第4話 ムゲンでアッテ、ムゲンでは…ない!!

「さぁ、今ここに、クリスタルの世界大会、開会が宣言されました!!」


 クリスタル世界大会が開催されて、斎賀高校はとあるチームと戦うこととなる。


 そのチームはエアーサペリオリティハイスクール、長いので制空権高校とする。


「あ~~~、お前ら離れたらどうだ?」


 神崎の両隣には、尚弥と謙信がくっついている。


 綾音は神崎の長い髪を弄ってお世話している気になっている。


「それにしても、毛利、なんでそんなに怒ってるんだ?」


 恭永は毛利のことを信頼しきっている。


 故に、毛利の期限が悪いことに気が付いた。


「いえ、機嫌とかは関係ないのですが、この世界大会、私は知略を用いません。」


 恭永は驚いて言う。


「は?? 何いってんだよ!!」


 毛利が恭永を睨むと恭永は理解して口を閉じる。


「わ、悪い、大声はダメだったな。後、常に冷静でいること………それで、なんで智謀を用いないんだ? なにか理由でもあるのか?」


 恭永は毛利になにか考えがあるのだと思い、訪ねてみた。


「いえ、これは神崎の物語ですので………」


 それを聞いた恭永は疑問符を浮かべるだけだった。


「とにかく、本当にやばくなったら私も動きましょう。」


 それだけを聞いて恭永は安心した。


「さぁ、世界大会が始まって斎賀高校の試合となりました。いや~、すごかったですよね。斎賀高校の試合、何と言っても『上杉 芯』選手ですが、残念なことに、大会には出られないそうです。世界からすれば、注目選手を出場させないのは侮辱でしか無いでしょう。しかし、日本という島国は時代遅れの老害国家ですので、これからの日本に期待感が現れますよね。」


 世界の解説と実況が盛り上がっている。


「全くです。日本という国はゴミでした。しかし、税金が1%となり、世界の金持ちが移住しているとか、アメリカからも経済成長のために、日本から撤退するとか、一体どれだけの大金をアメリカに渡す約束をしたのでしょうか? 日本の思い切った減税から金の流れが日本に傾いています。日本の取引は正義だとか、良心的だとか、そのまま潰されなければ良いんですがね?」


 目まぐるしい権力争いの中で毛利と翔太の策略が注目される中、もう一人の注目選手へと話題が切り替わる。


「出ました!! 斎賀高校の新主将!! 神崎 真琴!! その名も『無限のレジェンズ』!! 決勝戦で見せてくれた無限のドリブルテクニック、インフィニティ・シャッフル!! 今大会、一番の注目選手と言ってもいいでしょう!!」


 神崎はイメチェンされてしまっていた。


 一つ縛りのワンサイドアップが崩されてロングウェーブならぬ髪のマフラーを巻いているようであった。


 口元が隠れて見事に作り上げられていた。


「……………もう好きにして………」


 呆れながらも観客に応えて髪を片手で掻き上げた。


 そのパフォーマンスには会場も静まり返った。


「う、美しい………いや、かっこいい? とにかく、素敵!!」


 静まり返っていた観客が一斉に喝采を挙げる。


「きゃーーー、神崎!! 神崎!!」


 恭永が心配して言う。


「お、おい、神崎、世界戦は金の亡者や不正で成り上がった無能が多い。詰まり、野蛮な野心家が大勢だ。そんな髪型だと危ないぜ?」


 それに対しては神崎が呆れながら答える。


「あ~~~、そうだな。髪が乱れないようにしないとな………」


 神崎ここにあるが心ここにあらずのようだ。


「か、髪が乱れないようにって………お、おいおい!!」


 制空権高校が斎賀高校を眺めて言う。


「何だあれは? 彼らはバスケの大会をファッションショーかなにかと勘違いしてるんじゃないのか? 舐められたものだな………我ら不敗の制空戦術で完全試合にしてやろう!!」


 斎賀高校の初戦が開始される。


 まずはジャンプボール、外国人の身長は高く、バネも異常だ。


「さぁ、今、試合が始まりました!! 神崎選手飛びましたが、余りにも高い!! 最初にボールを手にしたのは制空権高校、更に、ボールは取ることを確信していたかのようにして一気にパスを繋ぐ、高いボールは斎賀高校に届きません!! ゴールを決めたのは制空権高校!!」


 先取点を簡単に奪われてしまった。


 しかし、斎賀高校には神崎以外にも尚弥がいる。


「気にするな!! 無名の新人!! お前らの名を世界に刻み込んでこい!!」


 神崎が尚弥にボールを渡すと尚弥は緊張していた。


 そして、時差ボケもしていた。


「うッ!!!? おぇえええええ!!!」


 吐いてはいないが空気を吐いたようだ。


 息が詰まっている様子だ。


(な、なんだこれ………空気が合わないのか!!?)


「まずい、時差症候群の症状が出ている。尚弥、今ボールを取りに行く!! そのまま持っていろ!!」


 尚弥は神崎の魅力によって時差による酔いに気付いていなかった。


 尚弥は簡単にボールを奪われてしまう。


「未熟者め………」


 謙信がカバーに入るも身長差と滞空時間もあり、あの謙信がまるで無力だった。


「まずい、このままでは完全試合も有り得る。まずは、一本だ!!」


 開始早々4点を奪われてしまった。


「くそ!! 神崎!!」


 恭永が神崎にパスをする。


「任せろ!! インフィニティ・シャッフル!!」


 インフィニティ・シャッフルとは、完成された必殺技でもあり、手加減しても本気でやっても無限は無限、詰まり、神崎が手を抜いても神崎の技術力が相手を抜き去ってしまう。


 常時必殺状態なのだ。


「おうよ!! 神崎がボールを持つだけで無限のドリブル技術は止まらない!! 神崎を止めれる選手なんていないんだよ!!」


 恭永が自分の如く神崎を誇る。


 神崎のドリブルは芸術的だ。


 髪一つ乱れてはいない。


「だからよ~!! この恭永様が加勢してやるぜ!!」


 どれだけ手加減しても、髪を配慮しても、味方が例え敵に回ったとしても神崎を止めることはできない。


「な、なんということでしょう!! 斎賀高校の恭永選手が寝返りました!! おまけに、謙信選手に毛利選手も敵に寝返りました!! 斎賀高校は何を考えているのでしょう!!」


 人の可能性は無限というが、無限を極めた神崎に一人というレベルの人間が何万人と集まっても敵わないだろう。


 一騎当千、万夫不当、そんな言葉は神崎に似合わない。


 神崎を打ち取るなら、無限の人間を揃えなければならないだろう。


 たかだか8人の可能性など、無限の神崎には何の意味もない。


「何と言う強さでしょう!! 神崎選手には、敵の人数など意味がないということでしょうか!!?」


 英語の実況では、アンビリバボーと言っているだろう。


 信じられない。


 味方が寝返ったとか、信じられないプレイだとか、すべてを込めて言っていることだろう。


 神崎を表すならこの言葉が相応しいだろう。


「まさに最強!! まさに、天下無双!! 今、神崎が―――神崎が―――!!!」


 神崎の手を抜いて髪を気にする鮮やかなプレー、その無限のコンビネーションには、誰一人止めることができない。


「ナルホド………タシ…カニ、ムゲンだ………」


 神崎がシュートを決めようとしたその時、一人の男が神崎のボールを弾いた。


「サイガコウコウをタオスのは、オレだ………」


 神崎のシュートが止められた。


 そのことに神崎は酷く誇りを傷付けられた。


「髪をトトノエロ………ムゲンのレジェンズ………オレはホンキだぞ………」


 その男の目は殺意を持っており、優しさも持ち合わせていた。


 優しさを持ちながらどれほどの地獄を見てきたのか、無縁の神崎にはわかるはずもない。


『ゾクリ』となにかを感じ取った。


(なんだこれは!!? 俺が恐怖を感じているだと!!?)


「オ、オレは………『飛翔のレジェンズ』………オマエは無限でアッテ、ムゲンでは………ない………!!!」


 毛利が敵に寝返った時、わざと神崎と『飛翔のレジェンズ』をぶつけるように誘導していたのだった。

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