第21話 その前夜?②
「また、私の・・・我が家の謀反の訴えか?」
俺は、報告書を読んで思わず唸った。いろいろな人間が、あらゆる階級、階層から王家、政府に訴え出てくる。いや、議会でも、下院、貴族院、枢密院でも、そんな発言をする連中がいる。政府の要職についている者も、度々上申する、俺の謀反を。流石に、国王陛下の側近にはいない。アナフィエラ、俺の元婚約者である王妃様が、そんな奴を側に置くことを許さないし、そういう連中を即座に見抜いてしまうからだ。それはいくらか俺の為ではあると思うが、お義姉様、ラグエラのためである。彼女が、ラグエラが俺の妻でいることを幸せだと考えているからだが、大変ありがたいことだ。
この全てにはベリアル大公がいる・・・いるはずだ。だが、それは半ば彼ら自身の自由意志、彼らがあいつに期待し、あいつを信じているからの行為なのだ、上は大貴族から下は浮浪者までだ。そういうものが彼にある、そのことは認めざるをえないだろう。何度も会ったが、奴の圧倒的なカリスマ性やオーラを感じた。執拗に調べてきた奴の事績、行動から奴の優れた能力などを感じていたから、わかるのだ。
しかし、アナフィエラ、王妃という防壁もさることながら、その声、人間の数は少ないと思う。俺のことは原作にはないからわからないが、この程度で国王陛下、ミカエル様が動かなかったろう。
だから、彼の反乱が起こるまで半年に迫っているのに、俺が今こうして生きているのだから。
これもラグエラが俺の物になったおかげでもあるな。彼女への同情、理不尽な婚約破棄をされたということで、それが大きかったな。
ラグエラとアナフィエラの義姉妹の王都でのサロンは、多くの人々が集まった。ベリアル大公の王都でのサロン、王都での愛人、少女に近いと大公領から連れてくる愛人のサロン、競うように頑張ったが、歯が立つものではなかった。あいつは、自分に都合の良い世論を作れなかったのだ。サロンは基本的には上流社会の社交の場ではあるが、そこに新進気鋭の市民出身の哲学者、芸術家、科学者、時には技術者も呼ばれるし、上流市民だけでなく中流階級も招かれる。そういった連中から世論に影響力が働く。ぺリアル大公は、その面で完敗しているのだ。
辺境の田舎女達やあんな小娘じゃラグエラとアナフィエラに太刀打ちできるはずがないだろう。あの二人、頭はいいし、王都の洗練された社交社会をよく知っている。そもそも俺の妹、従姉妹、叔母達ですら太刀打ちできない。あの熊女は、そちらの方は疎いし、何といっても、秀吉や義経、儀右衛門、北斎、武蔵の敵じゃない。大体、市民の思想家とかは、ペリエルには本来相容れるものではないからな。
愛人達どころか、子供まで…、死に別れとはいえ…。考えて見れば、原作は言及してないが、当然、子供の時に婚約者が決まっていたはずだよな、俺達と同様に。大体、横から取る辺境公とか隣国の王子とか、まだ独身でも、婚約者はいるはずだよな。ラグエラが原作通りにあいつのものになっていたら、やっぱり幸福になんてなっていなかったよな。
後は、勝つだけなんだが…勝てるか?戦力差は…、うーん…。これが…。うちの議会も、領民達も、ラグエラですら、意気軒昂、いや意気軒昂過ぎるくらいだけど…どうなるか?奴の行動は分かってはいるが、臨機応変に動くだろうから、原作知識があっても万全ではない。国力を上げて対峙すれば、圧倒的に有力だが、大公家の一つがあいつにつくし、貴族の一部、三位一体教会、聖典至上主義教会、運命決定論教会の強い地域も…、それに外国軍…。単純計算では劣勢になる。何とか、隣国の軍を国境付近で防御に徹して抑えて…それには、我が家の城塞、野戦陣地が重要だな。
ん~、やっぱり火力、銃砲とその砲弾と火薬だな。山あり谷あり川あり、そして火山、森ありの領地だから、硫黄、木炭は何とかなった。取り過ぎ、濫伐はせず植林もして…。硝石がない、硝石の産地がない。だから、人工硝石造りに躍起になってきた。それは全て、先代より前からやってきたことだ。俺がやったのは、生産管理、効率的な植林、そしてより進歩的な人工硝石の製造方法の導入、効率的な製造だった。不十分な知識で、後は秀吉や儀右衛門達に丸投げしたが、彼らのおかげで何とかなっている。銃砲弾、銃砲は、一部は原料鉱石~完成品の工程があるが、大なり小なり、購入しなければならなかった。それも、何とか秀吉が上手くやってくれた。この世界一と言える銃砲も儀右衛門のおかげで、何とかなった。その製造も、秀吉、儀右衛門のおかげで順調にいっている。あ、小野の科学、数学知識も役にたったな。
しかし、初期の燧石銃砲、そして、基本的にはどんぐりの背比べで一番なだけで決定的なものではない。数だって、装備率だってそうだ。数で圧倒とはできない。
勝てるだろうか?あ~、逃げて一市民になって…の方がよかったかな?負けて捕虜になったら、拷問の挙げ句、尻から槍を突き刺され、さらに八つ裂きに、ゆっくりと…、だよな。怒らせることいっぱいしたからな、しかたがなかったけど。あー、過去に帰りたいよー!
そんなことはできない…。ラグエラは、本当に殺されるだろう。いや、一度は迎えられて、抱かれて、寝取りの満足のためと政治的な利益のために…絶対あいつは、それを見せつけながら俺を処刑する。そして、彼女は…他の男に汚された女を寵愛するような奴じゃないし、あの熊女も…、男性経験豊富な女も愛人にしているが、それとは違う…そしてよくて毒殺だな。陛下も王妃も処刑…アナフィエラは、もう他人の妻だが、なんせ一番親しくしていた異性だったし、美人で優しかった…、陛下はいい奴だったし…、惨めに殺されなんて見たくない。悪友達も、俺の秀吉、カラクリ儀右衛門、北斎、小野、田沼達も…。
それに、もう俺が動かしてしまったんだからな…。
大体惨めに処刑されたくない…それに…このラグエラを渡したくない…。
俺は、尻を軽く叩いただけで、反応している全裸姿の彼女を見ながら、そう思っていた。
「あ~ん。」
ぴくぴくして快感を感じて腰を動かし、体をひくひくさせているラグエラは、感極まった喘ぎ声をあげた。
"主導権をとるんだという時とは正反対だな。あれもいいが、こちらもいいし可愛いな。"
「可愛いよ。もっと責めてあげる。」
また、ビクンと彼女は反応した。
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