あとがき・解説
【あとがき――という名の簡単な解説】
はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。吹井賢です。
この『「俺は犯人じゃない!」』は、こむら川小説大賞の為に書き下ろした短編です。二作目ですね。テーマは「逆境」でした。
逆境、ということで、主人公が殺人未遂の犯人として疑われるバカミスを書いたのですが、エピローグまで読むと、「実は主人公は殺し屋だった(本編は仕事の為に標的を尾行していたら向こうが勝手に転んだ)」ということが分かるという、我ながら、ちょっと面白い作品になったと思います。
忘れない内にパロディ元を解説しておくと、「標的を道路や線路に突き落として殺す暗殺者」というのは伊坂幸太郎の『グラスホッパー』からです。先日、『HERO』のドラマを見ている際に、キムタクが車道に突き飛ばされて殺され掛けていて、それで思い出し、こんな作品を書いてみました(だから主人公の偽名は『HERO』主人公の久利生公平から取ってます)。
テーマソングは『キャパシティ超える』。個性的な登場人物に振り回される主人公をイメージし、設定したナンバーです。
こだわりポイントとしては、実は主人公はほとんど嘘を吐いていないことですね。仕事についてもそうですし(「仕事に行く途中」としか答えていない)、「……お前を殺した殺人犯だとしたら、お前死んでなきゃおかしいけどな。」という独白は、「お前以外を殺した人間ではある」とほぼイコールです。
今回はとんでもない事態になりましたが、基本的には優秀な殺し屋なので、もしかしたら何処か別の作品に出ることもあるかも?
講評をくださった闇の評議員の皆様もありがとうございました。
ざっくり纏めると、「インパクト不足」ということでしたが、これは執筆中も思っていたことで(「もっと派手な殺人事件の方が面白いなあ」的な)、一応は、リアルよりの作品を専門に書いている人間の辛いところです。アニメ的なインパクトのあるキャラ、書かないし、書けないんですよね。エルロックがギリギリのライン。
闇の評議員の皆様を含めて、読者の方々からはエルロック田中が好評でしたが、あの設定は「勘違いらしいと気付いた取り巻き達が急に帰り始める」という展開にする為にぶっ込んだものです。それが一番ウケたわけですから、分からないものですね。良かったな、田中。
地の文ツッコミに関しては、普段は全くやらないんですが(講評でもあったように誰の台詞か分かりにくくなるので)、今回は特別にやってみました。コメディとか、あんまり書かないしね。
この作品が、皆様の一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。
それでは、吹井賢でした。
「俺は犯人じゃない!」 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010
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