第18話・確執



「あれってどう思う?」

「そうですね。何かありそうですね」


 殿下に感じた違和感のようなものを、リラに投げかけると、彼女もどこか変だと感じ取ったらしい。


「それにしてもバスク子爵令嬢とは直接、話したこともないし、交流もないのに、どうして彼女がわたしの所にいるなんて、殿下は思い込んだのかしら?」

「あの殿下の事ですから、妃殿下が彼女に何か危害を加えたとでも勘違いしたとか?」

「失礼ね。そんなことしないわ」


 ミランが額に指を添えて言う。彼としてはテレンツィオの考えそうな事として発言しただけだが、実際にテレンツィオなら、そう考えかねないような気もした。


「妃殿下がそんな御方ではないことを、我々は良く分かっておりますよ。しかし、たかが阿婆擦れがいなくなったぐらいで騒ぎ立てるとは」


 ミランは顔を曇らせた。彼の発言から相当、彼女を嫌っていることが知れる。無理もない。リラは眉根を寄せた。


「このような騒ぎを起こすなんて。あの時、修道院送りにしておくべきでした」


 リラの発言に同意したくなる。わたし達3人と、ジータの間には確執がある。それにはある一件が絡んでいるのだけど、それは陛下が口外無用とした上で、隠蔽したので公にはなっていない。でも、それを目撃してしまったわたし達は、未だ嫌悪感が残っている。







 あれはわたしが、高等部2年生になった頃のこと。少しずつ公務も任されるようになり、学園の長期休暇を利用して、地方へ視察に向かうことになった。

 わたしが視察したのは、色ガラスの工芸で知られるフィンナンテ地方。そこにあるいくつかの工房を見学し、で職人の技を見学させてもらった。


 そこではお皿や、グラスなどの食器から、化粧瓶や、香水瓶。髪飾りや、首飾りやイヤリング。指輪などのアクセサリーも作っていた。

 そこで同行したリラ女官長や、近衛隊長のミランの勧めで、いくつかお土産を買い求め、王家所有の別荘である古城に着いたら、何だか使用人達が騒がしかった。


 どうしたのか聞けば、先触れもなしに王太子殿下が友人と共に訪れたのだと言う。この古城には半年前から、わたしが滞在する事は決まっており、陛下から認可が下りている。古城の管理を任されている執事が確認の為、陛下からの許可の有無を訪ねたら、罰が悪く思ったのか帰っていったそうだ。


 しかし、殿下は宮殿に帰ったのではなく、近場の亡き王妃さま所有の別邸に移っていたようだ。そこで友人らと乱痴気騒ぎをしていたらしい。その別邸を管理している老夫婦が手に負えないと、古城にやってきて言うので、リラと、ミランや腕に覚えのある近衛兵を引き連れて見に行った。


 するとわたし達の訪問に驚いたのだろう。慌てて殿下が出て来た。


「る、ルーナ。リラ」

「ご機嫌よう。殿下」




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