いやなところをくすぐられて不愉快なのに、その気持ち悪さがかえって快感になってしまう。不条理劇にはそんな不思議な面白みがあると思うのですが、本作は存分にこの快感を味わうことができます。日常の中に突然異質なものが現れる不気味さとか、徹底的に噛み合わない会話とか、解決するどころかさらにこじれていく状況とか。
行間をあえて空けずに滔々と綴られているので、畳みかけるような力があり、個性的な語り口調がシュールさを増長しています。理不尽がキャパを超えると人は笑ってしまうのか、読んでいる間じゅう、「なんでそうなる?」とツボに入ってばかりでした。が、最後にはストンと落とされる展開が待っています。これはカタルシスなのか?
読み手によって色んな解釈ができるのも不条理劇の面白さ。ぜひこの世界を体験して想像を膨らませてください。
見知らぬ男に、ある日突然「ぼくのロカイダルを殺したでしょう?」などと言われた主人公。もちろん何の覚えもない。ロカイダルって、何?
それ自体は普通ならありえない非日常だけれど、彼らの周りの情景も、その後に登場する人物たちも、主人公の心情さえもが日常の一コマのように自然に流れていきます。
何となく、このまま自然な形で終わるのかな、と思わせられるのですが……
何でもなさそうな風景やそれぞれの会話にも味があって、気がつくと読者も自然に引き込まれていきます。まさに流れるような文章が素晴らしい。
では、どんなお話なのか。ぜひ、その目でお確かめください。