日記 二日目
今日は、
それは本来なら、すごくうれしくて喜ばしいことのはずです。
何も知らないのなら。
今日、助手さんについていく道すがら、研究者の人たちにこう言われましたの。
「悪魔だ」
「穢れているのに」
「おぞましい」
さざ波が立つように、悪意のある言葉が私に突き刺さりましたわ。それでも私は、機械であるから嫌われているのだろうと、人造人間だから嫌なのだろうと思って気にも留めませんでした。
あの光景を見るまでは。
助手さんに電池のある部屋を追い出され、とある風変わりな研究者さんに囁かれました。部屋の中を覗き見れば?と。
そんなこと、してはいけないとわかっていました。でもどうしても、気になってしまった。中で何が行われているのか。どうして私は見てはいけないのか。そんな疑問がぐるぐると脳の中を渦巻いて。
気づけば私は、重い金属のドアを細く開けてしまっていました。
その先では、電池が人を食べていて。私は思わず、ショックでその場にへたり込んでしまいました。ドアはへたり込んだ拍子に静かに閉じていましたわ。
なんで?どうして?人が、食べられ…?え?
そう思っているうちに、助手さんがドアを開けました。
「お、どうしたどうした。座り込んじまってさ。はは、まあいいか。電池の準備、終わったぞ。これからお前にはめ込んで、拒否反応とかのチェックテストをするからな。ほら、こっちだ。」
助手さんに手を引かれ、私は促されるまま立ち上がりましたわ。そのあとは、どうしたんでしたっけ?呆然としている私を寝かせて、助手さんが注射器を構えて…
そこから先は、記憶がありませんわ。
ただ目が覚めたら、ベッドの上にいて、私の胸にはあの電池が嵌って輝いていましたの。まるで本当の
ああ、おぞましい。私自身も、悪魔と同じになってしまったのですわ。
でも、死ぬことはできませんの。悪魔に殺されなければ、私たちは何度でも、パーツを取り換えられ付け替えられ、再び戦場に赴くのですから。
あの子は、「歌姫」は知っているのでしょうか?私たちが人間を殺して生まれてきたということを。悪魔と変わらない、穢れた存在であると。
そして私は、尊い命と引き換えに能力を使えるようになりました。私の能力は、「悪魔の核を目視できる」能力でした。
今日の訓練で知ったのですけれど、悪魔って核を壊して殺すんですのよ。だから、悪魔と戦う時は核を壊すことを目標にすればいいんですわ。
ただ厄介なことにこの悪魔の核、どこにあるかがわからないんですの。悪魔の体の中を常に動いているんですわ。しかも大きさが手のひらサイズ。身長が2メートルを超えることもよくある悪魔の体と比べれば、だいぶ小さいものなのですわ。
ですから普通の天使が悪魔を殺すとき、とりあえずめった刺しにしまくるんだそうですの。それで悪魔の核に攻撃が当たるまで、攻撃を続けるそうですわ。
でも、私のこの能力なら。どこを狙えばいいか一発でわかりますもの。悪魔を殺す効率が飛躍的に上昇しますわ。これで、私は一撃のもとに悪魔を切り伏せることができますわね。
訓練は悪魔の知識だけではありませんでした。戦闘技術、隠密技術、人々の避難誘導法まで。悪魔と戦う時に直面するあらゆる情報をインプットするのですわ。もう脳も体も疲れ切っていて、この日記も正直書くのが大変です。
でも、私は強くならなければ。私の電池の為に死んでしまった人たちに、恥じぬ強さが欲しいのです。
強くなければ、悪魔を殺せなければ、私はただの人殺しになってしまいますもの。
そんなの、絶対にダメですわ。
ふう、もう限界です。瞼が開かなくなってきましたわ。明日も訓練があるのですからしっかり休まなければ。
それでは、おやすみなさい。
リトルガーデン 鉄 百合 (くろがね ゆり) @utu-tyu
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