第48話 人形のようなお顔の整った美少女と気持ち

「そういえば、体育祭のお疲れ様会には今日行くんですよね?」


 蒼井がふと、今日のことを聞いてきた。

 お疲れ様会があるとは言っていたが、行くとは言っていないのだ。


「いやー、正直めんどいなーって思ってる」

「どうしてですか」

「人が多いってのもあるけど、別にクラスの仲いい奴なんて明人くらいだからな」

「まぁ、分からなくはないです。私も仲のいい友達は本当に少ないです」

「そんなことはないだろー、俺みたいな陰みたいなやつと、幸奈みたいなお嬢様を比べたら…………」


 俺が軽い感じでそう言うと、蒼井は俺の方を見ながら目を細めてきた。

 そこで悟った。自分は会話の選択を間違えたのだと……。


「蒼くん……」

「は、はい」

「私はそういう風に思われるの嫌だってわかってますよね?」

「わかってます……」

「じゃあ今度からは言わないでください」


 すこしキツイ言い方で蒼井から叱られてしまう。

 でも、自分でも俺と蒼井が同じだとは思えないのだ。


 表面上の関係……なんて言われたら、反応に困る。

 それに、女性怖すぎだろって感じてしまう。表面上の関係なんてドラマかなんかなの?


「悪い人だけではないとわかっているのですけれど」

「まぁ……落ち着く相手と過ごしている方が何倍もいいよ」

「落ち着く相手……ですか?」

「うん、もう半年も一緒に過ごしているし幸奈は落ち着くよ」


 何気なく自分が思っていることをそのまま口に出した。


 ちゃんと考えてとかではないので、本当に自分が思っていることが声に出たという事だ。


「あ……、そ、そうですか」

「…………いや、その忘れてほしい、今のなしで」

「なんでですか!」

「え? キモいから?」

「キモくなんてないので忘れません」


 蒼井は頬をムッと膨らませながら、プイッとそっぽ向いてしまう。

 その姿が小動物が拗ねているようで可愛い。


 こんな姿を学校で見せることはないだろうが、もし見せていたら男子どもは悶え死んでいる。


「えぇー忘れてよ」

「ダメです。忘れてあげません」

「ま、本当にそう思ってるからいいけど」


 俺がまたそんなことを言うと、蒼井はみるみる顔を赤くする。

 その姿が面白くなりついつい、意地悪したくなる。


「うるさいですっ」


 蒼井はポコッと俺のことを叩いてきた。

 なんだこの可愛い攻撃は……。


 思わずキュンと、ときめいてしまいそうになってしまう。

 よくないよ、蒼井さん。そんな可愛いことをしたら世界中の男が惚れてしまうよ。


「幸奈、そういうことを男子に軽々しくするものじゃないよ」

「蒼くんが調子に乗らないようにって意味です」

「男子が全員恋に落ちますよ?」

「そ、それは……蒼くんもですか?」


 ゆっくりと俺の方を向き。上目遣いで聞いてくる。

 あー、やばい……。本当に好きになってしまいそうで怖い。


「……ないっては言い切れないですよね」

「ご、ごめんなさい。こんなことを聞いて」

「前に失敗したから、今度は慎重にというか、面倒くさいなって思う事があったから……」

「……そうですか」

「それに、今は好きになっちゃいけないと思う」

「なんでですか?」


 蒼井は食い気味にその話を掘り下げてくる。

 どうしてこんなに、グイグイ話を聞きたいのかこっちが聞き返したいくらいだ。


「いやー俺が付き合ってもらえるような人じゃないというか」

「そんなの、わからないじゃないですか。自分が好きだと思う人と付き合いたいっていうなんじゃないんですか?」


 蒼井からそういう、芯の通った言葉をかけられる。


「そ、そうですよね」

「敬語禁止ですよ」

「これくらいは良くないか?」

「だめです」

「はい」


 これくらいはという考えは蒼井は通してくれなかった。


 自分が好きだと思う人と付き合いたいって言う気持ちが恋か……


 蒼井の言葉が胸に響いた。

 その言葉を胸に、蒼井の横顔を見る。


 その時、不覚にもこの子とと考えてしまった。

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人形のような整ったお顔の美少女が一緒に暮らすことになったので、よろしくお願いします。 楠木のある @kusunki_oo

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