サクラちゃんからの報告を受けました
「ご主人様、ご報告を致します」
「……何それ」
「あっ、いや! こっちの方が雰囲気出ると思って!」
恭しく頭を下げながらそう言い出したサクラちゃんに困惑していると、彼女はにへらと笑みを浮かべる。
どうやら普通に彼女の茶目っ気だったらしい。
「その雰囲気って絶対いい奴じゃなくて、悪党側の雰囲気でしょ」
「たはは、バレたか〜! 私は正義よりも悪役の方が好きなの!」
厨二病か! っていうツッコミは置いておいて、とりあえず俺はその報告を聞くことにした。
ユイ・サイラス問題において一番重要な部分、サイラスの本当の気持ちを知れれば、後はそれをマリアに話して解決して貰えばいいだけだ。
もちろん解決方法とかヒントとかはあまり与えず、全部自分でやって貰うつもりだが。
間違えそうになったら俺が助け舟を出したりすることもあるかもしれないけどね。
「とりあえずサイラスくんはユイちゃんのことを好きみたいだよ」
「ふむふむ、なるほど。それで何で彼が冷たい態度を取っているのかってのは分かる?」
「あー、それなんだけどね。もともと表情が乏しいのと恥ずかしさのせいでそう見えるだけみたい」
……なんだそのザ・青春みたいな分かりやすい理由は。
まあ複雑な理由があるよりかは全然マシなんだろうけど。
「ありがとう。助かったよ」
「それで、お礼とかないの!?」
「ああ、もちろん。何かあげるよ。まあ手に入るものだけだけど」
俺がそう言うと、サクラちゃんは即答でこう返してきた。
「イリーナの下着!」
「…………え?」
「…………ん?」
いやまて、俺の聞き間違いかもしれない。
もう一度聞いてみよう。
「それで、何が欲しいんだって?」
「イリーナの下着! ルイくんなら持ってるでしょ、一枚くらい」
「持ってるか、ボケ! てかなんで下着なんだよ!」
俺がそう尋ねるとサクラちゃんはいきなりモジモジし始めた。
え? そういう趣味なの?
別にその趣味を否定するわけではないが、急に告白されると戸惑うというか……。
「いやぁ……イリーナの下着を持っておけば、いざって時にマウント取れるかなって」
「誰にだよ!?」
「ん? 誰にってもちろんミーナにだよ? どっちが深くイリーナを知れるか競争してるんだ」
なんだその競争……。
イリーナのことを知ってくれようとしているのはありがたいが、なんか違うような……。
というか、下着ってちょっと方向性が違いませんかね、それ。
「てかそもそも俺がミーナちゃんとサクラちゃんの競争を知っていると思わないで欲しい」
「あれ? イリーナには話したんだけどな」
なんてことを本人に話してるんだ……。
いやでも本人としては別に嬉しい話なのか?
下着の部分を除けば、普通の友情の話だしな。
まあイリーナが俺に話してくれなかったのは、ちょっと照れ臭かったからだろう。
うん、俺だって友人が自分のことを深く知ろうと競争してたら恥ずかしくなる。
想像でしかないけどね! 友達いないからね! 恋人はいるけど! 恋人はいるけど!(大事なことなので二回言いました)
「まあともかく、お礼は下着ってことでよろしく!」
「あっ、ちょい待って! って、行くの早っ!」
よろしくと言った頃にはすでにサクラちゃんは離れて行っていた。
なんて嵐のような女の子なんだ……。
いや、どうしよう、本当に。
イリーナの下着を盗み出したことがばれた日にゃ、サクラちゃん共々怒られるに違いない。
少なくとも、俺が疑われたら真っ先にサクラちゃんのことを売ろう。
しかしちゃんと情報を入手してくれたのは事実だからなぁ。
下着はこっそり盗んでみるか……。
そんなことを思って悶々としながら、俺は次の日のマリアへどう説明するかも考えるのだった。
+++
「さて、マリアにはやってもらいたい依頼が来ている」
次の日の放課後、部室に集まり俺はマリアにそう告げていた。
「おおっ、ようやくなんですね!」
「そうだな。それで相談内容なんだが——」
俺はマリアに全ては伝えず、ユイ視点の悩みだけを伝えて反応を見た。
すると彼女は少し難しそうに考えた後、ぽつりとこう言った。
「こんな悩みは初めてなので、難しいですね……。私に解決できるでしょうか?」
そう言うマリアは不安そうだ。
まあ普段やらされている相談って宿題代行だったり掃除代行だったり、はたまた委員会の代行だったり。
そう言ったただただ面倒くさいだけの仕事を押し付けられているにすぎないからな。
こう言った真面目な相談事をマリアに持ち込む人間は今までいなかったのだろう。
「大丈夫だよ。マリアが真摯に向き合って解決させようとすれば解決するさ」
そもそもマリアは馬鹿なわけじゃないからな。
ただ他人奉仕に熱中しすぎて、と言うより依存しすぎておかしくなってるだけで。
ちゃんと向き合って一緒に悩んで考えれば、絶対に解決に向かうはず。
それに、この案件は絶対に解決できる依頼なんだからな。
「そうでしょうか……?」
それでも不安そうにしているマリアの手を無理やり取ると言った。
「大丈夫大丈夫。もし失敗しそうになっても俺が助け舟を出すからさ。安心して好きなようにやってみるといい」
俺の言葉にようやく笑顔を浮かべたマリアは俺に手を引かれるように立ち上がって頷いた。
「そうですね。ルイさんがいるなら安心ですね。ありがとうござます、頑張ってみます」
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無能貴族に転生した俺が何故か【陰の英雄】と呼ばれるまで~悩みを抱えていたはずの悪役ヒロインたちが、みんな俺に救われたと感謝して忠誠を誓ってくるんだけど、なんで?~ AteRa @Ate_Ra
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