第21話・王妃さまは忙しい?



「もしかして今日は、ボスコ公爵との昼餐会の日かしら?」

「そうです。これから皆で、中庭で昼餐を取るのです」

「それは良いわね。今日は天気も良いし、庭園の花も見ごろでしょう」

「お義姉さまも、ご一緒に如何ですか?」


 エリオ殿下が上目遣いに言ってくる。後ろに控えているリラを伺えば頷かれる。特に反対はないらしい。


「予定も入れてなかったわたしが加わっても、大丈夫かしら?」


 エリオ殿下付きの乳母や女官を見れば、彼女達からも是非にと、乞われたので、ちゃっかりお邪魔する事にした。


 庭園の中ほどにある背の高い木の下に東屋がある。そこにあるテーブルの上に、食事の用意がされていく。この国では昼餐は軽食となるので、簡単につまめる主にサンドイッチや、スコーン、マフィンなどが並ぶ。飲み物は紅茶。おやつにマカロンや、ショートケーキが出る。

 それらが用意されて、食欲を刺激されたのか「早く食べたい」と、アリアンナ王女や、ナザリオ王子が騒ぐ。  


 それを乳母や女官らが宥める脇で、エリオ殿下が「じゃあ、お義祖父さまが来るまで、あっちで隠れんぼしようか?」と、声をかければ、ナザリオ王子と、アリアンナ王女は「行く、行く──」と、誘いに乗って駆け出していく。その背を見送りながら、微笑ましい気持ちにさせられていた。


「兄妹、仲が良くて何よりだわ。可愛らしいわね」

「はい。わたくし達も皆、癒やされております」


 きゃあ、きゃあ子供達の楽しそうな声がしてくる東屋で、茶器のセットをしていた女官に話しかけると、笑顔が返ってきた。


「この子達が元気に過ごせているのは、あなた達のおかげね。いつもありがとう。子供相手に大変でしょう?」

「いえ。そんなことはありません。皆、殿下達が大好きなので」


 ボスコ公爵は、リチェッタ王妃の義父。下位貴族の娘でしかなかった王妃が、陛下の後妻となるのに身分が足りなかった為に、王弟であるボスコ公爵の養女となって陛下のもとに嫁いだ。その為、エリオ殿下達にとってボスコ公爵は義理の祖父となる。

 王妃の後見をしていることもあり、王子達を気に掛けて定期的に昼餐の場を設けて、孫達との交流を深めていた。


「この後、両陛下はいらっしゃるのかしら?」

「陛下は執務が片付いた後で顔を出して下さるとのことでしたが、王妃さまは何やら忙しく御用があるそうで……」


 王妃が忙しい? 何に忙しいの? 王妃の執務はわたしにほぼ丸投げだというのに? 王妃の普段の生活が気になった。


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