(四)-4(了)
「兄さんはすぐに逃げて下さい。敬神党に対しては射殺命令が出ています。兄さんを死なすわけにはいきません」
弟の豊久はそう言った。そして盛久の肩を押して、兵舎から出るように促した。
盛久は迷った。仲間を見捨ててそのまま逃げていいのか。でも弟と再会できたことは嬉しいし、弟をここで斬るわけにもいかなかった。
盛久のこの逡巡は一瞬だった。しかしその一瞬の時間は一発の銃声で終わりを告げた。
窓の外には、帽子だけ被った寝間着姿の陸軍の兵士が、銃を窓越しに構えていた。
盛久の体から力が抜けた。そして膝が床についた。そして盛久は兵舎の床に倒れた。
「兄さん!」
兵舎の中に豊久の叫び声が響いた。床には盛久の体から地が流れ出て血だまりを広げていった。
(了)
兄の刀と弟の銃 筑紫榛名_次回5/11文学フリマ東京 @HarunaTsukushi
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