第3話 少年と幼女と母

 ポタ、ポタ、……ポタ。


 ねえ、このひとしんでるよ?


 ポタ。


 やめなよ、サリ。眠ってるだけだよ。


 でもパパはいつでも、こうしたらおきるわ。


 サリのお父さんは狩人だからちょっとの刺激で起きちゃうんだよ。サリのお母さんはそんなことしても起きないじゃないか。


 えっ?このひと、おとこじゃないの?


 髪が短いからって男の人とは限らないよ。ここよりも暑い所に住んでる人たちは女の人も髪の短い人がたくさんいるって、ヴァルハ様が前言ってたじゃないか。


 でもこのひと、おにいちゃんみたいにすごくほそいよ。ヴァルハさまもほそいし。

 ほそいおんなのひとなんて、ぜったいにけっこんできないわよってママいってたわ。


 たしかに見るからに結婚はあまり考えていないみたいだけど……。


 あっ、ママ。


 寝てる人のそばで何をそんなに騒いでるの、こっちに来なさい。


 ママ、このひと、へんよ。どうしてずっと寝たままなの?


 静かになさい。イマイリ様の前で失礼でしょう。


 イマイリ様?ミャリヘが来たばかりなのに、また星が落ちたのですか?


 いいや、誰も光は見ていないよ。向こうに神官様方がお見えになってたからこの人のことを聞いたのだがね、神官様方は誰も連れ帰っていないから心当たりは無いとおっしゃるのよ。きっとイマイリ様でしょうって。


 こんなに大きいイマイリ様は見たことがないです。ヴァルハ様よりも大きいですよね。


 何言ってるの、まだ子供だわ。ただ、中々見ない中途半端な大きさね。こんなに痩せ細って、きっと落ちて来てから随分ひとりだったのだろうね。


 そういえば、ヴァルハ様ももうお戻りになったのですか?


 あぁ、そうだった。ヴァルハ様にもお会いしたわよ。ヴァルハ様もお疲れでしょうし、サリのお世話はもう大丈夫だから、お手伝いしに行ってちょうだい。


 はい。じゃあねサリ。


 サリも行く!


 ダメよ、お兄ちゃんのお仕事の邪魔ばっかりするじゃないのおまえは。


 じゃましない!しずかにしてるからつれてって。


 わがまま言うんじゃないよ。


 ごめんね、サリ。次は一緒に連れてってあげるから。結婚のためにお母さんとお勉強するんだろ?


 ……うん。


 よし、サリはえらいね。じゃあ、行ってきます。


 ……バイバイ、お兄ちゃん。


 うん、またね、サリ。

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トッケビの星 咲凪 @sana_gi

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