第33話 色の力
壁とくちばし男は、目を押さえ崩れ落ち、床で暴れている。必殺・色彩目潰し。極彩色の光を飛ばして、一時的に視力を奪う技だ。
ちなみに考案者は私より年下の岩石の魔女。彼女が私が魔法で描いたランプを使っていた時、「この光を強くしたら視界奪えそう」という言葉から生まれた技だ。思えば、彼女との組手何度負けた事か。本当に強い魔女であった。彼女の岩石パンチで何度あばら骨を骨折したか。
まあ、そもそも、私が勝てた魔女なんて、ほとんど居ないのですが。
この技があって、良かった。目の前の人たちと殴り合うことも考えたが、今の服装は白無垢。戦闘向きではない。戦いどころは、見極めるのも大事なのはサバイバル訓練で学んでいる。まずは、敵の鎮圧、無力化しなければ。
「縄か紐はあるかしら?」
にっこりと精霊が入ったからくりたちに微笑むと、無表情の彼女たちがコクリと頷いた。
鎮圧後、お鷹、お鳶、お鷲、お鶏の中にいた精霊たちに安全なところはあるかと聞くと、どうやらこの屋敷の天井は精霊しか入れない空間になっているよう。
「奥方さまは、危のうございますぅ」
泣きそうな声で、私に言う精霊たち。お鶏も天井裏に逃げなかったのは、私になにかあったらと思ったからのようだ。
「大丈夫よ。どうにかなりそうな気がするわ」
私は渋る彼女たちを悟し、天井裏に逃がす。
そして、皆が天井裏に行ったのを見て、私は一目散に玄関へと向かった。精霊たちを天井裏に逃がしつつ、玄関にいるはずの夕雅様と合流すべきだと判断したのだ。
一刻の猶予を許さない状況。仕方ないと
「精霊さん、動けますか?出てきてください!」
「奥方さま、動けるよ〜」
声掛けとともに、からくりの頭からひょこりと顔を出す精霊。
「よかった、皆天井裏にいるわ」
「わかったぁ」
「ちなみに、玄関は?」
「左だよーそれにしても、ホウキって空、飛べるんだぁ」
精霊は天井裏に向かいながら、私に向かって不思議そうに首を傾げた。
「ええ、魔女の必需品よ」
そう、私は今、魔女のホウキに乗っている。ただでさえ道に迷うのとコントロールが下手なので、ホウキに乗るのは好きではないが、スピード勝負なら負けたことはない。
精霊に言われた通り、左に曲がり、途中で変な生き物が《からくり》を壊してるのを見ては、色目潰しをしていく。
そして、大きく開けた屋敷の玄関の向こう。そこには何百もいる異形のものたちが、夕雅様を取り囲んでいた。
「そこを退け、鬼の者! 私の半身を迎えに行く!」
触ったものを投げ飛ばしながら、前に進もうとする黒い紋付袴を着た夕雅様。しかし、ボロボロの異形のモノたちが彼を抑えようとしていた。
そして、何百もいる人たちの後ろに、白無垢を着て無表情の茜様が立っていた。
「駄目や。お館様の命令や。わかったらはよお嬢と人力車に乗れ!」
「こっちはその半身様を人質にとってるんや! 覚悟しぃや!」
「頭領の言葉に背くからこうなるんや!」
様々な者からそう言われている夕雅様。強いのだろうが、彼の優しさからか致命傷までいれられていない。どうすればいいか、そう考えた時、私はもう一つの技を繰り出す。
「お鷲、ごめん!」
ホウキの全速力で、玄関から空へ向かって飛んだ。手で毟るように髪の毛を無理やり解き、魔法の開放呪文を唱えた。
「
呪文と共に髪の毛は七色に輝きながら、百鬼たちを覆うように大きく広がった。
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