第十一譚 不撓不屈の絶望譚

第333話 わたしのせかい

わたしはたったひとりでうまれた。


ほかにはなにもなかった。


だけどそれでよかった。


とてもしずかなせかい。なにもかんがえなくていいせかい。


ずっと、ずっとそのままでよかったのに。




いつしか世界はおとに満ちていった。


すこしずつ世界にいろが増えていった。


にぎやかな声、たのしそうな声。


ちょっとだけそとに出てみたくなったけど、それでもわたしにはやわらなかねむりのほうがだいじだった。


きっとそれが、いけなかったのかもしれない。




いつのまにか世界は音であふれていった。


とりかえしがつかないほどの色で塗りたくられていた。


はげしい声、とてもとてもうるさい音。


ああ、わたしはずっと眠っていたかったのに。わたしが起きたらきっとぜんぶをだいなしにしてしまうのに。


うるさい、ほんとうにうるさい。


ねむれないわたしは、とってもふきげんな気持ちで目を覚まして、


そうおんの原因たちを、ぜんぶまとめて食べてしまった。



これでもんだいはかいけつ。またもとどおりのしずかな世界。


なのに、なんでだろう。



私は、眠ることができなくなった。


私は、我慢することができなくなった。


ちょっとしたいのちが許せない。


全てのいのちを消さないと気が済まない。



この世界、ディスコルドのいのちを全て消したのに私はまだ眠れない。



まだ、音が聞こえる。


にぎやかな声、楽しそうな音。


ディスコルドの反対側、もうひとつの世界からたくさんのいのちが聞こえてくる。


ああ、だから眠れないのか。


ずっと、ずっと私は眠れていない気がする。


ならやはり、全てのいのちを世界から消さなくてはいけない。


そうしないと、静かな、とても静かな私の世界が返ってこない。




わたしの、わたしだけがいるせかい。


きっとそれだけで、わたしはみたされていたのに。

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