豪鬼大戦

もじ文字ヒーロー

第1話 プロキア連邦共和国・・・侵略

 全陸地の10%を占める北の大国、プロキア連邦共和国。

国土の60%は、永久凍土に覆われており、人口は、居住に適した南部に集中し、首都モロコアの大都市を形成している。

 国の歴史は、戦争の歴史といっていいほど、絶えず戦争を行っていた。

人口は1億5千万人を超え、世界最強との呼び声も高い軍事力を有している。

そんな超大国に、安易に戦争を仕掛ける国など、近代においては皆無なのだが、

プロキアは、

【他国の侵略行為から自国を守るため】

【親プロキアの人々を迫害から解放するため】

【元々は自国領土であると主張する土地の奪還】

を理由として、次々と近隣国に、侵略戦争を仕掛けていく。


 プロキアに限らず、戦争の大義名分は、だいたい、こういったものだろう。

(宗教による対立もあるが)

 しかし、侵略戦争の本質は

【資源の確保】に他ならない。

石油・ガス、鉱石などの天然資源や、海洋資源の確保は、どの国も重要な課題である。

プロキアにとっては、冬場でも凍る事のない、不凍港を保有する事も、

国力増強に関わる最重要課題で、武力による他国侵略は、最も効果的かつ、確実な方法であった。


 西暦2022年に、隣国の、ライナ共和国 に侵攻し、海が凍らないサレミア半島を自国領土としてしまった。


 この侵攻は、なんの兆候もなく、迅速かつ、圧倒的な軍事力により行われ、ライナ共和国や、その同盟国が反撃する間もなく、たった2日間で、あっという間に侵略を成功させてしまったのである。


 この大成功が、更なる悲劇を生む事となる。


 サレミア半島侵攻から8年後の2030年、プロキアは、【過去に侵略を受け、ライナ共和国より奪われた領土】であると(一方的に)主張する、ライナ共和国の東部地域に侵略戦争を仕掛けた。ただし今回は、ライナ共和国はもとより、その同盟国、そしてプロキアとは主義主張が異なる国々が、サレミアでの失敗を教訓とし、厳重警戒を継続して行っていたため、数年前から、侵略の兆候を察知しており、来るべき、【時】に対応するため、ライナ共和国と、その同盟国は軍事力を強化していた。


 戦争は良くも、悪くも、軍事産業を中心に経済の活性化を少なからずもたらす。

コロロウイルスの世界的蔓延により、世界中の経済が混乱に陥り、各国の関心事は、経済復興一本の中、プロキア中央政府は、【国内経済の活性化を図り、政府支持率向上による、政権の安定を図るには、絶好のタイミングが訪れた。】と考えた。


 そこには、サレミア半島侵攻作戦成功による戦勝イメージしかなく、兵站準備もそこそこに、大量の戦闘員、大量の兵器による、超短期侵攻を画策する。


  ・・・そして、ライナ共和国東部侵略戦争が始まった・・・

 

 戦争当初は、圧倒的な軍事力を持つ、プロキア軍に首都まで攻め込まれたが、同盟国や、明らかな侵略戦争に反対する諸外国からの軍事支援を受け、首都陥落を回避、

徐々に、プロキア軍を、押し戻していった。

 祖国を死守しようとする者と、自国の非を感じながらも、命令に従い戦う者の差は大きかった。

 また、軍事大国とみられていた、プロキアの兵器は、その他諸外国の兵器性能に遠く及ばず、徐々に、その軍事力の実態が明らかになっていく。

 自国の軍事能力に対する慢心と、ほぼ国内のみで兵器開発を行ってきた事による弊害など、原因は多々あろうが、プロキアの兵器精度は非常に悪かった。

 そのため民間施設へのミサイル着弾などにより、ライナ共和国の民間人にも多くの犠牲者が出てしまう結果となってしまったのである。

 徐々に、ミサイル攻撃は、軍事施設の破壊目的というより、ライナ国民への恐怖心の植え付け、戦争継続へのあきらめ、絶望などを生み出す目的でも使用され、なりふり構わぬ攻撃が続いた。


 劣勢となったプロキア軍は、更なる愚行、暴挙に出る。

ライナ共和国内の、原子力発電所、変電所、ガス・水道施設等、インフラ施設への攻撃、更には、ダム破壊まで行われ、多くの犠牲者を生んだ。

 対人地雷・クラスター爆弾・白リン弾、ガス弾等の使用、

 子供・女性の誘拐・洗脳、捕虜への拷問・虐殺

 プロキア産農産物、石油等天然資源の輸出の差し止めをちらつかせての、各国への脅し、海上への機雷散布、海上閉鎖、民間船舶往来阻止、


そこには、戦争ルールや、人道など皆無!

 

 当然のように、核兵器使用をチラつかせた脅しは、戦争当初より行われ、

侵略地からの略奪、市民の虐殺は、何の罪悪感もなく、当然の権利かのごとく、行われていた。

   

 プロキアの横行が激化するにつれ、ライナ国民の結束は、更に強固なものとなっていく。

 諸外国の軍事支援も、当初、長距離射程のミサイルや、戦闘機の供与は、世界大戦への発展を恐れ、行われなかったが、戦争終結に向け、徐々にそれらの強力兵器供与が始まりだすと、戦況は、ライナ共和国側有利に傾いていった。


 プロキア中央政府による、情報統制は徹底されていた。

政府批判は決して許されず、メディアも徹底管理され、正しい情報は、プロキア国民には、伝えられなかった。

 そのため、戦時下にあるサレミア半島へのバカンスに平気で出かかる国民も多数おり、その映像は情報統制の恐ろしさを改めて世界中の人々に示す事にもなった。


 しかしである。インターネットやスマートフォンを始めとする情報発信機器の発達した現代、完璧な情報統制など、無理な話ではあった。スマートフォンで撮られた動画等は、すぐさま投稿され、全世界に拡散されていく。

  ネット等に疎い年配者には、長年のプロパガンダの成果もあり、中央政府支持者が圧倒的に多いが、若い世代は、自国の非を認め、戦争に反対し、ある者は、国外脱出し、ある者は、戦争終結に向け、反政府組織を立ち上げ、ゲリラ活動による、プロキア国内重要施設の破壊や、ライナ共和国への情報提供を精力的に行うようになる。


 そうなると、プロキアは、対ライナのみならず、国内の暴動鎮圧にも、力を注がなけらばならなくなり、益々、窮地に追い込まれていく。


 戦争の大勢が見えだしてくると、今まで、プロキアに協力的であった国々も、態度を一変させてきた。

 特に、エネルギーや、食料を盾に取られ、表立って抵抗できなかった国々は、一気に、ライナ側につく。

 戦後、石油施設等は、戦勝国管理となる事が予想され、態度を変えたのである。だが、この事は責められない。資源の無い小国は、どっちつかずで、国交を乗り切るしかない側面があることは、やむおえない。


 こうなると、プロキアは、四面楚歌である。


 2032年11月、最終的には、軍部のクーデターと、市民運動により、中央政府は崩壊し、多くの犠牲者を出しながらも、ライナ共和国勝利で、終戦を迎える事となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る