第3話 神様からの説明②




「さて、これ以上は何も質問はないかな?」


 自分の質問のあとに、他の人達も質問していた。ただ、その半数ほどは『教会などで調べてね。』という回答であった。


「ここからがある意味本題であるのだけれども・・・・・・・・・まず、君たちは決して主人公などであるとは思わないでね。これから行く世界は現実のものであり、いくら私でも痛覚までは弄くれないし、死ぬことだって容易にある。私たち神族は戦争などに呼ばれれば関与するけど、基本的に不干渉を貫いている。戦争以外で介入した事例は過去一度もないよ。あるとしても神託を与えるくらいかな?ちなみに、戦争であっても神王議会から事前に許可を与えられてた者しか介入はやれないけどね。やった瞬間に、違反者扱いされて捕まるし。」


 つまり、神は戦争に参加することもあるということか。


「そして、ここが重要なんだけど・・・・・・神族内でも内戦が起きている。寧ろ、地上での戦争の発端が神族にあると言っても過言ではない。『神間戦争』または『災禍の狂乱』について書かれた書物を調べてみると良い。ただし、〈古き世代〉の者たちには聞かない方が良いわ。私のような温厚な者や穏健派に属する者なら兎も角、過激派や狂信派辺りに聞けば殺されかけるわよ。」


 全能神の纏う雰囲気が変わった。

 恐らくは神族であってもタブー視されているのだろう。

 『これは自力で調べた方が良い。』と思わせるくらい緊張感が場を包んだ。


「全能神様、先程から気になっていたのですが、神王議会とは何なのでしょう?」

「ん?あぁ、そうか。そういえばまだだったね。」


 全能神は少し悩んだような顔をして、


「神王議会というのは文字通り、『神王』たちの議会なんだよ。『神王』というのは、各種族神や概念神などの代表であったりする者たち。例えば、龍神王は族の神である神たちの代表であり、魔神王は魔という概念を司る神たちの代表であるのよ。ちなみに、私はそんな神族の王であるのだけど、『全能神王』や『神神王』などは言い難かったり、ややこしかったりするだけだから『神王神』という呼び名になったのよ。ここまで言ってもピンと来なければ『神王』は神の王族だと思えば良いわ。実際、各神王たちには象徴となる紋章と領地があるからね。それから、神王議会は神王たちの議会と言ったけど、別に神王しか参加権が存在しないわけではないの。議会の場所は秘匿されているから厳しい制約が課せられるけど、条件を満たしさえすれば参加権は得られるわ。忘れていたけど、『神王』を名乗るには条件があって、それを満たさなければ序列席にも『神王』にもなれないの。『神王』の条件は通常の参加権よりも厳しいわね。」


(全能神が悩んだのは『制限時間』だろうか。介入できる時間がどうのこうのと言っていた気がするし・・・・・・。)


「あと、貴方たちが向かう世界において、絶対に遵守しなければならない法や犯してはならない禁忌などは基本的に神王議会が作っているからね。神王議会で定めた禁忌などに違反すると、永久に死にたくなるほどの苦痛に苛まれることになるから注意しなさい。禁忌などに関して載っている本は教会の図書館に残っているはずだから。」


 そこで全能神は一呼吸置いた。まるでこれから一番重要なことを話すかのように。


「私たちは今、神王側陣営と悪神側陣営の2つに別れて戦っているわ。悪神側陣営はトップである悪神王やその直属の部下たちの思惑は総意とは若干異なるようだけど、主に“人”を殺すことに快楽を覚えたり、世界を壊そうとしている陣営であり、それに対して、神王側陣営は悪神側陣営の行動を妨害し、可能であれば捕縛または抹殺する者たちの陣営なの。神王側陣営は名前からも分かる通り、神王議会が筆頭となって動いているわ。ただし、神王たちは基本的に自分の領地や神王議会がある世界から動かない、いえ、動けないの。どの世界にも王の座を狙う輩が多くてね。資格が全くないというのに座ろうとする愚か者は多くて、本気で世界の平和を望んでいる者であっても安易には動けない状態なのよ。それに、神族と言えども原子よりも小さな核を破壊されると消滅して無に還り、一生復活できなくなってしまうから怖気付いている者もいるのよね。“王”がいてくれればこんなことにはなっていないのだけど、そうすると私たちが最も恐れる事態になりかけて、療養のためという大義名分で別の世界に強制転移の上、記憶や力を封印させたから、もし貴方たちの中に王の転生体がいたとしても戦場に駆り出されることはないから安心して頂戴。ちなみに、貴方たちの死因もこの戦いに巻き込まれたのよ。こちら側の陣営神王側陣営は簡単に見つかって、現在進行形で神王議会の上位序列席による極秘裁判が決行されていて、恐らく重い罰が与えられるわ。貴方たちのいた世界は秘匿されている世界だから、表立って裁けないことは許してね。」


