記念SS 配信事故の大晦日【重大告知】
「ってことで、今夜はこれくらいにしておきましょうか」
「うん! 今日も美味しかったよ、伊波!」
「ありがとうございま――あっ、電話かかってきた。すみません、ハクさん。俺ちょっと話してくるので、配信切っといてください。じゃあリスナーの皆さん、よいお年を」
:よいお年を~
:お疲れー!!
:大晦日ひまだったからマジ助かった
:来年もよろしくお願いします!
:おつー
「じゃあ皆、配信切るね! ばいばーい!」
ピッとボタンを押して、コタツに戻ったハク。
今日も今日とて沢山食べ、心も身体もご満悦。「ふへぇー」と緊張感のない声を出しながら、網の上の餅のようにとろける。
:ん?
:あれ?
:配信切れてないですよー!
:機材新しくしたばっかだし慣れてないのかな
:ハクさーん!!
「ふわぁ~……んむぅー、眠い……ちょっと寝ちゃおうかな……」
:おい気づいてないぞ
:これやばくない?
:早く伊波さん戻って来て!
「すぅ……すぅ……」
:寝るのはやっ
:寝顔可愛すぎん?
:伊波さーーーーーん!!!!!
ハクの寝顔代として、怒涛の勢いで流れる投げ銭。
大半がこの状況を面白がっているが、一部のリスナーは本気で心配しコメントを連投する。
「今電話終わりました……って、もう寝てるし」
:帰ってきた!
:もうちょっと寝顔みてたかったなー
:ハクさん、配信切り忘れてますよ!
「コタツで寝たら風邪ひきますよ。ほら、起きてください」
「ふぇえ……? んむぅ……ちょっとだけー……」
一瞬意識が覚醒するも、すぐさま眠りの世界へ。
伊波は小さく肩をすくめて、ハクが風邪をひかないようブランケットをかける。
「はぁー、今日は疲れたな……」
:配信ついてますって!!
:伊波ー!!!!
:気づいてー!!
ハクの隣に腰をおろし、ボーッと天井を仰ぐ。
しばらくして前を向くも、その視線はテーブルの上のスマホへ。配信中であることには気づかず、ポチポチといじり始める。
:これ何かやばいこと言って炎上する流れじゃね
:せっかくチャンネルうまくいってるのに……!!
:今年最後に炎上かー
「……」
:おっ、ハクさんの方みた
:ヤっちまえー!!
:BANされちゃいますよ!?
「口、汚れてる……もう、子どもじゃないんですから……」
:そこは普通に拭かずにキスだろ!!
:草
:配信外でも期待を裏切らないポンコツさ
「んぅ……いなみぃー……」
「どうしました?」
「……すぅ……」
「え、寝言? ハクさん?」
「……すぅ…………おなか、いっぱぁい……」
「……」
「すぅ……すぅ……」
「…………可愛い……」
:可愛いって言った!?
:めっちゃニヤけてて草
:イチャイチャご馳走様です!!
「……これからも、一緒にいてくださいね……」
「すぅ……すぅ…………ふふっ……」
優しく慈しむように、それでいてどこか弱々しく笑いながら、伊波はハクの頭をそっと撫でた。
ただ幸せで静かな、温かい時間。
二人だけの呼吸。
対してコメント欄は、配信ではまず見せない伊波がハクに甘えるような場面を前に、かつてないほど盛り上がる。お年玉、結婚の祝儀と称した投げ銭が飛び交い、同時接続数がモリモリと伸びてゆく。
「あっ、猫宮さんから電話……はい、もしもし。はい、はい……えっ? は、配信、切れてない?」
:あっ
:やっと気づいた
:顔めっちゃ青くなってるwww
:いえーい、見てるー?
:プロポーズ最高でした!!
「ちがっ、違います! プロポーズじゃなくて……!! と、とにかく、もう切るので! じゃあ皆さん、よいお年を!!」
:焦りまくってて草
:草
:よいお年を!!
:これあとでハクさん見るのかなww
:ハクさんの反応、あとで教えてくださいー!
急いで機材を操作するも、その間もコメント欄は止まらない。
今年下半期で劇的に伸びた伊波キッチン。
かくしてこの
――――――――――――――――――
あとがき
お久しぶりです。
枩葉松です。
本作に関して、とても嬉しいお知らせがあります。
小説家になろうの「第12回ネット小説大賞」にて、『仕事ですか? 毎日俺を殺しに来る女に飯を食わせる配信で稼いでます』が入賞しました!!
主婦と生活社のPASH!文庫で書籍化します!!!!
元々この作品は第9回カクヨムコンテスト用に書いたものでして、たくさんの方に読んでいただけたものの受賞には至りませんでした。
割と自信があった分しょんぼりしていたのですが、こうして無事商業化できてとても嬉しいです。
今後についての情報は、基本的に私のX(@tokiwa_yosyo)で発信していくので、気になる方はフォローをよろしくお願いします。
それでは、失礼します。
【二章完結】仕事ですか? 毎日俺を殺しに来る女に飯を食わせる配信で稼いでます 枩葉松@書籍発売中 @tokiwa9115
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【二章完結】仕事ですか? 毎日俺を殺しに来る女に飯を食わせる配信で稼いでますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます