第27話 そんなに私に執着してるなら・・・やっぱりだめね。
まったく、さすがに私の夫が選んだ女達だと思うわ。オロバスは私の実家の領地出身で父が採用して私のところに送ってきたけど、彼女をこの地位につけたのは、夫のラミエルなのよね。
黒髪の3人の女。私とラミエルの武装侍女長、書記、護衛という名目だけど、それにはとどまらない役割と権限が与えられている。悔しいけど、それも全てラミエルのやったことなのよね。そして、この3人、本当に驚かせる連中なんだから、なおさら悔しくて仕方がないわ。
それぞれ持ち味は異なるけど、戦闘力はかなりなものだし、サロンでも、領地経営でも、対外交渉でも、大いに力になってくれて助かっているのよね。
でも、戻ってきたラミエルと今後の戦時下での領地経営で話あっていると不安を感じてしまう。あらためて、アナフィエラのように、弱気な国王陛下を優しく叱咤激励、宮廷内を奮起させ続けて、全くゆるぎなく、一貫して孤軍奮闘する姿には感心してしまうわ。流石に私の義妹。彼女を邪険にした過去の私、反省しなさい。
領地は、彼が事前に予見、心配し、準備を命じたことで、天候不順の影響をあまり受けず、順調ではあったし、兵備の準備は進んでいる、充実していると言える。でも完ぺきではないわ。未完成の砦、要塞の改修は、兵器の進歩で過去の物になることを恐れ、常に見直し、ここぞという時に一気に仕上げることにしていたし、野戦陣地の構築も進められるようにしてはいた。それが、今、現実に動いている。しかし、計画が完璧に、予定通り進むはずはないのよね。いたるところで遅れが生じている。戦時の領地の計画を入念に見ていくと、不安を感じるところはいたるところにあるわ。それがわかる。その上、そのセーレ大公領は非常事態の態勢にはいって、ファーレのおじい様も非常態勢を命じているけど、国軍は、国は一部しか進んでいないのよね。ぺリエル大公や近隣諸国はもう入りつつあるというのに。遅すぎるのよね。私達が、私達だけでしばらく持ちこたえないと、持ちこたえて時間を稼がないと・・・。それができるかしら?
勝てる?ぺリアル大公が、私にあれだけ執着しているのなら、私が彼のところにいくことで和解が、和平が成立できるかも?私が説得して・・・ベッドの上で・・・、説得が無理でも・・・とにかく私は助かる・・・。
え?何、その捨てられた猫が、子猫がお姉さん、拾ってくれニァ、助けてくれニャというような目で見ないでよ、ラミエル、だんな様。ちょっと思っただけよ。思ってもいないわよ、可能性を考えてただけよ。
「ぺリアル大公は、よほど君に執着しているようだね?」
ぎくりー、読まれている?
「手に入れられなかったということ・・・そして、君の利用価値・・・どちらも彼にとっては大きいんだな。」
なによ、それ?私自身には関心ないってこと?多分私は、かなり不満そうな顔をしたのだろう、彼は察したようで、
「そりゃ、もちろん美人の君には関心を持ってるさ、体が目当てさな…。それ以上に、その君を手に入れられなかった悔しさが大きいな。」
あまりフォローになっていないわよ。
「それで手に入れたら、どうなるの?どうするつもりだと言うの?」
私は、思わず身を乗り出しちゃった。彼は、一寸怖い顔、怒っているというようなのではない、になって、
「もうそれで満足、後は利用できるだけ利用するだけさ。もう既に、他の男に汚された女なんか愛でるつもりはない…そんな奴だ。」
「汚れたなんて、失礼じゃない?」
「僕がいっぱい、溺愛したからね。これ以上ないくらい。あ、これは、これからも変わらないからね。」
「もう…。分かったわ。あ、どこまで話を進めていたかしら?」
「領民の子供達の避難先だよ。」
その子供たちも、物心ついている歳になっている者は、男子も女子も自分達も戦うんだと騒いでいるのだが、事前に避難先、そこでの生活の手段を用意しておかなければならない。領内のどこも、戦場になるのだから、彼は言う。う~ん、私も知恵を絞って応えてやるわよ。まあ、既に詳細計画が立てられていて、既に実施しているところなのよね。ただ、やっぱり実施すると問題が出てきて、日々微調整が必要になってくる。その検討案も作成されているけど、最後は私達で決定しなければならない。そのまま了承、はい押印ですむ場合も多いけど、私達が決断、どれをとるか決定する必要なことも多い。特に、直轄領、荘園のことは、私達が決定する比重が高いのよね。だから、二人して、う~んと唸ると時が多いのよね。
セーレ大公領といってもラミエルが全て所有権を持っているわけではないの。大公として、その領地内に大きな権限をもってはいるけど、決して一様ではない自由都市もあれば、領民の私有地もあるし、共有地、公有地もあり、大公家個人としての領地、荘園もあれば、大公としての公的な土地、施設、資産等があって複雑。大公領としては行政官局、議会(民会、元老院、枢密院)、と裁判所がある。荘園内は、地区ごとのコミューン、家政部があり、それから・・・と結構面倒。それぞれの段階で、私達が果たす役割、対応は異なる。実家や祖父ファーレ大公家は、単純というか、大雑把というか、ちょっとというか、かなり古い、平均より進歩的だとは思うけど、体制。領民も、議会も煩い。ただ、王家、国家の近衛だと物心ついた子供、男女ともに任じているここは、ある意味単純だけどね。軍事組織だけは、統一的に組織化されている、セーレ大公のもとに、国の近衛、王家の近衛として。それも、ちょっと怖いくらいだけど・・・。その頂点にいるラミエルは・・・。
「どうかしたかね?君を溺愛している男の方がずっといいということを再認識したかね。」
ふん、いいわよ。私の素晴らしい体を、た~ぷり心から堪能させて、ひれ伏してあげるから。
その夜、彼は月光の光の下で私の裸体を鑑賞して、
「すばらしいよ、ラグエラ、私の妻、セーレ大公妃。君を、そのように呼べて幸せだよ。ぺリアル大公だろうが、誰にも渡したくない、渡さない。」
と賛美するように言って、私を抱きしめた。勝ったわ、思ったわ。でも、それからあらためて口付けをしようと、見えた彼の顔は、表情は、狂気を感じるくらいに怖かったわ。負けないわよ。私は、彼に負けまいと強く口を吸った。そして、この後激しくぶつけあったわ。
それなのにどうして、
「負けたら君は、あいつの女達に八つ裂きだよ。あいつは命令はしないだろうけど、彼女らを止めはしない。あ、彼のところに走っても、最後は同じだよ。だから、僕と勝とう、それしかないんだよ。」
と耳元で囁かれて、お尻を、軽くだけど何度も叩かれて、
「ヒェーン」
と涙を流して、その後やっぱり涙を流して、
「わ、私を守って・・・あなたと共に生きます~。」
といってしがみついてしまって・・・最後は、
「素晴らしいよ。」
と囁かれて、耳元を甘噛みされて、
「ふぇーん。」
と喜んでいるのよ~! 私ったらー!
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