅な悪化を招いた。
観光業が大打撃を負い、関連業種の倒産、外貨獲得の減少をもたらした。
・・・・・などなど
プロキアにとって、この戦争により、もたらされた利益は、何一つ無かったと言っていい。(略奪した金品を除いては)
【自国の行なってきた非道行為が、白日の下にさらされ、中央政府のプロパガンダが全て、うそ偽りであった事が明白となったため、愛国心、政府・軍への尊敬、団結、忠誠心などが失われていった。
また、敗戦国として、莫大な戦争賠償、戦後補償を負う事も、国民の大きな不安材料となったのである】
そして、プロキア国民が、最も恐れた事。それは・・・・・
【ライナ共和国をはじめとする、諸外国による、プロキアの領土占領!】
という事であった。
敗戦国であるので、そうなる事は、今までの戦争の歴史を見ても、当然の流れではあった。
軍は崩壊し、抗うすべも無い。
【家も、財産も奪われるのか?】
連日報道される、戦争の真実。
ライナ共和国での、殺人、誘拐、物資略奪、捕虜虐待・惨殺、インフラ破壊、
あらゆる事実がさらされていく。
【次は自分たちが、同じ目に合うのか?】
不安と恐怖により、自害する者も、多く現れた。
しかし、現実は、そうはならなかったのである。
戦争賠償・戦後補償をプロキア連邦共和国に完遂させるため、ライナ共和国とその同盟国、友好国、戦時下における武器・食料・生活物資等提供国により、世界保障連合(WSU)が設立された。
【ライナ共和国とWSUは、プロキアの領土を奪わなかったのである】
領土のほか、国宝、美術品、中央銀行に密かに保管されている貴金属類なども戦争賠償金として、没収されてもおかしくはなかったが、それも無かった。
それは・・・・
そのような事をすれば、プロキアの行なってきた事と大差がなくなってしまう。
国際的に見ても、同意を得られない国もあるだろう。
(家族を殺された者など、ライナ国民の中には、目には目を という事で、侵攻を望む者も当然いたが、これは致し方ない事ではある)
元より、他国侵略など全く考えていなかった訳で、まずは、自国の復興が最優先であり、その為にはどうすれば良いのかが、ライナ政府関係者を中心にWSU幹部も含めて、議論が交わされた。
結果、
プロキア領土への侵攻は、プロキア国民の復興への意欲を低下させ、ひいてはそれがプロキア復興のスピードを遅らせる事にも繋がる。
また迫害を受ければ、敗戦を受け入れらない人々を中心に、多数のゲリラ組織が作られ、更なる混乱を招くかもしれない
それは、【戦争賠償の不履行・遅延にも直結しており、得策ではない】との結論に達した。
決して、プロキアの行なった事を許した訳ではない。失った人命は、どうやっても戻らない。悲しい事実である。
破壊された様々な施設、略奪された財産
どれも元通りには、ならない。
「これが戦争である」の一言では済まされないが、「これが戦争である」という現実を受け入れなければならない部分もある。
ライナ共和国とWSUは、戦争賠償、戦後補償を完全履行させるため、
石油・天然ガスの採掘場を完全支配下に置き、その産出物及び輸出により得た利益を賠償に当てる事にした。石炭や、鉄鉱石などの鉱物資源も支配下に置こうとの意見もあったが、それは今後の状況を見て判断していく事が決議された。
採掘場の労働者(管理者は別)は、プロキア国民オンリーで、労働環境も整備し、高級優遇するとした。(これは、雇用を生み出すと共に、労働者の反乱を防ぐ目的もあった)
産出した石油・天然ガスは、まずは、プロキア国民の為に割り当てられる。
しかもその価格は、産出原価の10分の1という、ほぼ無料と言っていいほどの破格値で、個人へ販売する。企業へは産出原価の2分の1とした。
そして、ライナ共和国へは、輸送費も含めて完全無料、WSU加盟国へは、産出原価の2分の1の価格
戦時中、どっちつかずの態度であった国に対しては、戦争が始まる前の国際価格の1.2倍(年度更新)と決まる。これは、ある意味、罰則のような意味合いも持っての事であった。
プロキアへの賛同国へは、戦前価格の5倍
プロキアへ武器供与を行った国に対しては、戦前価格の10倍の価格設定がされた。
石油・天然ガスの販売面で収益赤字が出た場合は、石油製品の製造販売で利益を上げ、補填するシステムも考え出された。
こうなると、当然、武器供与を行った国などは、他の産油国から購入をしていく事になるだろう。それはそれで、一向にかまわないのである。なぜなら、この価格設定は、
いくら豊富な埋蔵量を抱えているとは言え、限りのある資源を、どうしたら出来るだけ長期に渡り、安定して供給し続ける事が出来るかを考え抜いた政策であったからである。
切羽詰まって、高価でも買いたいとう事であれば、それはそれで大きな利益を生み出す事になり、どちらに転んでもOKな話ではあった。
(結局、武器供与国等は、他の産油国から足元を見られ、以前より高値で、購入する破目になってしまうのだが)
手っ取り早く、高値で各国へ販売して利益を稼ぐ方法もあったが、それでは追いつかないほどの賠償額である。ならば、プロキア国民の感情へも配慮しながら、ほぼ永遠にエネルギー資源を確保できた方が、良いのではないかと考えられたのである。
今後の方針が、ほぼ決まったところで、ライナ共和国とWSUは、新中央政府を早急に作ると共に、新たな大統領を決めるよう、プロキア連邦共和国の中央政府に残る政治家に告げた。
尚、戦争を推進した政治家は、当然逮捕され、新中央政府のメンバーに含まれていない事は、言うまでもない。
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