第4話
次の日、極秘でエドナはロボットに搭乗することになる。仲間外れは良くないということで、カドルクも同行し、戦闘機で上からそのロボットを見ることになる。
外は少しは曇っていて、何やら不穏な気配を感じられなくもない天気だった。
「ここがそのロボットというか、オルヴァが収容されているところか……!?」
「これが……オルヴァ……」
エドナとカドルクは目にする。これが秘密裏に作られていた物なのかと、紺色でロボットの瞳は赤。何やら味方か敵かと言われれば、敵の機体だと思わせるような見た目。オルヴァの片手には何やら、切り裂くための長い刀のようなものが持たされてあり、そのもう片方には銃のようなものが。
「よく来てくださりました、この日を待ちわびていました」
「久しぶりになりますね、メンビス・パルマーツ」
面識のあるエドナはオルヴァを開発したメンビスに挨拶をするので、後ろからカドルクは置いていかれるのが不愉快なのか、眉間にシワを寄せながら、メンビスに挨拶する。メンビスはベージュ色の髪に、薄紫の瞳をしていた。そして、高身長であった。
「初めまして、メンビス。妬けちゃうねぇ、なんで俺も誘わなかったんだよ、俺はこのエドナの右腕なんだぜ?」
「それは失礼しました。ですが、アッカドから貴方の機体も作るので、それで帳消しにしていただきたい」
「へぇ、それは楽しみだ。俺はコイツの援護が出来るような機体なら満足だから、そういうのに特化したのにしてくれよ?」
「えぇ、それは勿論。ですが、守るだけではなく、自らも行動できるようにしますので、ご安心を」
メンビスは挨拶を済ませれば、機体の搭乗の部分を開錠し、乗るための階段に足を伸ばすため、エドナはメンビスの後を追う。カドルクは下で高みの見物だった。
「貴方様の特性に合わせているので、その、この機体は二つの顔を持ちます。と言うより、あのカドルクは貴方がそういう持ち主だということは知っているので……?」
「いいえ、ですが、勘付いてはいるとは思います、いずれカドルクには俺の話をするつもりなので、ご心配なく」
「そうですか、では、心置きなくこの機体を扱えることでしょう」
後ろを振り返り、メンビスはニコリと微笑み、どうぞ、とエドナに乗るように促せば、エドナは一歩踏み出し中へと入れば、ヘルメットが置かれているため、被る。近くに説明書も置いてあったので、エドナはそれを片手に取り、ザッと読む。
「説明書に読みながら、少し歩いてみましょう」
「了解した」
階段をメンビスは下り、カドルクのところに戻れば、カドルクはメンビスの肩を軽く叩く。
「なぁ、あんた。これを秘密裏に出来ると思うか? 俺は出来ないと思うんだが」
「それはそうですね。やはり、外へ出て動く必要性がありますし、この狭い部屋の中では上手くできないと思います」
「ま、歩くくらいは出来るはずだ、俺はここから見させてもらうぜ、オルヴァというやつをよ」
ニコリと笑んではカドルクはメンビスから離れて、壁に背中を付けて、オルヴァを見つめている。メンビスも見守るようにオルヴァを下から見上げている。
「これが操縦するレバーだな、それでこれを踏めば……」
数分で歩行に必要なレバーや、踏む装置を覚え、エドナは目の前の画面を見つめては説明書を置き、深く息を吸い、吐いて、レバーを引く。
「っ……!」
レバーを引けば、重いオルヴァの第一歩が動く。それを見てはカドルクは「おぉ〜」と声を上げる。メンビスもほっとしたような表情をして、何も異常はないかと、周囲を見渡すが、何もない為、多分、順調なのだろう。
その頃、隣国のキェシェルドではエースパイロットであるザンハがリベンに搭乗する日であり、アッサドにあの赤い機体がいるかどうかの確認もあって大忙しだった。
「本来はこの俺が赤い機体を見つけだし、撃ち落としたいところだが、そうはいかない。この俺ではないと動かせないリベンに乗らなければならないからな」
「このエッジ・ウェムがザンハ様の代わりに赤い機体を見つけて報告差し上げますので、暫し待っていてください!」
「健闘を祈るぞ、エッジ」
青い髪にルビー色に輝く瞳をした少し小柄なエッジ・ウェムはザンハを敬愛していて、敬礼をし、踵を返して、大変危険な任務へと向かって行った。
「さて、俺は俺の役目をしないとな」
「期待しているよ、ザンハ」
「えぇ、何としてもモノにし、あの赤い機体を撃ち落として敵を取りに行きます!」
ノイジュに敬礼をザンハはして、自分が乗るリベンの収容されているところへと足を進めた。ロックの掛かった扉をノイジュが開けて、足を踏み出せば、そこにはゴールド色のロボットがあった。戦闘機と変わらない色に、ザンハは目を輝かせた。
「これは……! ハハハハハッ、ノイジュ隊長、この機体を見る限り、俺は負ける気がしませんね」
「それはいい傾向だ。だが、まずは乗りこなせなければ話にならない」
「えぇ、ではリベンがどういうものなのか、確かめさせて頂きます」
高笑いをしたあとに真面目な顔つきをして、ノイジュを追い越し、階段を上り、中へと搭乗する。中にあったヘルメットを装着し、近くに置いている説明書を手に取り、読み始めた。
その頃、赤い機体はキェシェルドの遥か上空にいた。何故そこにいるかは企みがあるからで……。
「はぁ、まだかねぇ、敵のロボット? っていうやつ。もう地上へ下りて、撃った方が早いと思うんだけどなぁ」
「やめろ、勝手な行動は慎め。そうでなければ、計画が台無しだ」
「それは知ってる。だが、敢えてやべぇ方向で妄想するだけならいいだろ、愚痴くらい吐かせろよ、なぁ」
赤い機体の搭乗員は上司のような相手に対してグチグチと言うため、上司は呆れた様子で通信機越しに見つめる。
「そういえば、キェシェルドのところからアッサドに向かったやつがいたけど、ソイツは殺すか?」
「いいや、キェシェルドが気付く前にお前がキェシェルドのロボットと会え」
「ふーん、殺さねぇんだな、つまんね。ま、いいけど、どうでもいいしな。で〜、まだかよ」
通信機の画面に近寄り、苛立ちを見せる部下に上司はまだだと首を横に振る。チっ、と大きめに舌打ちをする部下はつまらなさそうに空の雲を見つめるのだった。
人格のオルヴァ 零 @azaayumi
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