第40話 違う。

―――違う。


 世界がガラスのように割れる。


「まだ俺の勝負は終わっていない!!」


 約束、それを果たさなければならない。


 あの冷酷な眼差しを光に変えなければならない。


「良くも毛利の奇策を通したものだ!! だが、俺は終わっていない!!」


 神崎の腕に黄金の文字が浮かび上がる。


「こ、これは………」


 その数式を彼は理解することができない。


 しかし、彼はそれを僅かに見て知っている。


「俺は負けない!! 負けるはずがない!! これで終わりだ!!」


 指を鳴らそうとする。


 なればすべてが終わる。


 しかし、終わらない。


「なぜだ!! なぜ終わらない!! 俺の勝ちでなぜ終わらない!!」


 簡単なことである。


 これは神崎の計略でしかない。


「あぁ、そうかい。そういうことかい………ふふふ、ふっふっふ………」


 すべてを悟ると神が本性を現す。


「いいだろう!! どんなこともできる俺のバスケを見せてやるよ!!」


 2人の最終決戦が始まろうとしている。


 神がドライブすれば神崎が一度それを止める。


 止めると同時に2人が次の動作をする。


 ボールを持った者は変化をボールを追う者はボールに手を伸ばす。


 しかし、そこにボールは存在しない。


 人間には限界がある。


 神はそれをよく知っている。


 人間が人でない動きをすれば、骨が破壊され、手術を余儀なくされる。


 神は人間ができない動きを可能とする。


 膝を横に曲げる負荷を掛ければ、人は次第に歩けなくなる。


 神がおかしな方向に膝を曲げるも即座に修正させることができるのだろうか、神が神崎の無限を超える。


「―――なんて動きだ!!?」


 なんとかついていくも限界を多少超えただけで脚が動かなくなる。


「はっはっは、脆い脆い!!」


―――ダン!!


 神崎が神からボールを弾き飛ばす。


「き、貴様!!?」


 しかし、神崎の無限は究極を極めた。


 己の腕を弾き飛ばして、異常な動きを目の当たりにする。


「自分の腕を弾いてボールを奪い取るだと!!? 壊れるつもりか!!」


 神崎は言う。


「本気で来いよ。全知と経験、応用、可能性は無限だろ?」


 全知だが、◯◯◯◯◯◯の神崎のことは予測はできない。


 神が人を超えれば、神崎が機転を効かせて対処してくる。


 神が神崎を抜けば、神崎は先に倒れ込んで脚の下から踏まれないようにしてボールをカットしてくる。


 神がボールを弾こうとすれば、神崎はそれを見切って、神の股をくぐらせてドリブルする。


 背中を合わせれば、脇腹に腕を通し、ボールをしたから攫い、くるくると飛んでダンクシュート。


 ステップを踏めばボールの弾き方が半減してボールを攫う。


 手を伸ばせば、体は遠くに存在し、一気に後退したと思えば、神が究極の◯◯◯ヂシュート、しかし、神崎はしゃがみ込んでいて、大ジャンプ、神はことごとく上を行かれてしまう。


