食べ過ぎ注意
西順
食べ過ぎ注意
受験と言うのは長い戦いだ。スポーツなどに全力集中していた人でなければ、三年生になればもう受験を意識して勉強を始め、早ければ一、二年生の段階から少しずつコツコツと勉強を始めているものだ。
そんな受験生にとって大事なものは何か。そう、勉強のお供、おやつだ。
☆ ☆ ☆
高橋くんは勤勉な受験生である。塾にも通い、帰ってきてからも勉強をしている。英語のリスニングに元素記号の暗記をして、数学問題を解く。受験勉強はとかく覚える事、やるべき事が多い。集中して勉強していれば、二時間もすれば脳は疲弊して使い物にならなくなる。そんな時に必要になってくるのがお供である。
☆ ☆ ☆
脳と言うのはブドウ糖しか栄養に出来ない。ブドウ糖は米やパンなどの炭水化物にも含まれているが、素早く摂取するなら、やはり砂糖だ。なので砂糖を含んでいるお菓子をお供に、勉強をするのが望ましい。
代表格はラムネだろう。飲み物のラムネではなく食べる方のラムネだ。ラムネは殆どがブドウ糖で出来ていて、脳への栄養補給としてとても優れているお菓子である。
続いて甘いお菓子の代名詞と言えばチョコレートだろう。砂糖が含まれているのは勿論、チョコレートに含まれているカカオポリフェノールには、血流量および認知機能をアップさせる効果があると言う。
ガムも良いだろう。噛むと言う動作には、脳の働きを活発にさせる効果がある。
ミントタブレットもその清涼感がリフレッシュや眠気覚ましに良いので、夜の勉強に向いている。
お菓子ではなく果物なんてものもアリだ。糖質以外にも栄養素が含まれており、疲労回復や貧血防止などの様々な効果が期待出来るからだ。
果物ならばやはりバナナだろう。バナナには三種類の糖質が含まれており、それぞれ吸収速度が違う為、長時間糖質を吸収していられるうえ、少なくなると集中力と理解力の低下を引き起こす鉄分が含まれているのも嬉しい。
☆ ☆ ☆
このように、世の受験生を持つ親は、子供の栄養にも気を配っているのだが、高橋くんは甘い物が好きではない。口が受け付けないのだ。では何を受験勉強のお供としているかと言えば、
コンコン。
「おやつを持ってきたから、少し休憩にしたら?」
高橋くんのお母さんが、お盆に高橋くんの今日のおやつを持って部屋に入ってきた。
「ありがとう。そこに置いておいて、食べながら勉強するから」
一瞬だけお母さんを振り返った高橋くんだったが、すぐに机に向かって勉強を再開する。
「あんまり根を詰め過ぎちゃ駄目よ」
そう言いながら高橋くんのお母さんが机に置いていったのは、麦茶にそれぞれ小鉢に載せられたミックスナッツ、煮干し、イカの塩辛であった。
酒の肴のようなラインナップだったが、糖質はミックスナッツから摂れるし、煮干しにはDHAなどの脳に良い成分が含まれている。イカの塩辛は? と思うかも知れないが、イカにはタウリンと言う疲労回復を助ける成分が含まれているのだ。塩分過多にならないように、ミックスナッツと煮干しは無塩のものを用意しており、中々に優れたラインナップと言えた。
高橋くんは左手で箸を持ち、それらをちょっとずつ口に入れていく。勿論右手にはペンを握っている訳で、何とも起用な食べ方であった。
☆ ☆ ☆
こうして日々勉強を続けて、無事に志望大学に合格した高橋くんは、大学でも勤勉に勉強を続け、有名企業に入社。会社の先輩が開いてくれた歓迎会で、自分が一滴もお酒を飲めない、下戸である事を知ったのだった。
食べ過ぎ注意 西順 @nisijun624
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