小説勉強ノート
残機弐号
芥川龍之介「羅生門」を読む
【引用】
どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる
【コメント】
優柔不断な現代人の心理描写としては的確だけど、平安時代の人がこんな複雑な考え方をするだろうか? 昔の人はもう少し倫理観が希薄だと思う。作者の自意識過剰をそのまま昔の人の心理に押しつけてしまっている感じもする。
【引用】
下人は、頸をちぢめながら、山吹の
【コメント】
この、「人がいたにしても、どうせ死人ばかりである」というところが面白い。現代人の感覚からすると、「死体がたくさんあるから、気持ち悪くてとても楼の上では寝られない」という風になると思う。こういう描写をもっと増やしたら面白かったのだけど。
【引用】
下人は、太刀を鞘におさめて、その太刀の柄を左の手でおさえながら、冷然として、この話を聞いていた。勿論、右の手では、赤く頬に膿を持った大きな
【コメント】
たぶん国語のテストだと「なぜ下人はニキビを気にするのか」みたいな問題が出るんじゃないか。いかにも国語の先生が好みそうな描写だけど、正直、今の時代読むとちょっと陳腐な感じがする。ようするにニキビは自意識の象徴なのだろう。昔の純文学の多くは自意識を問題にしている。自意識以外になんか興味あるものないんですか? と言いたくなるくらいに。
【全体感想】
久しぶりに読んだ。描写がとても丁寧で密度があるのに村上春樹並に読みやすい文章で、やっぱりすごいと思った。
でも、小説としてはかなり古臭い印象もある。まあ、実際古いんだけど(大正4年の作品だ)。
自分の自意識を他人に投影するだけでは、作者が自分語りしているだけのように読めてしまう。楼の上で死体の髪の毛を抜いているおばあさんも、下人が優柔不断を捨てるためのただの小道具のようになってしまってるし。ようするに、「他者」がちゃんと描けてないということだ。だから、作品としてはこれ以上無いくらいきれいにまとまっているのに、なんだか物足りない印象が残る。
小説勉強ノート 残機弐号 @odmy
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