夢の心地
虹凛ラノレア
夢の心地
「はぁ~~今日の夢、良かったなぁ~」
少女は机の椅子に座り今日見た夢を空想で思い浮かべなからウットリしていた。
「魔法の杖で空を飛ぶ夢って最高!雲の上から街を見下ろす景色も良かったな~」
机の上には月間の少女雑誌が置かれページが半分まで捲れている。夢の心地を思い出し空想の世界観に浸り終わると再び少女は雑誌のページを捲る。毎月、楽しみで買っている雑誌を1時間読書すると捲るページが無くなり雑誌をパタンと閉じる。
「読み終えたし、リビングで動画でも観よ!」
リビングに向うとテレビのリモコンを操作し、某動画のアプリを選択する。両親が共働きな少女は学校終わりで一人で寛ぐ祝福な一時だった。両親に怒られる事も無く、お菓子を食べても何も言われずまさに最高の時間。テレビにアプリのロゴが表示されるとおすすめの動画一覧が表示され少女は見入る。
「ゲームの曲をピアノで弾いている動画だ。このゲーム好きだから聞いてみよ!」
リモコンを押すと動画が再生されゲームの曲が流れる。ゲームをプレイしている最中は激しい曲調で流れ緊張感が走るが、ピアノで聞くとゆっくりな曲調もあれば時には激しくなり涙が出る程に世界観に引き込まれる。
「ピアノ弾ける人っていいなぁ~!私も埋め尽くされた観客席で引いたらどんな風になるんだろう?」
少女はピアノを弾いた事など全く無いが、自分が弾くならどのような曲調でアレンジをするだろうか…と満員の観客席で弾く自分を想像をする。
「こんな感じかな?今日みた空を飛ぶ夢を見たように夢で見れないかな~」
少女にとって夢は自分が思い浮かべた想像をリアルに近く体感するのに近いと感じ、夢で見たい!と気持ちが強く溢れ出る。
「今日、寝た時に見れるといいな」
少女は今日の夜、就寝する時を楽しみに待ち続ける。両親が帰宅し、ご飯、お風呂、勉強…と今日の日課を済ませるとようやく就寝する時間が近付き少女はソワソワしながらベッドの中へ入る。
「よし!今日は動画で見た曲を大勢の観客がいる中、ピアノを弾く夢を見るぞー!」
少女はベッドの中へ入り、早く寝る自分がこないかなと真っ暗な部屋で瞼を閉じる。ベッドに入ったばかりの時は楽しみで中々、寝る事が出来ないが次第に時間が経つとぼんやりとした世界に入る。
(あ!目の前にピアノ!周りには…)
夢の中に自分が待ちに望んだ世界が反映され少女は喜ぶ。周りを見渡せば満員の観客席が座り、違う所があるのならば指揮者とバイオリンが弾く人などオーケストラ形式になっている事だった。
(ん~。何かちょっと違うけど、ピアノと満員の観客席だから…良いか!)
指揮者が合図らしき者を少女に向いすると弾く番であろうと気付き待っていました!いわんばかりに堂々と動画で見たゲームの曲を弾き始める。自分が思い浮かべる直感で曲を弾くと少女の心は段々とゲームをプレイした時に流れた感情が入り、アレンジをつけ足していく。自分でも涙を流してしまう程に感情が入り、演奏でフィナーレを迎えると静かに弾き終える。満員の観客席の人々は立ち上がり、止まらない歓声に涙を流していた。
(うんうん、これこれ!)