 そう言って全能神は雰囲気を戻した。そして、


「重たい話は終わりにして、ここからは君たちに与える職業や能力などについて説明するわね。」


 そう言って説明を始めた。そこからは質問+雑談のようなものが多かったので、この場では語る必要はないだろう。

 そのため、説明は長かったが、いくつかの注意事項もあった。要約するとこうだ。


・ステータスは『種族、職業、属性、称号、基礎能力値、スキル、恩恵』の7項目。意識を集中させれば脳裏に浮かび上がり、周囲に見せたい場合は「ステータスオープン」と唱えるか、冒険者ギルドや商業ギルドの中、そして大きな砦や城塞等の門など、主要な場所や施設にある水晶に手をかざす。唱えた場合は任意の項目だけを、水晶の場合は全てを映す。


・種族は多岐にわたって存在している。今回は特典として通常は人間族のところを他の種族に転生可能。


・職業は本人の適性に合った職業が表示される。基本的に『初心者』、『下級』、『中級』、『上級』、『最上級』、『神級』の6段階のくらいがあり、貢献度や活躍度、信頼度、実力などでくらいが上がる。最初から行っていない職業は『初心者』のままであり、また、最初は行っていても、半年以上活動を休止していたら『休止中の年月』と『活動休止中』という文字が職業名の後ろに()して書かれる。活動を完全に停止した場合は、職業名に『元』が付く。


・属性は魔法適性だけでなく、その人のあり方や存在そのものなどによって決定し、何かしらの要因で変わることもある。一番珍しい属性は【虚無】や【全能】、もしくはそれに類する系統の属性。


・称号とは功績や二つ名、異名などによって人々から呼ばれる名称。自動追加。自身が持つ職業とは異なる称号や望まない称号を得る場合もある。表示変更は可能。ただし、犯罪関係の表示はその罪が許されない限り表示し続ける。なお、冤罪の場合は神殿で祈りを捧げれば神族の力によって称号の削除が可能。犯罪系の称号持ちでも大人しくしていれば牢屋行きにはならない。犯罪系の称号は窃盗や殺人の場合は固定表示だが、詐欺の場合は表示を非表示可能といったように曖昧な部分もある。


・基礎能力値は『筋力、知力、体力、俊敏、耐久、器用、魔力、生命、精神、運勢』の10項目がある。筋力は攻撃力、耐久は防御力、知力は記憶力や知識保有量、体力はスタミナ、俊敏は速度、器用は技工力など、魔力は魔力保有量や魔力抵抗力、生命は生命力、精神は精神力や精神防御力、運勢は幸運度とそれぞれなっている。『?』が付いているものは計測不能、『■』が付いているものは使用不能、『|⿰、⿱、⿲、⿳、⿴、⿵、⿶、⿷、⿸、⿹、⿺、⿻《漢字構成記述文字》』が付いているものは鑑定不能を意味する。


・スキルは通常のスキルの他に、魔法なども含む。基本的にはスキル名(魔法も含む)の横にレベルが書かれているが、書かれていないものは成長のしようがないものであったり、レベルという概念が存在しないものである。Lv.5以上で実力者、Lv.7以上で達人級、Lv.10以上で神への挑戦者と言われている。スキルの最大レベルは100であるが、“世界”と神族を除いた“人”の最高レベルは999であり、そこに至るまで数十万年という年月を必要としている。


恩恵ギフトには『祝福』、『加護』、『恩寵』、『悪戯』、『のろい』、『奇蹟』などがある。効力としては、低い順に『祝福<加護<恩寵』であり、『悪戯』や『呪い』、『奇蹟』などは、かけられた内容によって異なる。また、『極小、小、中、大、特大』の5段階評価があり、これによっては『祝福<加護<恩寵』の関係を覆すこともある。一番強い恩恵は『寵愛』であり、授けた者の能力や権能などが使用可能。


・なるべく希望通りの職業とスキルを与えるが、人数が多いため、【勇者】や【賢者】、【聖女】などの人気の職業は抽選とし、外れた場合はそれに類似するものを与えることとする。




「さて、これから君たちに職業とスキルを与えるから、目を瞑って心のなかで臨んでご覧。」


 そう言われたので、自分たちは目を瞑った。


「あぁ、職業やスキルの授与と並行して召喚が行われるから、誰かの声が聞こえるまで目は決して開けないでね。下手をすれば時空の狭間に囚われてしまうから。」


 ・・・・・・そういった恐ろしいことは早く言って欲しいと思わなくもないが、既に目を瞑ってしまっているため、開けることはできなかったし、声も段々遠くなってきたので召喚が開始されたのだろうと思ったため、何も言わなかった。ただし、


(今度会ったときには文句を言ってやろうかな?)


 遠のく意識の中でそう思った。





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