第8話 覚醒と覚醒
神崎は斎賀高校戦の時に無限手前まで覚醒していた。
今では、完全覚醒し、最強から無限のレジェンズへと昇華した。
「貴様を倒す!!」
愚直な特攻をする神崎、しかし、その決死の特攻はロバートを驚かせた。
「敦煌高校戦で見せた神崎の本気と言うやつか………」
ロバートは今まで神崎の無限を見てきた。
その無限には、斎賀高校が寝返って神崎を止めに手伝ってくれた。
そして、信じられないことに、毛利が神崎を誘導していた。
だが、本領発揮の神崎は敦煌高校の軌跡のレジェンズですら無限の幻影を追いかけていた。
「だが、空中ではどうかな?」
ロバートが天を翔ければ、神崎も上空に居た。
「空中は有限!! 貴様の残像も負う必要はない!!」
しかし、神崎はそれを予測していた。
何度も何度もそれに絶望させられた。
だから、対策する。
「斎賀高校を舐めるな!!」
ロバートは神崎の瞳から底しれぬ深淵を見る。
(な、なんだ………この神崎の目は………!!?)
ロバートは神崎という選手を評価はするが、上杉 芯には程遠く、神崎など、取るに足らない人物だと思っている。
実際、上杉 芯と神崎が戦えば、才能は神崎が上なのは事実だ。
それがそのまま勝敗に影響を与えるかどうかはおいておいて、ロバートが思っているのはこういうことだ。
(落ち着け、この男はただの『才能』だけの男だ………)
そう、『才能』だけの男、艱難辛苦も知らない才能が石ころのように転がっているだけ、それだけの存在と思っている。
才能はたくさん転がっている。
己を天才だと過信し、疑わないゴミ共には才能を発揮せず、一生を終えるだろう。
おまけに、天才だと過信している人間は自分の才能を用いていないのに天才なことをしたと思う。
また、盗作ばかりしてるゴミ人間は本質が無能であり、私の小説を読んで、先を予測することもできない。
ロバートよりも高く跳ぶために二人で足を持ち上げて跳躍する。
その発想にも無能は至らないし、それを相手もしてきたら頭が真っ白になるだけだろう。
結局、己を過信しているから、他人というものが見えてこない。
ロバートが言う。
「俺は真実を見据えるために己を疑う。お前は上杉に勝てると過信しているのだろう? そんな奴に俺が超えられると思うか?」
ロバートもコンビプレイで更に上を行く。
しかし、神崎は届かない。
「ロバートの言う通りだ!! 神崎、もう毛利を頼れよ!!」
己が最強だとか天才だとか過信してるゴミ人間でもロバートの高さを前にすれば絶望するだろうか?
過信している人間の気持ちなどわかりたくもなければ知りたくもない。
一生自分が天才だと思い込んで他人を巻き込まないでほしいものだ。
神崎は答える。
「俺は、自分を最強だとか天才だとか思ったことはない。周囲の無能共がそう過信しているだけに過ぎない!!」
ロバートが得点を決めると神崎はそれを見ているだけしかできない。
「決まった~~!! 斎賀高校成すすべがありません!! これが世界のバスケット、ロバートのバスケだ!!」
実況と解説も務めを果たすだけの作業となる。
解説は言い訳じみたことばかりいう。
「やはり、上でのミスマッチが崩れない以上、斎賀高校に勝ち目はありませんが、実力はちゃんとありました。」
しかし、ゲームの流れが変わる。
あのロバートがシュートを外したのだ。
「おっと、これは珍しい!! あのロバートがシュートを外しました!! プレッシャーにでもやられたか?」
無能なのでプレッシャーと言う言葉だけで片付け始める。
解説と実況には何もわからない。
解説は肩書だけの無能、ロバートがプレッシャーでシュートを落とすほど、甘い選手ではない。
ロバート自身も気づいていなければ、神崎も気付いていない。
速く気付いた方に勝敗は動く。
「ドンマイ!! 次からは大丈夫だぜ!!」
制空権高校のロバートの失敗がたまたま起きたものだと思っている。
しかし、ロバートはこう思っていた。
(いや、今のは俺のミスではない………分からないが、俺よりも更に高い位置に、神崎がいたような気がする………)
そう、ロバートがシュートを打つ時、自分よりも上を飛ぶ、神崎の『残像』が見えたのだ。
無論、それは残像であるが、残像ではない。
神崎は無限のレジェンズであり、地上では神崎のドリブルは無限の幻影を生み出す。
それらはすべてが現実に起こることを意味する。
従って、ロバートが見えた神崎の残像は残像であって『真実』と言うことになる。
(俺よりも上に残像が見えたということは、神崎は俺よりも高く跳ぶ方法を知っているということなのか!!?)
