世界のどこにいても〜前世からあなたを想う〜

第1話プロローグ

　俺がよく見る夢。

戦火が飛び交う戦場の中、隊服らしき服装に身を纏う男の姿。

　彼の強さは他者と比較するのも難しいほど強く、頭脳も優れ、立案の正確さや指示の的確さは仲間からも好評だった。

彼の名は【イリオス・トリガー】

　彼は国の幹部だった。部下からは尊敬され、主君からも絶大な信頼を得ていた彼。そんな彼にも好意を寄せる人物がいた。

彼の主君の娘【アステリ・イグニス】だ。

どこにいても、何をするにも彼の近くにはアステリ姫がいた。アステリ姫にはイグニスが頼りだったし、滅多に笑わないイリオスは彼女の前だけは笑顔でいられた。

でもある日。彼は目の前でアステリ姫を亡くしてしまう。彼は涙がかれるほど泣き散らし、喚いた。

手には彼女とお揃いで買ったペンダントが握りしめられていた。写真は勿論、イリオスとアステリ姫のツーショットだった。

ここまでが夢の内容。今日もその続きを見ようとするが、そこで目が覚めた。

目には涙がうかべている。毎回そうだ

そして……

会いたい

という不思議な感情が湧き出ている。

　どうしてだ……？俺にはアステリ姫の存在がどうにも大きい。そんなに彼女のことを大事に思うことがあるのだろうか……。

そう思いつつ、俺は起き上がり会社に行く支度を始める。

でもアステリ姫……。気にかかるのは確かだ