また十月三十一日

 桜田は結局、あの日死んだ。幽霊の集まる日に幽霊になるなんて、本当に馬鹿な奴だよ。一周忌に桜田の家に行った。仏壇には、似通った二人の遺影と南瓜の煮物が並んでいた。



 桜田、あんたは案外馬鹿じゃなかったかもね。禁止法、撤廃されたよ。桜田すごいよ。でも死ぬことはなかったんじゃない? 私たちまで自殺者遺族になっちゃったじゃん、血縁ではないけどさ。

 桜田が笑うときって大体嫌なことが起こるときだったんだけど、それって私にとって嫌なことじゃなくて桜田が嫌だったことだったんだね。だったら言ってよ、って思ったけど禁止法で言えなかったんだっけね。死にたくなかったんなら死なないでよ。

 そういえば、小さい頃桜田の夢は「ヒーローになる」だったけど、あんたはかっこよく死んだらヒーローになれるとでも思ってたの? しかもあんたの死に際、かっこよくはなかったし、馬鹿だから。


 天国って、死んでまで行きたいような楽しいところなの。受験大変すぎてそっち行きたくなるよ。でもまだ行かない。行ったらあんたにからかわれそうだから。「弱ぇな、菊池」って。それだけは絶対にやだ。

 まあいいや、せいぜい元気でいなよ。死んでも「どうせ」なんて言うな。もう死んでるけど。私も言わないし、まだそっちには呼ばれても行かないから。



 じゃあね、桜田。

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夢の生贄 藤原晴日 @high_wisteria

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