ロバートは信じられなかった。
しかし、神崎が自分より真上に残像を作ったということが現に起こっている。
ロバートは神崎の目を再び見た。
神崎の瞳から闘志は消えていない。
得点は30点差に広げたが、両者譲らず、得点を奪い合う。
圧倒的有利なはずの制空権高校だったが、徐々に斎賀高校が追いついてきた。
気が付けば16点差にまで迫っていた。
「こ、これは一体、何が起こってるのでしょうか!!? 有利と思われていたロバートがここに来て失速しています!! 一体なぜだ!!?」
実況が叫ぶと無能な解説は一言で片付けてしまう。
「ロバート選手は以外にも『プレッシャー』に弱かったのでしょうか? しかし、現状有利は制空権高校に変わりがありません。」
とりあえず、『プレッシャー』という言葉で片付ける。
そんなもので片付けてはいけない。
そう、神崎は無限のレジェンズである。
ロバートの上を行く残像が存在するのなら、それが今、現実に起こる。
『ダーン!!!』
神崎が12mと2.1mのロバートを飛び越えて上からボールを打ち落とした。
「ば、馬鹿な!!?」
海外の実況も何が起こったのかわかっていない様子、というより、信じられない様子だ。
神崎がロバートを完全に止めたといっても過言ではないだろう。
そして、神崎が攻めに回った時、ロバートは見てしまう。
神崎の無限は『地上』だけのはず、しかし、今では『有限』の世界である空で、人間が『無限』の『残像』を映し出す。
「な、なんだこれは!!?」
今度はコンビプレイでもないために、セットアップしている暇もなければ、神崎の残像があちこちに現れるため、どこにロバートを放り投げれば良いかも見えてこない。
『ドゴンッ!!!?』
音が聞こえたときには、得点を奪われていた。
「嘘だろ………!!?」
ロバートが振り返って真実を見極めようとすると、そこには得点を決めていた神崎の姿が存在した。
ロバートは初めて経験した。
自分が上から取られたという経験、先程はコンビプレイで上を取られたが、今回とでは意味合いが違う。
一度目はロバートの方が精神的にも技量的にも余裕があった。
しかし、今回は全くの予想外、空で主導権を完全に握られてしまったからだ。
小さいやつに上を取られる。
そんな経験はまずないだろう。
どんな小説を読んでも、小さいやつのほうがジャンプ力が高く、それで対抗するという無能作品ばかりだ。
或いは、ご都合能力、そう、人間は筋肉を捨てて脳の進化を選んだ。
その割には、盗作だとか、くだらんことに甘えたゴミどもが多い。
仮に、そういう進化をしないで脳を正しい方向に進化させた人間がいたとしよう。
進化を間違えなかった人間は背が高くて、ジャンプ力もある人間に対して上からボールを奪いだろう。
しかし、進化を間違えた欠陥品の脳みそでは、『不可能だ』と言って諦めるだろう。
だが、それが現実に起きてしまった。
ロバートにとって、これほど屈辱的なことはないだろう。
究極技など斎賀高校に必要ないと考えていた。
その認識を改めなければならない。
「くそ!! バッシュさえ………このバッシュさえ万全だったら!!」
ロバートは屈辱に対して全力で戦えないことを嘆いた。
このままでは勝てない。
そう思ったのだろう。
「不正行為はいけませんよね………ロバートさん………」
その声のする方向を向くと毛利が居た。
ロバートは毛利が持っている分解液を見る。
「そ、それは………!!?」
毛利がそれをロバートに渡すとロバートは分解液でバッシュの穴を塞いでいた瞬間接着剤を溶解する。
それは、ロバートの決心を固めた。
「毛利、敵ながらに感謝する。だが、俺も本気で斎賀高校と戦いたいと願っていた………全力で応えよう………」
ロバートが天を舞うと空中で移動してしまう。
無限の残像は空中で移動ができず、ただただ下に落ちていくだけ、これで互いの切り札はすべて切られた。
神崎から点を奪うとロバートが静かに言う。
「勝負はここからだ………斎賀高校………」
それに対して、神崎も無限の残像で強襲する。
「貴様も俺の無限を止めることはできない………だが、最後に勝つのは斎賀高校だ!!」
得点を奪われたロバートが神崎の背中を見据える。
振り返った神崎が額を親指で示した。
そのハチマキに刻まれた上杉 芯の名前にロバートは神崎から上杉 芯の姿を見てしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます