第11話 神は『天空のレジェンズ』のみを愛す。そして、愛は海よりも深し………

 神崎の無限の翼は


 しかし、ロバートには目がある。






「馬鹿な!!? この俺の翼で届かない領域があるとは………!!?」


 人は空と飛ぶことができない。


 そして、空で生活もできない。


 それはロバートとて同じことだろう。


 しかし、ロバートは空で生活できる目も持っている。


 赤ん坊の時にロバートは阿呆な父親の悪趣味に付き合わされた。


 スカイダイビングだ。


 赤ん坊が気圧の変化に苦しみ、天空から地上にダイブする。


 普通の赤ん坊なら死んでもおかしくない。


 それに対して父親は契約書にサインする。


 ロバートは銃弾を見て、空を見た。


 そんな馬鹿げた環境を克服した。


 ロバートの目は更に進化をしてしまった。


「普通の人間なら天をあれだけさ迷うと                 」


 毛利が説明する。


 普通の人間では不可能なことをロバートは行っている。


「詰まり、俺達ではあそこに届かないということなのか?」


 恭永が確認を取れば毛利が頷く。


「人が天に届かないように、あそこでは無限も知恵も届かない世界、『絶対世界』に彼はいるのです。」


 天空を舞うロバートと天を舞えば         神崎、二人の差は明白だ。


「はっはっはっはっはッ!! 見えるぞ!! この空の空間で見える貴様の残像、皆羽を失い墜ちていく!! この引力の世界では進化した人間でなければ踏み入ることはできない!! 詰まり、俺だけの世界なのだ!!」


 神崎の残像は見えるが、全てが墜落していく。


 引力などを利用し、決して己を重力のレジェンズなどと言わない。


 この世界に入り込める人間など、ロバート以外存在はしない。


 人では、その空に届くことは許されない。


 神の領域がある。


 宇宙よりも低いが、そこにたどり着ける生物は僅かだ。


「俺の無限の翼でも届かない空間が存在するとでも言うのか!!?」


 神崎がどれだけ羽を伸ばしたとしても届かない空間、しかし、上杉なら届くだろう。


 或いは、引き寄せることができるだろう。


「いや、まだ手はある!!」


 ならば、その領域に飛ばせなければいいだけのこと、神崎はロバートを無限の空間に封じ込めた。


「なるほど、俺を閉じ込めたか、だが、俺の肉眼は銃弾をも捉える。そして、その空間は地上でも存在する!!」


 ロバートが一度動けば、神崎は自分を見失い、その場に転げ込んでしまう。


「な、なんだ!!? 何が起きたんだ!!?」


 人間の眼を持つものでは、ロバートの動きを追いかけるだけで己を見失ってしまう。


 眼の進化をして初めて戦うことが許される。


 それが、ロバートという存在なのだ。


「         」


 毛利がロバートの眼の秘密に気付く。


 それを聞いたロバートは少し驚いた様子を見せる。


「それに気付いたか、流石は毛利だな………」


 毛利は続ける。


「我々人間の視覚というものは、光を認識し、色を認識する。しかし、我々は空を飛ぶ事ができない。空を飛ぶ生物の視覚には、『         』というものが存在します。 それを持つことにより、とある生物は空中で『     』のです。」


