第7話 簡単なことだ

 物理的に届かないものをどうにかしなければならない。


 届かない敵に対して勝たなければならない時、バスケの世界では、必ず負けるだろう。


 しかし、それを攻略した男が一人いた。


 彼は世間から最弱と評されたが、ベンチから指示を出すだけで優勝を果たした。


 その男の一計が過去に存在する。


 無論、それには程遠いが簡単な方法が存在する。


 その簡単な方法に届くものもいれば、それすら及ばないものもいる。


 そう、軍師というものは肩書だけではなれない。


 どれだけ、外面が立派でも生まれながらにしての才能がないやつは辿り着けない。


 そういう無能な人間が行き着く様が税金や年金、通行量などという税を取るヤクザ商売だ。


 税を取り、仕事をしているとほざくが、実際は賄賂、国が衰退し、食も技術も停滞から衰退する。


 それが無能の常だ。


「斎賀高校の試合はもう終わってるよ。やっぱ、メンバーが落ちちまったからな。勝てるはずがない。そもそも、上ががら空きだしな。敵の攻撃もパスもとめれない。そんな状況を覆すことなんて不可能なんだよ。」


 それが無能達の意見だろう。


 しかし、斎賀高校には毛利がいる。


 最後まで試合がどうなるかわからない。


「おい、毛利、そろそろ動かなくて大丈夫なのか?」


 恭永がしびれを切らしてきた様子である。


 39点差となると、焦りが出てくるのが普通というやつだろう。


 おまけに、敵の攻撃は止めることができない。


「動く? 何のことでしょうか?」


 恭永の言葉に毛利が疑問に思う。


「いやいや、待てよ!! なんで、俺が愚問をしたかのようになってるんだ!!? もう39点差だぞ!!」


 毛利は微笑んで前を向く。


「70点差ほどで動きましょうかね?」


 恭永は毛利の言葉に、とりあえず、安心した。


「ちッ、攻略法がすでにわかってるかの様子じゃねぇか!! 相変わらず、気に入らないやつだ!!」


 神崎が皮肉を言った後で少し安心する。


 だが、毛利の力を借りるつもりはない。


「恭永、毛利が高みの見物をしてるなら、俺達で試合を決めるぞ。俺を信用してくれるか?」


 神崎の言葉に恭永が驚く。


「最強と言われたお前から俺に強力を求めるとは、しかし、相手は高すぎて届かないぜ? 一体、どうするんだ?」


 神崎が恭永の首に腕を回して耳元で囁く。


 神崎と恭永がくっついたために、会場の一人の腐女子が倒れた。


 そして、一人のギャルが激怒する。


「神崎!! てめぇ!! あたしの恭永に何してんのさ!!」


 恭永も神崎の整った顔にドキドキとしてしまう。


「あ!! ちょ、早く離れろ~~~!!!」


 ゆりが神崎という男に嫉妬している。


「よし、行くぞ!!」


 神崎が恭永を選んだ理由は付き合いが長いことと、瞬足の足を持っているからだ。


 無論、瞬足の足が天に届くわけでもない。


 神崎の策は簡単だ。


 神崎が失敗したとするなら、毛利に話さなかったことだろう。


「毛利、度肝を抜かせてやるぜ!!」


 神崎の言葉に毛利は微笑んで言う。


「ほぉ、なにか名案でも? では、お手並み拝見といきましょうかね。」


 この時、毛利は期待してしまっていた。


 神崎が新・主将となり、上杉 芯に近づくのだと、柄にもなく夢を見てしまった。


 そして、最悪の結果を生むことになる。


「これが俺の答えだ!! 行くぞ!!」


 神崎と恭永のコンビプレイが炸裂する。


「な、なに!!?」


 二人のコンビプレイがロバートを止めた。


「ば、馬鹿な!!? このロバートが上からボールを奪われただと!!?」


 そう、たしかにロバートを超えて上からボールを奪い取った。


「よし、行くぞ恭永!!」


 神崎が恭永に号令を掛ける。


「お、おう!!」


 恭永はすでに走っていた。


「神崎、来い!!」


 恭永が準備を整えれば神崎を待った。


「させるか!!?」


 ロバートが止めに入る。


「残念だったな。俺達はもうお前を超えている!!」


 神崎が上空にボールを投げると恭永が神崎に向かって走り込む。


 それに何の意味があるのか、気付いているものもいるかも知れない。


 その二人のコンビプレイがロバートを超える。


 そして、恭永がロバートの上からシュートを決めた。


「さ、斎賀高校がロバートの上から得点を奪い取りました!!」


 実況の言葉に、ノーマークだった観客たちが帰ってくる。


「な、何だって!!? あの斎賀高校がロバートの上から!!?」


 皆が帰ってきたときには、斎賀高校が得点を奪い取った後であった。


 これには、ゆりが感動して無能な観客共に言う。


「お前ら今更のこのこと戻ってきたのかよ!!? 斎賀高校は………あたしの恭永は最強なんだよ!!」


 だが、これに対して、喜べないものが一人居た。


「な、なんてことを………!!?」


 そう、毛利である。


 確かに、斎賀高校はロバートを超えた。


 それに対しては喜ばしいことである。


 しかし、上杉 芯はそんな攻略法を絶対に使ったりしない。


 そう、それは、すぐに思い知らされる。


「斎賀高校の猛反撃が続く!! 点差は39点差だったが、今では12点差に縮まった!! 流石は最強の神崎!! 上を攻略された制空権高校に勝ち目はないかもしれない!!」