「なぜだ!! なぜこの俺が勝てない!! 俺のバスケは人知を超えているはず!!? なぜだ!!」


 神崎が背を向けて振り返れば、手にはボールが存在していない。


 気付いたときにはボールは回転しており、低空でボールをコントロールする。


 更に、消えたかと思えば仰向けになって信じられない態勢でボールを肩よりも下の位置でコントロール、そのままバク転すればアクロバティックにシュートを決める。


 神は神崎のテクニックに感銘を受ける。


「す、すごい………」


 ボールを回せば神の腕と背中を駆け巡り、その先に神崎がジャンプ、空中でボールを受け取ればダンクシュート、神もスタイルを変える。


 芸術的で攻撃に特化したスタイルに、神崎がやったように神も先に伏せて脚の下から手を通してボールを弾く。


 スピンさせて己の有利な場所、つまり、神崎の進行方向の逆、後方にボールを転がした。


 神崎には、慣性の法則が働いている。


「貰った~~~!!」


 しかし、神崎も膝をカクンと折り、地面に丸まって身を預ければ反動を利用して後方に飛んだ。


 神も慣性の法則は働いている。


 つまり、ほぼ同じタイミングで2人は後方に飛んだのである。


 神崎が若干不利ではあるが、持ち直すことができた。


 これには神も驚く、そして、神が勢い余って神崎の予期せぬ動きに肩をぶつけてしまう。


「まずい、完全に抜いたと思って止まれなかった!!?」


 神崎は額から血を流す。


 片目に血が入るも皮膚を少し持ってかれた程度、視界が奪われる中でシュートを決める。


「これくらい、どうということはない………全知なら俺の過去位は知っているだろ?」


 そう、その壮絶な過去、どんなに体を壊しても諦めないで戦う戦士たち、ただの馬鹿な詰まらない存在だと思っていた。


 しかし、こんなにも熱くさせるものだと知らなかった。


「俺達の『闘志』は熱く、重いことを知れ!!」


 全知故に知っているはずだった。


 詰まらないものではないということを知っているはずだった。


 すべてが思いのまま、そして、楽しいこともつまらないことも、知っているはずだ。


 人というものが愚かで詰まらない存在、しかし、彼らは猿のような知能でしかない。


 性欲などに支配され、税金に甘え、生まれたときと同じようにわがままな生ゴミ、肥えるだけのクズ、しかし、神崎は違う。


 知能が高い世界を知っているだけではない。


 ものにしている。


 そして、大局を見ている。


 経済の動きなら猿でも見れる。


 しかし、経済の動きも見えない無能よりはマシ、毛利のような至高の世界は見れないが、技量に置いては毛利以上だ。


「しかし、なぜ、2人から無限の残像が消えたのですか?」


 不意に恭永が毛利へと尋ねる。


 毛利は憶測で答えた。


「恐らく、見えないからこそ無限なのでしょう。今までは残像を見せていた。それが彼らの表現でした。」


 それを聞いて、恭永が疑問に思う。


「では、見せないほうが強いということですか?」


 それを聞いた毛利は笑って答える。


「はっはっは、見せても見せなくても無限は無限でしょう………」


 毛利が残像を一つ見せれば、神も残像を見せる。


 一つ、二つ、三つと、最早、どれが神崎と神なのかわからないくらいになってしまった。


 不意に、一つに戻る。


 また無限の残像、最早、訳が分からない。


「そして、敵の残像を全て潰す、ということなのでしょうかね? 私にはわかりかねます。おっと、わかりにくい表現でしたね。無能のような言葉を使ってしまった。無能が偉くなると言葉もわかりにくくなる。つまり、私にはわかりません。」


 神崎が残像を潰す。


 そんな動きができるのだろうか?


 当たり前だ。


 すでに上記に記載した通り、残像を活かすも殺すも無限の手段がある。


 ボールの動きも回転が加わり、普通の動きをしていない。


 前にドリブルしたと思えば、ボールは無回転でよろよろと予測不可能に動く、互いにボールの動きが読めない。


 これも無限を潰していることになる。


 予測不可能の動きに〇〇な動き、〇〇、〇〇、無限を止める方法はいくらでも存在する。


 しかし、盗作しているバカが居るなら、空白の中身の文章は陳腐なものになる。


 股に腕を通すだとか、地面に身を預けるだとか、それ以外にも






 なことは描けない。私を盗作しているのなら、先に書いてもらいたいところだろう。


 きっと君の描く世界観はしょぼいものだろう。


 神が◯◯◯ヂシュートを再び繰り出す。


 今度は止めようがない。


 先程は先にしゃがみ込んでいた。


 神崎にジャンプする術がない。


 このシュートはモーション前に放たれている。神崎が打つ前にモーションに入ってても届かない。


 先程は自分から距離を取って誘っていた。


 そのために、シュートモーション前の前から飛ぶことができていた。


「はっはっは!! これで俺の1点勝ち!! 大逆転だ!! もうシュートは止まれないぞ!! 俺の勝ちだ!!」


 しかし、神崎はそのシュートを止めていた。


 どうやって止めたかというと、



これにより、究極のシュート止めたということである。


「今のは俺が尊敬する先輩の技、その応用だ………この止め方しかなかったがな………」


 そう、この止め方だけは一つしかない。


「うまく使ったな………完敗だ。」


 勝ちを確証したが、機転を効かせた。


 止める方法などないのに止めた。


 人知を超えただけでは勝てなかった。


 神崎のバスケは人知だけでなく、バスケを超えていたのである。


 それを見ていた毛利と恭永が揃っていう。


「あれは、『上杉』の技だ!!」

「今のは、『氷川主将』の技ですね………」


 2人の意見が割れた。


 恭永が言う。


「毛利なら上杉というと思ったんだがな?」


 その言葉に、毛利は笑っていう。


「私が負けたのは氷川主将だと思っていますので………」

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