Ⅺ
グレージェンの惨劇に端を発した一連の騒動は、怪物が討ち取られたことで幕を下ろした。怪物の討伐はフィメル卿の輝かしい功績のひとつに加えられ、オスカー卿の死は、『不運にも力ある悪魔の子によって操られ、慈悲深い騎士団長の手によって斬首された』と記録された。オスカー卿の派遣、ならびに騎士昇格については、時期尚早であったという声が一部で上がったが、最終的には問題なしと判断された。オスカー卿の遺体については引き取り手がないため、聖堂の無銘墓地に埋葬される。
フィメル卿の教会に対する長年の奉仕に対し、教皇はじめ教会本部は最大限の敬意を払い、満場一致で、卿を死後、聖人に列することに同意した。
栄誉に浴しながらも、フィメル卿の心は暗かった。ついに真実を告げられぬまま、その手で息子を殺めたからだろう。
こよなき悲しみ 第五話 忌まわしきもの かねむ @kanem
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