第128話 里長たちの条件
「ほう、貴殿が我が里の刀神に会いに来たという若者か。名は何という?」
自分が通されたのは里の奥の高台にある、他の家よりも一回り大きな建物。
そこには深い皺の刻まれた老人たちが五人、横に並んで座って自分を待ち構えていた。
いずれも腰に聖刀を差しており、ただ者ではない風格を醸し出している。目の前にいるというのに誰からも気配を感じ取れない。
「拙者はシロナと申す者でござる。ホーグロンの聖刀鍛治クロムによって作られたオートマタ。どうかこの里にいるという刀神に会わせていただきたい」
正直に、自分の目的と出自を申し出る。
「何!? 貴殿がオートマタであると? ふーむ、にわかには信じられぬが、……クロム殿の手であればあり得るか。何を隠そうこの里の聖刀のほとんどはクロム殿の作であるからな」
里長は誇らしそうに自らの聖刀を自分に見せる。
黒塗りで仕上げられた無骨な鞘、やろうと思えばいくらでも飾ることができるのにあえてそうしなかったところが、刀にはただ斬ることを求めた主らしい一振りだった。
主クロムの聖刀をこうして誇らしく思ってくれている人々に出会えたことが、何よりも自分にとって誇らしく思える。
「そうでござるか。我が主はこの里に随分と縁があったのだな。拙者も主の話をもとにこの里を探していた。それで、刀神に会わせていただくことはできるだろうか?」
うっかり逸れてしまいかけた話題を元に戻す。
「そうか、…………刀神にそこまで会いたいか。まあ他でもないクロム殿の作たる貴殿じゃ、よかろう。─────ただ、ひとつ条件を付けても良いか?」
「条件、でござるか」
「うむ、刀神とは我が里の『宝』じゃ。里に来たての者をすぐに会わせるわけにもいかん。条件は、そうじゃなあ、…………しばらくの間、里の者を一人面倒を見てはくれんかのう」
「?? 拙者が、でござるか?」
予想外の条件が提示された。
面倒を見る?
自分が?
まったくもって意図が不明だ。
「腑に落ちない顔をしてるな。まあこれもひとつの審査だとでも思って貰えれば良い。ある程度の期間そなたの振る舞いを見て、人となりが分かれば刀神に会わせよう」
そこまで言われては返す言葉もない。
「その条件、了解したでござる。して拙者はどなたの世話をすれば良いのか?」
さしあたっては老人のウチの誰かの世話だろうか。
主クロムの身の回りのことをしていた経験もあり、とくに不安はない。
「おお、了承してくれるか。頼みたいのは里の離れに住んでいる娘じゃ。身寄りもなく病弱でな。そなたが世話をしてくれるなら安心じゃ」
老人たちは心から安堵したような表情をしている。
────予想とは違ったが、誰が相手であれすることに大差はないだろう。
さっそく、連絡を受けていたのであろう青年に案内をしてもらい、
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