 それを聞いた神崎が毛利に尋ねる。


「なら、俺はどうすればいいんだ!!」


 この120点という圧倒的点差を切り崩すには、ロバートの天空を攻略しなければ不可能だ。


 時間はない。


 焦った恭永が毛利を急かす。


「おい、毛利!! 早くしないと本当に負けるぞ!!」


 制空権高校は上からパスを通してくる。


 それを止めるとなると、神崎一人では荷が重すぎる。


「不可能です。我々には資格がない。ロバートと同じく『          』を持っていなければロバートを捉えることもできません。」


 絶望する毛利に神崎が笑っていう。


「それはお前が俺と違って『無限の翼』を持っていないからだな。」


 毛利はそれを聞いて戸惑う。


 確かに、毛利にとって空の世界は思考の外だろう。


 戦力にもならない。


 だが、神崎は毛利と立場が違う。


 ロバートの空に届くことができる。


 神崎ならではの答えがあるというものだ。


「つまり、こういうことだ!!」


 神崎は『       』とロバートの世界へと飛び込んでいく。


 そう、一瞬にしてボールを奪い取ったのである。


 無限の中に潜む神崎、ロバートがそれを認識したのは、神崎がシュートを決めてからだった。


「ば、馬鹿な!!?」


 驚くロバートに神崎が言う。


「最強と言われていた時、毛利に俺は智謀で完膚無きにまで叩きのめされた。最強と言われた頃の俺はもう居ない。今は無限のレジェンズ、知恵を使うようになったのさ。時間がないんだ。さっさと終わらせようぜ。」


 神崎が再び『        』を行えば、ロバートはほくそ笑む。


「なるほど、そういうことか………」


 ロバートが理解すれば、右に、左にステップする。


 その感覚が次第に早くなれば、音が消えた。


 そう、神崎がしたことは単純なことだ。


 そんなものは即座に対策される。


 神崎は再びロバートを見失った。


 だが、それを見ていた毛利があるものを取り出す。


「またこれが役に立つとは………使ってください!!」


 毛利が神崎にそれを渡すと神崎がそれを受け取って早速使用する。


「そこにいたのか!!」


 神崎に『  』されたロバートは逃げ場がない。


「何をしたか知らんが、この俺を『    』事ができるのは褒めてやろう。だが、俺は今までこの世界に一人しか居なかった。退屈していたんだ!! 天界へようこそ、俺の究極奥義を見たのは貴様が最初で最後となるだろう。『   』」


 当然、ただ目を持っているだけで終わるのは阿呆だ。


 天から与えられた才能を活かせない者は権力は武力、群れを頼る。


 だが、ロバートは違う。


 己の才能を活かした必殺技を用意していた。


 例えるなら翼を持った者達が空から皆落とされて行く。


 そして、空はロバートだけを受け入れる。


 天空にはロバート一人しか存在を許されない。


「お前は届かない。この俺の目に小細工も効かん!!」


 神崎は天から地へと落ちていく。


 完全に己を『    』故に、頭から落ちて気絶してしまう。


「神崎!!!」


 恭永が駆けつけるが、後頭部から落ちてしまった。


「まずい、下手をしたら後遺症が残るかもしれません!! 早く医者を!!」


 毛利が焦ると一人の男がそれを否定した。


「神崎は大丈夫だ!!」


 その声のする方向を向くと一同が目を疑う。


「毛利、俺を信じろ………神崎は俺の『流水』によって守られた。少し眠っているだけだ。」


 そう、その男のことを斎賀高校はよく覚えている。


「う、嘘だろ………か、海先輩………!!?」


 そう、上杉 芯の兄である上杉 海が海を超えて駆けつけてきたのだ。


「母親に追い出されてしまってね。それに、あの神崎を超えるような選手がいることに驚いているよ。世界は広いみたいだね………」


 海は芯と違い、海よりも深い愛を持つ者、母を愛し、弟を愛し、チームを愛する。


「ここからは俺一人で十二分だ………」


 ロバートが海を見て驚愕する。


「上杉………海………だと!!?」


 流水を極めし者が手を広げると真空を作り出し、ボールを引き寄せる。


「俺は別に、空で戦ってもいいけどね………」


 ボールを手を広げるだけで奪い取る海を見て、ロバートは誠に遺憾なご様子だ。


「ふざけた男だ………ならば、お言葉に甘えて、天空で勝負してもらおう。」


 毛利は海の登場にホッとしている様子だ。


 そう、上杉無しの斎賀高校にロバートを倒すすべはないと言っても過言ではなかったからだ。


(強い………やはり、この男は別格だ………)


 ロバートは覚悟を決めなければならない。


「ま、待てよ………」


 神崎が意識を取り戻すが朦朧としている。


「俺のインフィニティ・シャッフルはまだ負けてない………あんたはベンチにいろよ………主将命令だ………」


 神崎は正気ではないようだ。

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