第13話 『  』を超えた技術と『超   眼』、力を捨てる神崎

 この世界は『  』であり、『   』でもある。


 かつて、それを実行した男が居た。


 それが毛利である。


 しかし、毛利は神崎と違って仕掛けがなければそれができない。


 毛利が次元のレジェンズと呼ばれた仕組みがある。


「なんということだ………私は空を、いえ、『 』を落とすために、『光』と『闇』を用意した。その2つを用いずに技術だけで神崎主将は再現したというのか!!?」


 毛利の言う『光』と『闇』、光は最も身近にある『 』、そして、闇も最も身近に存在する『 』を用いた。


 神崎はそれらを技術力でカバーした。


「俺のインフィニティが『光』と『闇』を『無限』にさせた。それだけだ………」


 全てを無限に変える。


 その答えが今の神崎なのだろうか?


 これを見せられたロバートは体験談を言う。


「お、俺は『     』の目を持った人間だ………その俺が、空で自分を………自分を『見失った』とでも言うのか!!?」


 ロバートは『     』の目を持ったものであり、動体視力も他のレジェンズを超える異常値だが、神崎の闇がそれを奪ったのだ。


「ふん、毛利なら俺の技量も『知力』で対抗してくるぞ………」


 ロバートがボールを持てば絶叫が挙がる。


「うわぁぁああぁあぁあ!! やめてくれ~~~!! 光が~~!! 光が~~~!!」


 ロバートの苦痛、闇の次は光が彼の目を襲う。


 ロバートは完全に神崎の『無限』に封じ込められてしまった。


 これを見せつけられた斎賀高校の味方もドン引きする。


「うぅッ!!? や、闇が!! 何も、何も見えない~~~!!!」


 神崎は藻掻き苦しむロバートからボールを奪い取ると歩いているだけで敵は全員世界を見失った。


 闇では、周囲が見えないが、光でも周囲は見えない。


 神崎がシュートを一方的に決めれば、100点差がいつの間にか10点差になっていた。


「はッ!!? 今、何点差だ!!?」


 神崎が我に返ると残り3分で10点差であった。


「え!!? 10点差!!?」


 神崎が正気に戻ったことで今までの無限は低下した。


「神崎!! シュートだ!!」


 敵が全員眼を眩ませている。


 周囲の状況に戸惑いながらも神崎は3ptシュートを決める。


 残り、7点差、しかし、神崎の『無限』には、もう期待できない。


「よっしゃ!! 後は、斎賀高校の意地を見せるだけだぜ!!」


 だが、勝敗は決した。


 毛利が『光』と『闇』を用意する。


 制空権高校は再び、光と闇が襲いかかる。


「そ、それが、どうしたぁぁぁああぁああ!!!!」


 ロバートの眼が更に進化し、それを克服した。


 『   眼』が存在するが、そのレベルを超えている。


「どうした!! まるで、『この世』が『止まって見える』ぞ!!」


 その世界には、どんなに早く動こうともロバートの眼にはスローモーションにしか見えない。


 そう、ロバートは超えたかもしれない。


 あの上杉 芯や上杉 海を………


「どうしたんだ神崎!! 貴様の無限の残像が俺には見えない!! 実態の貴様ですらも『止まって見える』ぞ!!」


 先程まではロバートが無防備だったが、状況は一変、今度は神崎が無防備になってしまった。


「な、なに!!? 俺の『インフィニティ・シャッフル』を完全に見切っただと!!?」


 ロバートが上ではなく地上で正々堂々と無限に立ち向かい、完全にそれを阻止したのである。


「はっはっは、さっきの光や闇も超スローモーションに見えるぞ!!」


 これを見せられた毛利はある仮説が脳裏に浮かぶ。


(今までレジェンズと思っていたロバートの姿は平常であり、己の限界を超えた姿が今なのでは?)


