第45話 私も欲しくなったの・・・。はい、頑張ります。

「ギャー!」

 赤ちゃんこと第二王女は、伯母であるラグエラが抱くと、天地崩壊、悪魔の襲来かのように、泣き叫んで止まらなかった。慌てる彼女から俺が代わって抱くと、うって変わって、にこにこ顔、すぐにすやすや寝息をたて始めた。ちなみに、第一王子の時も同様で、彼女はリベンジに失敗したのだ。彼女は呆然、彼女だけでなく王妃付きの侍女達も呆然自失だった。

 国王陛下、王妃殿下だけでなく、悪友達も笑いを堪えるのに必死だった。

 悪友達は皆身分があがった。ミシャ侯爵、アンドロ侯爵、ダルタリナ子爵という風に。ミシャとダルタリナは、ドラとアンは、俺の後を引き継いで、辺境領知事と副知事に、アンドロは、マリウスは近衛師団長となっていた。功績には領土をという時代ではないし、財政難である。形式的な身分、役職、そして報奨金などによらざるをえなかった。それでも、かれらは領地の復興資金が一応出たということで、収まるしかなかった。俺もそうなのだが。

 ペリアル大公に加担した貴族がかなりあったことから、その身分、領地剥奪もかなりあったとこから、貴族の数がかなり減った。大公家が四家から二家に減ったこと、内戦の戦費負担、復興費用で王家、政府の財政はさらに悪化、市民に支えられなければならなくなり、進歩派、市民層の力は強まり、ミカエル国王陛下の進歩的政策はスピードが増すことになった。ただし、旧ペリアル大公領などを先進的制度の実験場としようとするトンデモ主張は、俺が中心になって潰したので、俺の悪評はしばらくひどかった。もちろん、俺の秀吉達は俺と同意見だった。無理偏のつく成功の字はないのだ。これは、前世でのかなりマイナーな漫画の一節の受け売りである。その地に根ざした、制度、進歩があるのだ。


 ちなみに、我がセーレ大公領は、俺の田沼意次の獅子奮迅の手腕と領民の努力で、生活が苦しくなった、あんなにつくしたのに、と不満が出るようなことなく、早々に復興、成長を始めるにいたった。でもね、俺は邪魔はしなかったけど、何にもやっていないんだからね。


 善良なミカエル国王陛下は、相変わらず悩み、迷い、迷走しかけて、アナフィエラ王妃をはじめとする俺達を翻弄してくれた。まあ、最後はアナフィエラ王妃とラグエラが並んで、陛下を叱咤することで終わることが多かった。本当に、息の合った姉妹コンビになったものだ、と感心してしまう。それに絶対従う、最後はという、国王陛下、ミカエル様は実はすごい奴なんじゃないかと思う時もある。


 そのラグエラが、血相を変えて、俺と秀吉が話しているところに乱入してきたのは、

「わ、私もそろそろ、こ、子供が欲しくなって…や、やっぱり早く跡継ぎをと言う者も多いですし…ですから、その…。」

ともじもじしながら言ったので、

「とはいえ、やることは十分以上に…そろそろ一段落するから、休みをということで風光明媚な自然に、溢れるところで…二倍も、三倍も頑張って…。」

と言ってやったら、

「もう、そのような恥ずかしいことを…。」

と可愛らしく拗ねるようにしてから、しばらくして、その目的での休暇旅行に出発する前日のことだった。

「こ、これを見て下さい。恥ずかしいったら…。ハムスター顔、あんた、一体なんてことをしてくれたの?」

 差し出された紙の束をとってざっと読んだ俺は、頭がパンクして、

「俺は、こんなことやあんなことまでしなければならないのか?しかも、明るいうちから?」

と間抜けなことを口走ってしまった。

 それは、セーレ大公夫妻が、領地の視察旅行という名目で、その間、風光明媚、自然が溢れ、子作りに効能がある、御利益のあるところをまわり、その効用のある郷土料理を堪能して…、まあ、ここまではいい、その後だ、いろいろな営みの方法が列挙され、それを実行しようということを計画していると書かれている。


 確かに、この旅行の広報というかを、少しは面白おかしく、周囲が楽しむような内容でと、命じたのだが…。


「いや~、国民が皆喜び、明るくなり、我がセーレ大公家に親近感を持ってもらい、安心して、かつ、人口増に寄与するものにしようかと…。では、こういうことはなさらないのですか?全て回収して、焼却処分に…。」

とニヤニヤして、窺うような表情。

「もう、ばらまいてしまってしまったものだから・・・しかたがないですわ…それに…。」

後は小さな声になった。これも、Mが出たか…。


 結局、それを熟読することになった俺達は、最初の宿泊地の別邸で、

「汗の匂が…。」

「君が抱きついてきたんだろう?」

と陽の高い内から、雄大な山々を見ながら、激しく、秀吉の創作を熟読した成果で…と云うことになった。

 そして、そのパンフはアナフィエラ王妃から庶民にいたるまで、熟読の対象になったらしい。人口増につながったかは分からないが、その旅行後しばらくして、ラグエラの妊娠が分かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る