第41話 収束


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 俺はレル=アルフォードとの戦闘の後、ルイスの元へとやってきていた。彼女らもまた、地下空間で戦っていることは察していた。


 そしてその場にやってくると、満身創痍のルイスとサリナが立っていた。そこには大男が大の字になって寝転んでいる。


 一方のルイスは片膝をつき、呼吸を荒くしているが問題はなさそうだった。


「ルイス。終わったのか?」

「あ、は、はい!」


 彼女の目は黄金に光り輝いていた。溢れんばかりの魔力がその双眸に宿り、爛々と魔力の光を発している。


 これは主人公の初めの覚醒であり、ルイスは魔眼の能力に目覚めることになる。どうやら、俺が知っているストーリーの流れとは異なるが、そこは同じようだな。


「あなたも終わったの?」


 サリナが俺に声をかけてくる。


「あぁ」

「……殺したの?」


 神妙な面持ちでサリナは尋ねてくるが、俺はそれを否定する。


「いや。ただ彼は長い眠りについた」

「……? それって、死んだっていう比喩表現じゃないの?」

「文字通りの意味さ。彼を司法で裁くのは難しい。だからこそ、精神干渉系魔法で眠らせた。いつ起きるかは、不明だ」

「そっか。まぁ、それならいいわ」


 サリナは意外とあっさりとしていた。彼女としてもレル=アルフォードに思い入れなどは全くなかったようだ。


「ルイス。立てるか?」

「は……はい」


 俺はルイスに手を差し伸べて、彼女の体を支える。


「無理をさせてしまったな」

「いえ……! その、だってこれはやるべきことだったと思います。僕は僕の意志で戦ったんですから、大丈夫です」

「そうか」

 

 ルイスもまた自分なりに考えているようだな。さて、後の処理は任せて俺たちはこの現場から離れていくことにするか。


 そうして王国に蔓延るドラッグの問題は──収束するのだった。




「で、レル=アルフォードが意識不明なんだけど、何か知ってる?」


 あれから一週間が経過した。俺──ルシウスは魔法師団の団長でるライラに呼び出されていた。あれから魔法師団はレルのドラッグ生成所を全て特定し、彼が違法薬物に手を染めていたことが明らかになった。


 この件は貴族界隈に激震を走らせたのだが、俺たちの痕跡は残していない。アイシアたちがそこは上手くやってくれているからな。


「いいや別に」

「彼自身もドラッグに手を出していて、その副作用のせいで寝たきりになっている。って話だけど、どうにも信じられないというか?」

「それは何か根拠あってのもの何か?」

「いいえ。直感よ。でも、あなたが介入した可能性もゼロではないでしょう?」

「可能性の話をすれば、そうだな。でも俺は何もしていない。彼が勝手に自滅しただけだろう?」

「ふぅん。ま、そういうことにしてあげるわ」


 ライラはどこか不審に思いながらも、これ以上追及してくることはなかった。


「で、それは本題じゃないだろ?」

「そうね。本題は、王国の内部情勢についてよ。レル=アルフォードが失脚したことによって、革新派が活気付いているの」

「なるほど。彼は保守派の顔だったからな」

「えぇ」

「もしかして、俺にどちらかの派閥に肩入れしろと?」


 その話は今までないわけではなかった。が、もちろん貴族たちの争いに介入することはない。だって、普通に面倒だしな……俺としては、別に権力に固執はしてない。


 俺が求めるのはいつだって、平穏な日々だからだ。


「ううん。逆よ」

「逆?」

「えぇ。何もしないでほしいの。あなたが介入すると、容易にバランスが崩れるから。念のために行っておこうと思って」

「そこは安心しろ。俺が望むのはいつだって平穏な日々だ。荒事は好まない」

「でも、その平穏が脅かされるのなら手段は選ばない。でしょ?」

「さて、どうかな」

 

 俺は立ち上がる。どうやら、ライラもまた内心では俺のことをまだ疑っているらしい。その予想は当たっているが、真相には辿り着けない。


 それでいい。俺の存在はいつだって、闇の中に紛れているべきだからな。


「じゃあ、またな」

「えぇ。また」


 そして俺はライラの元を後にするのだった。



───────────



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

ぜひ、本作のフォローと下の『★★★』からポイント評価していただければ、嬉しいです! 今後の執筆のモチベーションになりますので、何卒よろしくお願いします!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

剣聖、賢者、聖女を兼任する悪役貴族のワンオペ暗躍無双〜生き残るために全力を尽くしていたら、気がつけば凄い立場になっていました。それを活かして世界を裏から支配します〜 御子柴奈々 @mikosibanana210

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