 詰まり、ロバートにとってレジェンズと呼ばれた選手たちが普通の人間であり、ロバートにとってのレジェンズ化は毛利たちにとって、『超レジェンズ』ということになる。


「まさか、ここに来て、『軌跡のレジェンズ』や『浅井 勇気』と同じような『超人』が現れるとは………!!」


 これを見ていた『軌跡のレジェンズ』が呟く。


「フン、俺たちに勝ちを譲っていれば、『上杉 芯』を加えた敦煌(とんこう)高校なら俺がいるから勝てただろう。」


 神崎が簡単に向かれてしまえば、点差は9点、11点、13点と離れていく。


 神崎は訳も分からず『インフィニティ・シャッフル』で対抗するが、まるで無力、神崎が敗北を悟った時、『上杉 海』が思わず、助言した。


「神崎!! 『無限』に囚われるな!!」


 神崎は無限を極めようとしていた。


 それは無限の戦力であり、最強に相応しい必殺技と言えよう。


 しかし、それが通用しないロバートに出会ってしまった。


 最強の『インフィニティ・シャッフル』を手に入れて、それを極めるだけで勝てると思っていた。


 そして、その強力すぎる技は、いつしか、神崎を『無限の牢獄』に閉じ込めていた。


「だったら、これでどうだ!!」


 神崎は『覚醒』していない。


 自分で『覚醒』を『解除』した。


 それは、無限のレジェンズから最強のレジェンズに退化し、普通のバスケットプレイヤーに戻ったということになる。


 詰まり、『力』を捨てたのだ。


「な、なにをする気だ!!?」


 神崎はボールを天高く放り投げた。


「はっはっは!! 天空では俺が有利だぞ!! 血迷ったのか!!」


 血迷ったのは、神崎の方ではない。


 ロバートの方だった。


「そう、お前はまんまと俺の『罠』にかかったんだよ!!」


 神崎は己の無限を捨てて、最後には『人』となり、勝負を挑んだ。


 ロバートはボールを空中で取りに行く時、ロバートもコートの端から端には届かない。


 神崎が敵のゴール下で待ち構えている。


「な、なに!!?」


 ボールを持って着地する時は行動制限されてしまう。


 着地という限られた行動では、神崎の動きが止まっていても無限の技術に敗れてしまう。


 パスを出そうとしても斎賀高校には、毛利がいる。


 流石の毛利も本気で迎え撃つ気だ。


「貰ってくぜ!!」


 ロバートは神崎のスローモーション攻撃から逃れられない。


 ボールを空中で取られてシュートを決められてしまった。


 13点差が11点差となってしまった。


「まだだ!! まだ終わってねぇ!!」


 それに対しては毛利が答えた。


「もう終わりですよ。」


 ロバートがボールを持てば、スローインする時、ロバート以外の選手が光と闇に藻掻き苦しんでいた。


「そう、あなたの眼は進化しました。しかし、私の『計略』も『完成』したのです。」


 全てを悟ったロバートは絶望してボールを手元から落とした。


 それを持てば神崎がボールをロバートに渡した。


「え?」


 神崎はロバートに最後のチャンスを与える。


「俺とお前の決着をつけようぜ………正々堂々と………!!」


 この言葉にロバートは全力で応える。


「『最強』は俺だ~~~!!!」


 その雄叫びはロバートが神崎を敵と認めた証であり、最後の攻撃を意味する。


 無限や力を捨てた神崎は人としてロバートと戦う。


「馬鹿め!! 俺にはお前の動きが止まって見える!! どうやって勝つ気でいるんだ!!」


 ロバートに勝てる方法なら一つだけ存在する。


 すべてが止まった空間でも、スピードが互角なら、かつて、『上杉 芯』が見せてくれた。


 その止め方で十分だった。


 それを見た観客一同は一言こう言う。


「き、『         』だ………」


 ロバートは完敗を認めてしまう。


「勝者!! 斎賀高校!!」


 最終的には、斎賀高校が2点リードして勝利を収めた。


 斎賀高校はクリスタルトロフィーとロバートを獲得した。


 次の対戦相手が斎賀高校の勇姿を見ていた。


「素晴らしい。神崎は素晴らしい技量の持ち主だ。僕の『  』で彼を落としてやりたいね。」


 だが、しかし、一人の男はため息をついている。


「『上杉 芯』は出ないのか………」


 その溜め息をする方向に一同が眼を向けると暗黒を口にした男も驚いて震え声を挙げる。


「お、お前は!!?」


 そう、その男こそ、神崎が超えなければならない男、『神技のレジェンズ』である。

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