第3話

その日は、3人で雑魚寝した。

3人の誰もが、不安だった。

それでも、3人とも金に追われる日々はもう嫌だった。それでなんとなく、3人並んで寝転がったのだった。

「どれくらいになるんすかね……」

「1年、人並みに暮らせたら良いよ、私は」

「遊んで暮らそうぜ。世の金持ちは皆そうだ。悪い事して稼いで、後は遊んで暮らすんだよ」

「皆が皆そうとは限らないけど……」

「上手くいったら、他の苦しんでる人らに教えてあげたくないすか?」

「こんな方法があるってか?」

「いい子だなぁ……脅しといて良かった」

なんとなく、沈黙が流れた。

「いい子じゃないすよ。さっきは言わなかったすけど、ボクは金に余裕が出来たらえっちなお店とか行きたいっす」

「えっちなお店て……」

「俺、もし女だったら生活のために体売ってたかなぁ」

「はい?」

「こんなに生活苦しいなら、体売って金作る方がいいだろって思うのは俺が男だからなのかと思って」

「女の子だったら違う考え方だったのかもってこと?」

「女として体売る感覚って、男にはわからないだろ。めちゃめちゃ嫌悪感あるかもしれないし、金のためって割り切れるかもしれない。実際に女にならないとわからない」

「知らない男の棒が自分の中に入ってくると思ったら、すごいストレスだと思うなぁ」

「川瀬さんも工藤さんも寝ぼけてるすか?」

「寝ぼけてなきゃ、男同士でもこんな話しないんじゃないかな?」

「俺は女だったら良かったなと思って」

「…………」

「…………」

「体売って金作りたいとかじゃない。女だったら、山田にめちゃめちゃたっくさんエロい事してやりてぇなって」

「えっ?」

「あっ、えーっと……いいっす」

「なんだこの空気」

「あっ、そうだ!男でも体売れるらしいよ!やり方は知らないけど!」

「ボクは郵便局強盗でいいっす」

「寝るか」

「うん」

「おやすみなさいっす」




翌朝、3人は自室で黒のパンツと黒のTシャツに着替えて再集合した。

「俺と工藤さんで窓口、山田はATM、いいな?」

「OK」

「バッチリっす」

バールと包丁を持って、3人は歩き出した。

目指すは三丁目の郵便局。

彼らは悪党への1歩を踏み出したのだ。

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郵便局強盗 水崎 湊 @mizusakisou

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