少女は弾き終えると、ピアノから立ち上がり観客席から途絶えない拍手の中、お辞儀をする。そして、その場から立ち去ろうとした瞬間に視界がぼやけその先には眩しい光が見え始める。
「朝…か…」
少女はベッドの上で瞼を開けると太陽の陽射しが差し込む。眩しさの余りにすぐに瞼を閉じるがすぐに瞼を開ける。
「今日も良い夢みれて良かった!」
望み通りに近いが夢を見る事が出来、少女はすぐにベッドから立ち上がり学校に行く支度をする。
「ピアノはうちにないし、弾いた事も無いけど夢なら弾けて気持ちよかった!しかも、大勢の中!」
今日の夢の出来事を改めて思い出し少女は一人だで顔がにやける。良い気分で朝を迎えた日の事だった。
―――【3週間後】
少女は学校から帰宅し、机の椅子に座る。机の上には月間の少女雑誌が置かれページを捲る。
「やっぱり、空を飛んでみたいなぁ~…また夢で見れないかなぁ」
3週間前に購入した少女雑誌を再び読み返す少女。イラストには少女と同じ歳である主人公が魔法の杖で空を飛ぶ絵が描かれていた。読み返す漫画に妄想で世界観に浸り終えると本を閉じる。
「テレビで何かアニメでも観よ~っと」
リビングに向い、テレビのリモコンを操作しアニメを見れるアプリを押す。今日も両親が働いている時間帯で学校の帰りで唯一、一人の時間を堪能する。アプリが立ち上がると少女は杖で魔法を使うアニメが目につく。
「このアニメ何だろう?魔法を使うやつかな?見てみよ!」
気になったアニメをリモコンで操作しボタンを押すと映像が流れる。内容は魔法の能力があるが両親に隠れながら扱うものだった。アニメの主人公が部屋の窓を開け杖で空を飛ぶ瞬間に少女は立ち上がる。
「これ…良い!!私もこんな風に魔法が使えたらな~…夢で出ないかな!」
アニメの映像を一時的に止め、想像し世界観に浸る。窓を開け杖を投げてジャンプし飛ぶ映像を自分の姿に置き換えるのだ。
「でも、ピアノの夢を見てから思い通りの夢が見られないんだよなぁ」
少女は大勢の観客前で大好きなゲームの曲をピアノで弾く夢を見てから、自分がこうなりたい…と描く通りに夢に反映されない日々が流れていた。大きな恐竜に乗る夢を見たい!と思っても、小さなワニに乗っている夢や、ようやく夢を見れたと思っても1分で強制的に終わったりと、ここ最近はぱっとしない夢ばかりだった。
「今日は絶対にこの夢を見る!!」
少女は宣言すると、今日の睡眠が楽しみで仕方が無かった。そのままアニメを見続けていると両親が帰宅し、お菓子を食べ散らかしていたせいか怒鳴られ散々な夜を過ごした。
「よし!今日こそ、空を飛ぶ夢を見るぞ!」
部屋の電気を消すと、視界が暗くなりベッドの中へ入る。瞼を閉じると心の中で何回も空を飛ぶ夢を見れますように…と呟く。次第に心の中で呟く回数が減るとぼやけた世界に入る。
(今日、アニメ観た部屋だ~~!!)
目の前の視界にはアニメで観た世界観が夢に反映され、成功した事に大喜びする。周りを見渡すとアニメ通りに杖があり、机の上には沢山の呪文が記載された本が置かれていた。
(よし、早速、この杖を持って窓の外から飛ぶぞ~!)
部屋の隅にある杖を握ると、部屋の窓を開ける。杖の握りしめたまま、窓の枠に足をつけ、ジャンプしようやく空を飛べる待ちに望んだ時だった。
(あ、あれ…?)
窓の枠から少女はジャンプをしたいが、中々、足が思うように動かない。
(ジャンプしたら空を飛べるのに~!)
何度も何度も、足を動かそうと試みるが石のように固まったままだ。
(もうっ!次は絶対に動かす!)
少女は息をスーハーと3回吐く。心を落ち着けると少女はカウントダウンを始める。
(3!2!1!)
少女が足を動かす瞬間だった。明るい部屋の中、窓から見えるアニメの街が次第に暗くなる。光がある世界が段々と薄くなり完全に真っ暗となった窓からの景色から風が強く吹く。真っ暗だが、ここの景色には見覚えがある…この世界は…。
「私の…家の庭だ…」
少女は2階にある自分の部屋の窓の枠に足をつけ、まさに飛び出す瞬間だった。夢は程ほどに…と強く思った日だった。
夢の心地 虹凛ラノレア @lully0813
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます