第43話 俺が悪いのだろうか?

 旧ペリアル大公領の戦後処理の責任者にされてしまった。自分の領地の復興も必要なのに、迷惑千万だ。

 国土のほぼ全てが、戦場になったから、国が、国民が大きな被害を受けたわけである。原作の通り、婚約破棄された悪役令嬢が辺境大公と結婚して、ざまあして、そして、俺が初期に暗殺されていたら、もっと被害は小さかったはずだ、原作通りなら。俺は、自分が生きのびるために、多くの人を殺したことになる。


 いや、あいつのやり方、あいつの統治・・・自分が、民のために、奴は信じていたろうが、全てをやる、偉大な看守が一人いる巨大な牢獄のような国がいつまでも続くはずはない。社会の進歩は止められない。社会の進歩と奴の帝国がぶつかって、社会の進歩が勝利を得るまでに、はるかに大きな災厄がもたらされるだろうな。


 もしかして、ラグエラを得られると思った時に、彼らは変わったのかもしれない。それならば、彼女の婚約破棄がなければ、全ては万々歳・・・にはならないな。 それを回避するために、俺はかなり努力した、少なくともしたつもりだが、婚約破棄になってしまった、婚約破棄イベントが起こってしまった。やんわり言っても、ラグエラが困ったちゃんであることを気が付かなかったせいもあるが。

「もしかしたら・・・あいつら、予想していたのではないか?」

 俺は、その時自分でつぶやいて戦慄してしまった。

 たしかに、ラグエラとミカエル様との不和は噂になっていたから、予想していたかもしれない。それでも・・・もしかしたら、ミカエル様とアナフィエラの関係も?やつらならつかんでいたのかもしれない。そう考えれば、あの場所での行動、完全に予定していたと考えれば納得がゆく。その彼らが・・・、どうして?俺のせいか?俺が混乱因子だったのか、彼らにとって、この世界にとって?すると、世界は俺によって混乱させられたのか?不幸にしてしまったのか、俺は。


 まあ、そんなことはどうでもいい。とにかく俺は生き残ることができたし、この可愛いSでМな悪役令嬢を妻として、愛でることができたわけだから。


 ベリアル大公の遺子には、南部の豊かな地域の一部が与えられ、ぺリアル大公家を存続させることになったが、それとて将来のことで、占領したぺリアル大公領、もとい旧ぺリアル大公領の統治、安定化するまでの間のことだが、も俺に押し付けられた。

 ファーレ大公の爺さんが国家宰相、これは名誉職みたいなもので、実際の政務は宰相が担うのだが、その宰相ともども、俺の北辺領統治も議会の承認の形をとった。これが慣例の始まりになるだろう。ぺリアル大公とは違うところを演出させたわけだが、まあ、これは俺がアナフィエラ王妃を通じて国王陛下に提案したものだ。


 この種の統治は難しい。下手をすると、ベトナム、イラク、リビアのような泥沼化することが多いものだが、心配したほどではなく、比較的早期に安定化してくれた。俺ではなく、俺の部下達のおかげである。


「あなたは、何人愛人を作っているんですか?」

 ラグエラが半ば怒り、半ば呆れ、半ば諦めながら怒鳴ったのは、もちろん俺に対してではない。でも、俺が愛人を作ったら、こいつどうなるかな?Мがでるか、Sがでるかと好奇心がでた。でも、こいつの可愛い顔を見ていると、そんな気は起こらないが。秀吉のことである。

「いや~。え~とですね・・・。」

 ハムスターは、アルフスは人懐っこい笑顔を浮かべて、困ったような様子で数を数え始めた。折る指の多さに怖くなったので、

「何人いるかは聞きたくない。地位や権力で強制したことはないだろうな?ちゃんと最後まで、決して全員疎かにするな、大切に面倒をみるんだな?」

「公爵閣下。もちろんであります。強制はしてませんし、皆いつまでも大切に、愛し、疎かにしません。まあ、大公閣下の奥様を愛するほどには喜ばせることはできませんが。」

と言って、直立不動で敬礼しやがった、しかも真面目な顔をして。これ以上言うのは止めにした。

 彼には、北辺領全域の統治の総括を行わせている。でんと中心地に構えているわけにはいかないし、こいつの腰の軽さから各地に赴き、その先々で愛人ができている。

 その下に、公都とその周辺地域の統治は、クロンバッハ、武市半平太に、草原地帯はララウロス、義経に、各地域での調停、調査等にヴァイツェン、中岡慎太郎に、南部の豊かな農業地帯はキメり、武蔵にまかせた。みんな期待以上の成果を上げてくれている。適材適者・・・にしたつもりだ。まあ、半平太も慎太郎も武蔵も、信望を集めて人心を安定させているだけでなく、地域経済、社会の安定、復興も進んでいた。義経もそうだったが、彼のかたわらにはウィネが常に付き添っていた。付き添っていただけでなく、付き添っていたというよりは、イチャイチャしていたと言う方が正確かもしれない。


 そして、草原地帯の視察に行くと、しっかり社会は安定、治安はいいが、決して抑えつけられているところはなく、民衆の生活は活気があった。統治の才能は、彼にも十分あった。あの源義経だって、京都の治安とか、そういうところには手腕があったらしい。俺の義経も単なる優れた軍人というだけでない。そして、正真証明のイケメンである、やや小柄だけど。源義経は、色々あるが。

「あ、あなたまで・・・まあ・・・その顔だし・・・。」

 傍ら馬上のラグエラが絶句していた。ララウロスの傍らにはウィネ・・・と・・・だけではないのが二人。

「統治の報告の後、そちらの事情もゆっくり訊こう。」

「はい。包み隠すことなく、全てご報告いたします。」

と真面目な顔で答える ララウロスだった。結局、強制ではなく、最初は彼は断ったのだが、ウィネの場合と同様に、異なったのは、

「私には、ウィネがいるので。」

と言ったことだった。しかし、最終的には押し切られた。真面目な顔で、明瞭に、悪びれることもなく、正々堂々と説明した。

「分かった。彼女達を大切にしろよ。」

「もちろんであります。夜も大公様の奥様に対するものと負けないくらい愛します。」

 もうなにも言えない、ハムスターのアルフスとは別の意味で。

 ちなみに、3人とも争いはなく、仲良くしている、彼に協力、全身全霊で。


「あ、あなたは大丈夫よね?ゆ、許しませんからね!」

 ラグエラは、その夜、北方遊牧民の豪華な天幕の中で、俺の上になって、喘ぎながら念押しした。何度も。俺がハーレムを作ったいる未来を想像して、勝手に嫉妬し、怒って、俺を責める。Sの彼女。同時に、ハーレムの一人になってしまった悲しみに打ちひしがれることを思って快感を感じている。このМめ。こんな美人で、面白い、可愛い女以外を愛する余裕は俺にはない。


 クロンバッハ、ヴァイツェン、キメりは、この心配は全くない、ふしぎなくらいに。こいつらは、妻一筋である。


 俺の本来の領地も、色々な意味で内戦の被害を大いに受けた。その復興も大事なのだが、こちらはヴェイゼン、俺の田沼意次だが、がうまくやってくれている。周辺の地域の復興にも協力して成果を上げている。


 そして、俺はアンドラス、からくり義衛門、リエス、葛飾北斎、オリアス、小野友五郎、らとともに、北方辺境領と自分の領地を行ったり来たりしている。俺は、移動しているだけだが、こいつらは復興に大いに貢献している。


 ゴモリとオロバスは、辺境領、王都、俺の領地と動き回る俺とラグエラのあらゆる面の側近、秘書、広報官、その他を担っている上に、ラグエラが父親に与えられた領地の管理も担い、各地の情報収集、あらゆる交渉までになってくれている。ㇺルは、俺の近衛隊司令官として、先発から後方警備など飛び回ってくれている。彼女らのおかげで、俺がなんとかセーレ大公、辺境領総司令官をやっていけているのだ。こいつらも、ちゃんと結婚した、旦那たちの苦労がしのばれる。


 みんな、みんな、あいつらがやっていることであり、俺は、別に何の役にもたっていないのである。



  

 

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