 実況も解説も斎賀高校の勝ちを確信した。


「斎賀高校は素晴らしいチームです。まさか、物理的に届かない上の世界でロバートの更に上をいくとは、流石は最強のレジェンズと言われた男です。『上杉 芯』では、やはり、『神崎』に『敵わなかった』でしょう。神崎こそ、我が国のエースなのです!!」


 その言葉がロバートを刺激した。


「上杉 芯の侮辱は俺が許さん!!」


 実況と解説の神崎贔屓がロバートに火を着ける。


「くだらん希望は持たないほうが良いぞ………属国日本人!!」


 そう、ロバートの必殺技は2つだけではない。


 無論、プライドを捨てたわけでもない。


「飛翔・天空脚!!」


 そう、毛利の懸念も関係なかった。


 神崎が見せてくれた跳躍は8m、しかし、ロバートの跳躍は12mだった。


 因みに、リングの高さは3m超え、そんな中で8mや12mも飛ぶ人間がいる。


 少し時間を遡ることになる。


 神崎がロバートを超えた方法、それは、これだ。


「来い!! 神崎!!」


 恭永が両手で足場を作れば、神崎が利き足を恭永の手に掛ける。


「思いっきりやれ!! 恭永!!」


 恭永が思いっきり、神崎の掛けた足を持ち上げて上空に投げ上げる。


「超えろ!! 神崎!!」


 神崎もそれに合わせて跳躍する。


「な、なに!!?」


 ロバートは驚く、自分よりも高くに飛び上がる相手にではなく、その戦術に驚いた。


「そ、その技は………!!?」


 そして、現在に至る。


 そう、驚いたのは神崎の戦術でもなんでも無い。


 ロバートも天を極めようと考えてきた男、そして、世界の舞台にいる。


「飛翔・天空脚!!」


 そう、そんな技はロバートも扱ってくる。


 そして、ロバートが驚いたのは、同じく天を極めようとしたものが現れたということだけだ。


「な、なんて高さだ!!」


 神崎は斎賀高校と戦ったときのことを思い出していた。


 上杉 芯がシャムゴッドを使った時、神崎もシャムゴッドで技を返した。


 同じシャムゴッドでも技術力の高い神崎の方が強力なシャムゴッドとなっていた。


 そして、今、神崎も同じ体験をしている。


「お、俺では………届かないのか!!?」


 二人で高く飛んでもロバートだって二人で飛べる。


 そして、同じ技でもロバートの方が優れている。


 ロバートが実況と解説に言う。


「日本人は無能が多すぎる!! お前らのような無能が何を語れる? 無能は黙って見ていろ!! 邪魔だ!!」


 ロバートが得点を決めると神崎は絶望した。


 どれだけ高く飛んでも、ロバートには届かない。


 神崎にできることは、ロバートにもできる。


 神崎は歯を食いしばって悔いる。


「くそッ!! お、俺は………俺はなんて浅はかなんだ!!」


 神崎が悔いる中でロバートが言う。


「上杉 芯に比べれば、浅はかかもしれない。それは俺もだ………俺は神崎を評価する。しかし、俺には及ばない。」


 ロバートは神崎と違って艱難辛苦を知り、乗り越えてきた。


 神崎は艱難辛苦を知らず、完璧と評された上杉 芯のシャムゴッドを侮辱した。


 完璧なシャムゴッドだった。


『ダン!!!』


 神崎がコートを強く叩く。


「俺は………斎賀高校の魂を背負っている。」


 神崎が城ヶ崎高校のハチマキを額にきつく巻き、もう一つのハチマキを取り出した。


「みんなの魂を俺が頂点に運ぶと誓ったんだ!!」


 そして、もう一つのハチマキは上杉 芯の名前が刻まれていた。


 神崎の決意は硬かった。


 ロバートが神崎の目を見て、それを感じ取る。


「神崎………貴様に上杉 芯の名を背負う資格など無い………このロバートが勝利して、上杉 芯の名を刻むハチマキ(魂)を受け継いでやる………!!」


 そう、そのハチマキには、氷川 翔の名と桜井 隼人の名も刻まれていた。


 ボールを持てば届かない距離だが、受け継がれる魂は斎賀高校に宿る。


 しかし、届かない。


 神崎は何も考えず、特攻しているだけ、届かない相手に特攻を繰り返しても何も始まらない。


「もう、無理だ………」


 実況と解説も諦めている。


「斎賀高校はおそらく………ここまででしょう………」


 諦めなければ勝てる。


 そんなことを言う人間は無能で、結局は権力や保身のための法律がなければ生きていけない無能の言葉だ。


「終わった………か………」


 そう、斎賀高校はロバートには及ばない。


 この試合には、皆が失望した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る