夜這い

 

第1話

 僕は母の寝室に入った。ベッドの横のテーブルの灰皿の上には、まだ燃えているタバコがあった。


「母さん。危ないよ」


 しかし、母は何も答えない。完全に眠っているらしい。タバコの火を消すと、僕は母の腹に跨った。そして首をナイフで刺した。しかし、上手く刺さらない。母はうぐっ、という呻き声を上げた。起きて抵抗されたらまずい。僕はもう一度、深く、母の首をナイフで刺した。すると、血が溢れ出た。それを見ると、僕は興奮が止まらなくなり、母の首を何回も何回も刺した。それから、友人の緑川に電話をした。


「緑川。聞いてくれ。俺、母さんを殺したんだ」


「はぁ? お前何言ってんの? 寝ぼけてんのか?」


「証拠を見せるよ」


 俺はそう言うと、母の写真を撮り緑川のLINEに送った。


「バカ! 何やってんだよ」


 その直後、電話が切れた。緑川は警察に電話をかけるために電話を切ったらしい。


「……こうするしかなかったんだ」


 僕はそう呟くと、自分の腕に残った根性焼きの跡をやさしく撫でた。


 

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夜這い   @hanashiro_himeka

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