第332話 リノンの独白

 ついにここまできた。


 ついにここまできてしまった。


 虫食いの未来を渡る旅。少しでもマシな未来へと繋ぐ旅。


 ここにきてついに、大賢者リノンに見える未来はまったくの白紙となった。


 いやこれは暗闇の中に放り出されたといってもいいだろう。


 これからの未来に起こることは誰にもわかりはしない。


 彼らが進むのはそんな手さぐりの道。


 そこで大賢者はふと大笑いをする。


 それが当たり前なのだ。


 見えない未来、わからない明日へ向けてそれでも足を進めるのが人の当然。


 それを今まで彼はズルをしてきただけの話。


 ならば彼も信じよう。特異な力をもって覗き見る未来ではなく、いい加減なダメ人間である彼をそれでも見捨てなかった彼らを信じて。



 ああ、でもと彼は思う。


 未来など見えずとも、300年の時を生きた彼の知性が告げている。


 この戦いが、誰も死ぬことなく終わることは決してないと。

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